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人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 [2021.02.02]

[199]『男性育休の困難―取得を阻む「職場の雰囲気」』

(齋藤早苗 著 青弓社 2020年8月)

 

 本書では、男性が育児休業を取得しようとする際に感じる、何となく取得を言い出せない「職場の雰囲気」はどこからくるのか、育児と仕事を両立することがなぜ困難なのかなどを、育児休業を取得した男性社員だけでなく、長時間労働の経験のある男性・女性社員たちへのインタビューを通して分析しています。

 第1章では、育児休業を取得した男性へのインタビューから、職場には性別役割分業意識があり、育休と取得する男性はその壁を超えるために、自らが置かれている状況が特別であることを上司にアピールする交渉力を発揮しなければならず、また、たとえ育休が取れたとしても、職場には「いやーな感じ」の潜在化した批判が残ることが多いとしています。

 第2章では、男性が育児休業を取ったことで、男性の認識がどのように変化したかについてインタビューを通して分析しています。そこでは、性別役割分業意識の変化よりもむしろ、〈仕事優先〉の時間意識を自分が持っていたことへの気づきや、〈仕事優先〉の時間意識から〈仕事も育児も〉の時間意識への変化があったとしています。

 第3章では、育児休業を取らなかった男性や女性に、育児と仕事の時間配分はどうだったかを聞いていますが、「労働時間を短縮しなかった」「労働時間を短縮した」「仕事を辞めて転職した」のいずれのケースも、育児に携わりながらも、そこには〈仕事優先〉の時間意識が男女ともあったとしています。

 第4章では、正社員として働く人たちに、長時間労働や私生活の時間に対する考えを聞いていますが、入社当初から長時間労働をしてきた正社員は、無意識に〈仕事優先〉の時間意識を持つようになり、その結果、労働時間が私生活の時間をコントロールするようになっているとしています。

 第5章では、「望ましい労働者」像は、〈仕事優先〉の時間意識を持ち、それを実践している労働者だとされる一方、育児は、柔軟に減らすことができる自由時間とは異なり、育児の時間が仕事の時間を決めるという特殊性があるため、そこで葛藤が生じるとしています。

 第6章では、これまでの分析を踏まえた上で、なぜ男性は育児休業制度の利用が難しいのかを分析し、性別役割分業意識よりも深層にある〈仕事優先〉の時間意識が、①常に〈仕事優先〉の働き方を要請するとともに、②「どちらかを選択しなければならない」と思わせ、③性別役割分業の実態に沿って、男は仕事、女性は家事・育児を「選択」するよう迫ることに原因があるとしています。

 終章では、男性育休の困難を解消するためにどうすればよいかを述べており、組織成員の相互作用を視野に入れること(職場の賛同を得ること)、交渉当事者を拡大すること(育休を取得する男性を増やすこと)などを提唱しています。

 本書に出てくるインタビュー対象者は、男女を問わず、会社に入社したときから猛烈に仕事をしてきた人が多いように思いました。そして、そういう人たちの多くは、無意識のうちに〈仕事優先〉の時間意識を受け容れてきたようです。育児と仕事の両立の困難を抱える当事者に限らず組織の全員が(人事パーソンも含め)、まず、そのことに気づき見直してみることが、これからの望ましい働き方を探る上で必要であると思わされる本でした。

<本書籍の書評マップ&評価> 下の画像をクリックすると拡大表示になります

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2020年10月にご紹介したものです

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格

1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー

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