第1回 入社早々に風邪を引いた!それでも年休は取れるのか?

そもそも賃金って、何?

イラスト1 働くことで支給される給料…。この給料についての基本的な事項を定めているのが、ご存じ労働基準法です。この法律の中では、「賃金」という言葉を使っています。
賃金なのか、給料(給与)なのか、手当なのか、賞与なのか…、どのような名称かにかかわらず、①働いたことの対価として、②会社から支払われるものが、賃金です。

働いている皆さんはあまり耳にしないかもしれませんが、労働基準法では、会社が社員に賃金を支払うときの五つのルールを定めています。それは、①通貨で、②直接本人に、③その全額を、④毎月1回以上、⑤一定の期日に支払うというもので、会社は、このルールに従って給料を支払うことになります(これを「賃金支払いの5原則」といいます)。
したがって、給料の額が年俸制で決まっているからといって、その金額を年1回にまとめて支払うことはできません。また、今月の給料日は5日、来月は20日…、などということもできません。

さらにくわしく... 「賃金支払いの5原則」の中で、「①通貨で」に対しては、労働協約(労働組合との間の協定)があれば、通勤定期券や回数券の支給といった現物給与もOKです。また、「③全額を」とあるものの、法律に定められているもの(源泉所得税、社会保険料など)については給料から控除できることになっています。
臨時に支払われるものや賞与、退職金などについては、「④毎月1回以上」や「⑤一定の期日」でなくても問題ありません。

遅刻して働かなかった分の給料はどうなるのか?

イラスト1 岡本君の2日連続の遅刻に対する長島課長のお怒りもごもっともですが、果たして、岡本君が遅刻して働かなかった時間分の給料は、どのように考えたらよいのでしょうか?

本来、給料は、「どのような仕事を、どのくらいしたら、いくら支給する」と決められているものですので、約束どおり働いた場合には、その全額が支払われなければなりません。
逆に、遅刻や早退、欠勤など、自分の都合で働かなかった時間分の給料はそもそも発生しませんから、会社は、この分の給料を岡本君に支払う必要がありません。 これを、「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。

岡本君のように、遅刻した時間が2時間である場合は、この2時間に相当する分の金額が、その月の給料から差し引かれることになります。 例えば、月給16万円で、1カ月の労働日数が20日、1日の所定労働時間が8時間の場合、時間単価は1,000円(16万円÷20日÷8時間)となりますので、合計2,000円がカットされることになります。

さらにくわしく... 時間や日数に応じて控除することは全額払いの原則に違反しませんが、5分の遅刻であっても30分単位で賃金カットするような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)であって賃金の全額払いの原則に反し、違法となります。

一方、「ノーワーク・ノーペイの原則」の考え方とは別に、自分の都合で仕事を休んだり働かない時間があったりしても賃金をカットしないという決まりごとが会社の就業規則などにあれば、話は別です。この場合、その定めに基づいて、会社は賃金を支払わなければなりません。 明文化されておらず、支払うことが慣行となっている場合も、同様に考えます。

今度遅刻したら給料1日分カット…。これって○?それとも×?

イラスト3 働いていない分の給料を支払わないことについては、「ノーワーク・ノーペイの原則」からすると問題ないですが、それ以上の分の給料をカットすることは、先ほどの全額払いの原則に反するため、労働基準法違反となります。この岡本君の場合、あくまでもカットできる賃金は2時間分であって、その時間を超えてカットすることはできません。

ただし、社員が職場のルールに違反した場合のペナルティーとして、本来ならば働いたことによって支給されるべきはずの給料から、その一部をカットするという対応は、全額払いの原則に反せず、違法にはなりません。労働基準法では「減給の制裁」として、法で決められている一定の範囲内でペナルティーを課すことを認めています。

赤羽橋食品の就業規則に、「遅刻を3回した場合は、制裁として、給料の○○の部分をカットする」という規定があれば、岡本君の給料の一部がカットされる可能性があります。
しかし、カットする金額があまり大きいと、働く人の生活に及ぼす影響が大きくなりますので、労働基準法では、1回の減給(カット)の額を給料1日分の半額以下にしなければいけないことになっています。

さらにくわしく... 例えば、岡本君の給料1日分が8,000円だとしたら、ペナルティーとしてカットできる金額は4,000円までであり、長島課長が言うように、1日分(8,000円)をまるまるカットすることはできません。遅刻1時間分の1,000円+4,000円(給料1日分の半額)=5,000円が、この日に減額・カットできる限界です。

1カ月のうちに何度もルール違反をした場合であっても、カットされる金額の総額が、その「1カ月の給料の総額の10分の1を超えてはいけない」ことになっています。例えば、岡本君がたびたびルール違反をして何度か減給されることになった場合、月給が16万円であれば、カットされる金額は、最大で1万6,000円までということになります。

監修者プロフィール プロフィール写真
望月 由佳(もちづき ゆか)
特定社会保険労務士 社会保険労務士 望月由佳事務所 代表
平成2年10月 社会保険労務士資格取得
平成7年9月 社会保険労務士望月由佳事務所設立
労働保険・社会保険関係業務全般の手続き業務やコンサルティング業務のほか、研修会・講習会での講師も務める。
著書・執筆『労務・社会保険コンパクトブック』(TAC出版)、『年金ミラクルガイド』(同、共著)、「ビジネスガイド」、開業社会保険労務士専門誌「SR」、社会保険労務士受験雑誌「社労士V」(以上、日本法令)ほか

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