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Point of view [2018.06.22]

第113回 客野一樹

ブロックチェーンが変える社会

客野一樹 きゃくの かずき
筑波大学客員准教授
株式会社アクセル 新規事業推進担当取締役

筑波大学大学院において各種初等関数のハードウェア実装の研究で博士号を取得。㈱アクセル入社後、アミューズメント市場向けの動画・音声の圧縮アルゴリズムの開発に従事。現在は機械学習およびブロックチェーンに関する新規事業に関わっている。
https://www.axell.co.jp/

2017年は仮想通貨が高騰し、2018年は取引所からのNEMの流出が話題になった年でした。仮想通貨というと何だか怪しい、と思われる方も、ブロックチェーンといえば何だか革新的な技術、という印象を持たれるのではないでしょうか。実は、この二つは切っても切れない関係にあります。人事に仮想通貨は関係ないとお思いの方は多いでしょうが、近い将来、採用や労働時間管理にもブロックチェーンは深く関わってくるのです。そしてブロックチェーンの技術は、仮想通貨にとどまらず、人事の仕事を含めて、これから社会の構造に大きな変化をもたらすものとみられています。

ブロックチェーンとは何か

まずは、ブロックチェーンは何か、というところでしょう。少々技術的な説明が続きますが、しばしご辛抱ください。ブロックチェーンというのは、「分散型の台帳システム」のことです。現在、インターネットにおいて主流なのはクライアント・サーバシステムといって、特定のサーバにマスターデータを格納しています。これに対して分散型の台帳システムでは、マスターデータが存在せず、ブロックチェーンに参加している計算機がそれぞれでデータを保持しています(下図)。

資料出所:経済産業省「ブロックチェーン技術を活用したシステムの評価軸 ver. 1.0」より抜粋引用

分散型だと何がよいのでしょうか。それを考えるには、現在のクライアント・サーバシステムの問題点に焦点を当てると理解しやすいでしょう。クライアント・サーバシステムでは、重要なデータが特定のサーバに集まっています。そのため、そのサーバがハッキングされ、データの改ざんや破壊が行われると、データが失われてしまいます。単にサーバのハードウェアが故障しても、データが失われるでしょうし、そこまではいかないまでも、復旧するまでの間、サービスが停止してしまいます。さらに、そのサーバの管理者が悪意を持った場合、管理者権限で勝手にデータを書き換えてしまうかもしれません。

実際、ポイントカードのような金融システムを従来のクライアント・サーバシステムで作ろうとした場合、データが消えてしまうと重大な責任問題になりますし、サービスが止まらないようにする必要もあります。もちろん、ハッキングへの対策も必要です。また、利用者の立場からすると、特定の企業が運営をやめてしまうとそのポイントは無価値になります。現実的に、とても運用が大変なシステムです。

しかし、分散型のブロックチェーンの出現によって、信頼性の高い金融システムが誰でも作れるようになりました。現実に、ビットコインの時価総額は15兆円になっても、2009年から現在まで一度も停止することなく、動き続けています。特定の管理者は存在せず、管理者の一存でビットコインが消滅することもありません。ブロックチェーンは、サービスの信頼性と永続性を担保しているのです。

では、なぜ、ブロックチェーンを使うと永続性が生まれるのでしょうか。それは、集中管理型のサーバと違い、単一障害点が存在しないためです。分散しているため、1カ所が攻撃されてもシステムは停止しませんし、特定のハードウェアが故障しても動き続けます。

ちなみに、なぜブロックチェーンと呼ぶかというと、取引データをまとめてブロックを作り、そのブロックをチェーンしてどんどんつないでいくからです。取引データをまとめたブロックは、一つ前のブロックのハッシュ値(あるデータを代表する数値)を持ちます。ハッシュ値は、取引データを少しでも書き換えると、大きく値が変わるという性質を持っています。これによって、ブロックのデータの不正な書き換えを検出することができますし、ハッシュ値を連鎖させていくことで過去の取引データの書き換えを防止することができるのです。

また、ブロックチェーンの信頼性はマイニングによって担保されています。マイニングというのは、ブロックに取引データを追加する作業のことです。膨大な数のコンピュータがこの作業に参加しており、数独のような問題を解いています。なぜ膨大なユーザがマイニングに参加しているかというと、ブロックの追記に成功した人に報酬として仮想通貨が与えられるからです。

本稿の初めに、仮想通貨とブロックチェーンが切っても切れない関係にあると説明したのはそのためで、仮想通貨がもらえるとなると、みんな、率先して提供してくれるのです。信頼性のためにコンピュータを提供してくれとお願いしても誰も提供してくれないでしょう。個々人が利益を追求する活動をした結果として、システム全体が成立しているのも資本主義のようで興味深い点です。

ちなみに、ブロックチェーンを攻撃するにはネットワーク全体の51%の計算量を確保しなければなりません。これをPoW(プルーフオブワーク)と呼びます。ただし、51%の計算量を確保したとしてもできることは限られていて、他人の仮想通貨を手に入れることはできません。可能なことは、過去の取引の取り消しや、特定の取引を承認しないという程度です。

なぜ不正な取引を実行できないかというと、取引は電子署名技術によっても保護されているからです。仮想通貨のウォレットには、口座番号に対応する公開鍵と、対応する秘密鍵があります。この秘密鍵は本人しか知らず、送金には秘密鍵が必要なため、不正な出金は行えないのです。2018年の取引所の流出事件では、取引所の秘密鍵が流出した、もしくはサーバに侵入され不正なリクエストが発行されたために不正出金が行われましたが、秘密鍵が流出していないNEMの一般ユーザには被害は及びませんでした。ブロックチェーンの安全性は依然として保たれています。

ブロックチェーンがもたらす社会の変化

さて、ここまで技術的な説明をしてきましたが、今後、どういう社会が訪れるのかについて検討していきましょう。2017年は仮想通貨の年でしたが、2018年はDappsの年になるといわれています。Dapps?聞きなれない言葉が出てきました。DappsはDecentralized Applicationsの略で、分散型アプリケーションとも呼ばれています。Dappsは、データとサービスを分離します。

例えば現在、採用分野では、求人・求職サイトを利用されていることと思います。現在、求人・求職のデータは、大手採用ナビサイトを運営する企業が実質的に独占している状況です。これは、プラットフォームとして人がいるところにさらに人が集まるというネットワーク効果があり、参入障壁ができているためです。その結果、データは特定の企業が独占し、特定の企業のサーバに格納されています。つまり、中央集権的な状態にあるわけです。

Dappsは、データとサービスを分離します。具体的に、だれでも参加できるブロックチェーンを作り、そこに求人・求職情報を登録、その入り口となるフロントエンドのアプリをいろいろな企業が作ります。こうすることで、誰でも求人・求職のマスターデータにアクセスすることができるので、特定の企業に依存しない求人・求職サービスを展開することができます。

次に、身近なところでタイムカードはどうでしょうか。現在、働き方改革が提唱されていますが、タイムカードのデータは社内のサーバに格納していることかと思います。もしこのデータが消えてしまったり、管理者が書き換えてしまうとどうでしょうか?この問題の解決にもDappsが使用可能です。タイムカードを保持するブロックチェーンを作り、全企業がそこにデータを書き込むことで、改ざんのできないタイムカードができあがります。

ブロックチェーンを使用すると、全員が共有するデータに直接アクセスできるため、仲介者が存在せず自由度が高まります。機械学習によってブロックチェーンに登録された自社にマッチする有望な人材を抽出することも可能となり、有望な人材に直接アプローチすることも可能になるでしょう。過去の履歴書を参照することで、ヘッドハンティングも容易になるかもしれません。

ただし、一度公開された情報は修正できないという課題もあります。また、秘密鍵は一度流出すると莫大な被害をもたらします。適切なサービスの設計と、安全な鍵の管理、これらが来るべき分散型社会のポイントとなるでしょう。

インターネット、オープンソース、ブロックチェーンと、社会は分散化の方向に向かっています。その社会構造の変化に適切に対応していくことは、今後のビジネスにおいても重要なことであろうと考えています。

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