2010年12月02日掲載

労働者が退職を希望する場合には、退職願を一定期間前までに提出するものとし、会社の承認がなければ退職できないとする旨の就業規則の定めをしても問題ありませんか。


A なるべく余裕をもった円満退職を求める趣旨なら問題ありません。承認せずに「退職を認めない」とすることはできません。

1.退職の自由と正社員の退職

労働者には、憲法で認められた職業選択の自由の1つとして退職の自由があります。正社員の一般的な契約形態である期間の定めのない雇用契約では、いつでも解約の申し入れをすることができ、その場合、原則2週間が経過すれば雇用契約は終了することとされています(民法627条)。
労働者が、使用者の意思にかかわりなく、特定の日に退職することを希望する場合は、希望する日の原則2週間以上前に退職の申し入れをしなければならないという制約があります。もちろん、使用者が退職自体を禁止したり、退職理由を制限したりすることは基本的に許されません。

2.有期労働契約社員の退職

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については、「やむをえない事由」があるときは途中解約できるとされていますが、逆に言えば、「やむをえない事由」がなければ、期間途中での解約はできません(民法628条)。使用者による期間途中の解約だけでなく、労働者が期間の途中で一方的に退職することもできないのが原則です。
労働者自身の退職の意思が固い場合、就労を強制することは実際上無理がありますので、労働者の退職により何らかの損害が生じた場合にのみ、損害賠償を請求するというのが実際の対応となるでしょう。

3.退職の承認ルール

就業規則において「退職する場合、○日前までに退職願を提出し、会社の承認を得なければならない」といった定めを置いている会社もあると思います。
しかし労働者には退職の自由があり、使用者の都合で労働者側からの解約予告期間を延長することはできないという裁判例があります(参考資料①)。こうした規定を定めたとしても、実際上は、退職する際は一定期間前に届け出ることが望ましいといった趣旨以上の効果は期待できません。

<参考資料>
①高野メリヤス事件(東京地裁 昭51.10.29判決)

回答者:本田和盛 社会保険労務士(あした葉経営労務研究所 代表)