障害者雇用事例

障害者が定着する就業環境を整え、戦力化を図る2社の取り組み

民間企業では、障害者雇用率が2024年4月以降段階的に引き上げられ、現行の2.3%から2026年7月に2.7%となることが予定されています。これに伴い、障害者雇用状況の報告が義務づけられる事業主の範囲が、現行の「従業員数43.5人以上」から、2026年7月には「従業員数37.5人以上」へと改められることとなります[図表1]
また、2024年4月からは精神障害者、重度身体障害者および重度知的障害者について、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の短時間労働者も雇用率算定の対象となります。このように、雇用率の引き上げや対象者の拡大により、雇用される障害者は今後ますます増加することが見込まれています[図表2]
そこで今回は、障害者が戦力として活躍することを期待、雇用に取り組んでいる企業2社の取り組みを取材しました。
※取材した2社では「障がい者」と呼称しているため、以下は取材先の呼称ルールに即しています。

■清水建設

 清水建設では、障がい者の採用に当たって、まず同部が応募者の経歴に目を通し、本人の意向を踏まえつつ、適性のありそうな業務部門への打診を行う。その後は配属予定部署の担当者も同席してマッチングを兼ねた面接を実施し、採否を判断する。採用後は、全国各地の事業所に配属され、一般の社員と同じ職場・職種で業務を行う。入社後に1級建築士の資格を取得したり、建築デザインのスキルを取得したりする社員もおり、それぞれの職種で能力を発揮している。
 同社では経営トップとの協働で、ソフト・ハード両面で障がい者が働きやすい環境づくりを進めてきた。また、障がい者と経営トップが意見交換等を行う「チャレンジフォーラム」は社内理解の促進にもつながっている。ダイバーシティ推進室が発足した翌年の2010年から、法定雇用率を上回る水準で障がい者を雇用している。
 長く業務に携わる中で経験やスキルを磨いてほしいという思いから、現在は新卒採用や若手の中途採用を積極的に実施している。障がい者の定着状況は数値化していないが、定着率は高く、数十年勤務し定年退職を迎えるケースも多く見られる。

■DMM.com

 DMM.comは、障がい者一人ひとりがパフォーマンスを最大限に発揮し、会社の戦力として事業に貢献できることを目指している。
 同社における障がい者雇用の最大の特徴は、障がい者全員がリモートワークで勤務していること。リモートワークは障がいへの配慮として、コロナ禍以前から実施している。
 障がい者の採用から雇用管理までを行う専門部署であるビジネスクリエーション部では、社内の各部署から業務を受注し、同業務を障がい者のスキル・経験を踏まえて配分し、担当してもらう。同部には発注元と障がい者をつなぐ役割として「管理者」を配置しており、障がい者への業務指示や指導を行っている。障がい者が担当する業務は総務・人事・法務等のバックオフィス関連の業務や、WEBサイト運営に関わる業務など多岐にわたる。
 原則としてアルバイトでの採用となるが、キャリアアップして正社員になる道も用意している。また、定期的に評価を行い、評価に応じて給与改定を行っている。取り組みを開始して以降、法定雇用率を上回る雇用率を維持しており、入社から1年後の定着率は7~9割台と、高い水準となっている。

[図表1]障害者雇用率の引き上げ

[図表2]実雇用率と雇用されている障害者の数の推移



『労政時報』第4057号(23.6.9)の特集記

1.障害者雇用をどう進めるか(2社事例、解説)

2.人事制度事例シリーズ SOMPOホールディングス

3.労働者のプライバシー等に配慮した個人情報取り扱いの実務

4.実践!人事データ活用のノウハウ

5.先進企業の人事トップインタビュー(6・完):カゴメ株式会社

※表紙画像をクリックすると目次PDFをご覧いただけます


◎「WEB労政時報 有料版」では、2001年以降の『労政時報』記事をすべてご覧いただけます

◎ 期間限定で「WEB労政時報 有料版」の機能をお試しいただける《体験版》をぜひご利用ください

―「労政時報」最新号の全文や、記事の一部、検索機能、掲載コンテンツのインデックスページをご覧いただけます。《体験版》のご利用お申し込みはこちらをご覧ください。