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人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 [2019.12.17]

[172]『日本の人事システム―その伝統と革新』

(上林憲雄/平野光俊 編著 同文舘出版 2019年7月)

 

 本書は、日本型人事システムの変容を調査により明らかにし、今後の方向性の解明を試みた研究プロジェクトの成果をまとめたものです。人事部の役割、人事ポリシー、組織文化、意思決定、働き方改革、グローバルリーダーの六つの視点から日本型人事システムの実態を解明し、今後の在り方を展望しています。

 第1章「人事部の新しい役割」では、日本の企業ではトレンドとして職能資格制度から役割等級制度への移行が見られるが、通常「職能資格制度と人事権人事部集中」「役割等級制度と人事権ライン分権」の組み合わせとなるところが、実際は、役割等級制度を採用する企業の人事情報の集中蓄積は高いとしています。その上で、従前どおり人事部が人事情報を収集蓄積し、キャリア開発の面でライン管理職を支援するとともに、キャリア相談等を通じて社員の自律的キャリア意識を育てる施策は効果的であり、そこに人事部が人事情報を収集蓄積する意義があるとしています。

 第2章「人事ポリシーと従業員の働きがい」では、日本企業の人事ポリシーには、自社だけでなく他社でも通用する能力の涵養(かんよう)を重視する「エンプロイヤビリティの重視」志向、会社の戦略に合致するよう従業員の成長を支援する「個別化された能力開発」志向、実力や成果に応じた評価や報酬を付与する「実力・貢献主義的処遇」志向の三つがあり、「実力・貢献主義的処遇」志向であるほど従業員の働きがいは高いことをデータから確認しています。

 第3章「人事ポリシーと組織文化」では、人事ポリシーを支える組織文化に焦点を当て、今日の日本企業における組織文化は、家族主義的色彩の濃いクラン型をベースに残しながら、マーケット志向、イノベーション志向、ビューロクラシー志向といった複数の志向を内包しており、各志向がバランスよく観察される企業が、「エンプロイヤビリティの重視」「個別化された能力開発」「実力・貢献主義的処遇」を意識する志向が高いとしています。

 第4章「人材育成と参加的意思決定」では、日本型の意思決定スタイルについて、従来はボトムアップ型とされてきたが、今回の調査では、低職位層は決定のプロセスにはそれほど参画しておらず、むしろ下位職層には決定権限を委ねるより「起案」に参加させるほうが育成効果があることが判明したとしています。

 第5章「働き方改革の現状と未来」では、政府によって推進されている働き方改革の内実は、女性活躍推進、労働時間削減、勤務形態見直し、みなし労働時間制、限定正社員制度、既存制度の見直しの六つの施策群から構成され、ともすると法令遵守意識が先導しがちだが、企業の活動成果にポジティブに作用するように推進してこそ意義があるとしています。

 第6章「グローバルリーダーの条件」では、日本企業におけるグローバルリーダーは、米国のような短期視点での利益追求ではなく、より長期視点で育成を重視する行動を取ることが求められるだろうとしています。

 グローバル化に伴い日本企業の人事システムは変貌を遂げつつあるが、なお米国のそれとは一線を画し、むしろ旧来の日本型人事システムとの連続性を意識しつつ、「人材育成」と「実力主義」を両立させようという「ハイブリッド型人事システム」がその特徴であるというのが本書の結論です。

 実務家目線で見るともやっとした感じの結論になった気がしなくもないですが、大きなトレンドを俯瞰したものとして、調査を基に結論を導き出している点で説得力はあったように思います。

<本書籍の書評マップ&評価> 下の画像をクリックすると拡大表示になります

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2019年8月にご紹介したものです。

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格

1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー

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