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BUSINESS REPORT
企業の活力向上のカギは「健康経営」
[2016.07.27]

第1回 ビッグデータで健康経営を描く

東京海上日動火災保険株式会社


従業員の健康対策はリスクマネジメントから「成長投資」へ

「ブラック企業」は学生にも浸透するほどすっかり聞き慣れた言葉となった。いわゆるブラック企業と呼ばれる会社においては、過重労働やパワハラによって心を病んだり、体を壊したりと、従業員の健康問題が指摘される。

しかし、従業員の健康問題はブラック企業に限った問題ではない。厚生労働省によれば、メンタルヘルスの不調を原因とする労災の申請は増加の一途をたどっていて、平成27年度は過去最高を記録している[図表1]。また、過重労働やメンタルヘルスの不調に関する民事訴訟も後を絶たない。従業員の健康問題は、企業にとってはリスクマネジメントの視点で大きな課題となっている。

[図表1]精神障害に起因する労災件数の推移

※厚生労働省統計資料より作成

さらに、従業員の健康問題は別の視点からも注目されるようになってきた。従業員の高齢化が進む中、企業としての労働生産性を維持していく上で従業員の健康の維持・増進は欠かせない。そこで、従業員の健康対策を将来に向けての投資と捉え、企業の持続的成長を可能にしようとする「健康経営」への関心が高まっている。2015年からは経済産業省と東京証券取引所で「健康経営銘柄」の認定制度が始まるなど、企業の取り組みは加速している。

個人の健康データ分析が「健康経営」の実効を高める

では、この健康経営を進めていくためには何が必要となるのだろうか。東京大学政策ビジョン研究センター 健康経営研究ユニット 特任助教の古井祐司氏は、「従業員の健康データの分析がとても有用です」という。ここ数年で、病院を利用した際に健保組合へ送られるレセプト(診療報酬明細)や健診の結果の様式が統一され、かつ電子化されたことで、従業員の健康状態についての分析や比較が容易になったことも健康経営の取り組みが動き始めた背景の一つだ。厚生労働省も2015年度から、これらのデータを分析して健康増進の対策に役立てるための「データヘルス計画」の実施を各健康保険組合に義務づけ、健康保険組合での取り組みを後押ししている。

古井氏は「数十社のデータ分析から、それぞれの職場でなりやすい病気や健康状態が異なることなどが分かってきました。例えば、営業系の部署では食事が不規則で血糖が高い、高カロリー・高塩分なメニューをとりがちな製造系では血圧が高い、といった違いが見えてきます」という[図表2]。このように、データを分析することで職場ごとの健康リスクとその背景が明確になれば、有効な対策として何ができるかが分かってくる。従来は自己責任と取られがちだった個人の健康リスクが、データ分析を通じて集団のリスクとして捉えられることで、関係者で組織課題としての共有を可能にし、従業員の健康増進対策の実効性を高めることが可能となる。

[図表2]データ分析から職場ごとの健康リスクと背景が明らかに

※古井祐司『会社の業績は社員の健康状態で9割決まる』(幻冬舎)より引用(一部改変)

健康対策策定のカギは「プレゼンティーイズム」

一方、健康経営を進めていく上での課題もある。従業員の健康状態が悪化すると企業の生産活動に影響があることは、定性的な説明はできるものの、その影響を定量的に測りづらいことが、取り組みを推進していく上での障壁となる場合もある。このような状況を打破するキーワードは「プレゼンティーイズム」だ。プレゼンティーイズムとは、会社には出社しているものの、病気やけがで体調が優れずその人の労働生産性が低下している状態をいう。これに対し、欠勤してまったく生産がなくなってしまう状態を「アブセンティーイズム」という。東京大学政策ビジョン研究センターは東京海上日動等と共同で研究を重ね、従業員の健康に起因するコストとしては、医療費やアブセンティーイズムのコストよりも、このプレゼンティーイズムのコストが圧倒的に大きいことを突き止めた。

「言うまでもなく、医療費は血圧や血糖など、健診結果で数値が悪い人ほど高いコストがかかります。一方、プレゼンティーイズムのコストは、病気には至らずとも生活習慣やストレスで問題を抱える人など、言い換えれば多くの従業員でコストが発生していることが研究を進める中で分かってきました。食事や休憩の取り方の見直し、ストレッチの奨励、さらにはメンタルヘルス不調者へのカウンセリングなどは、個人の健康増進に役立つだけでなく、企業としての生産性向上につながる取り組みであることが、プレゼンティーイズムのコストを可視化することで分かってきたのです」と古井氏は最新の研究成果を説明する[図表3]

[図表3]健康関連コストと相関の強いリスク因子

※『「健康経営」の枠組みに基づいた健康課題の可視化及び全体最適化に関する研究』
(東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニット)より作図

プレゼンティーイズムのコストを可視化することで、企業として実施すべき健康対策の優先順位をつけやすくなるだけでなく、評価指標を持つことで対策のPlan-Do-Check-Act(PDCA)を回しやすくなる。投資に対するリターンの測定が可能となることで、健康増進対策の実効性はさらに高めることができる。これが「プレゼンティーイズム」というキーワードが注目される理由だろう。

労働安全衛生法による健康診断の実施や、企業単位で設立される健康保険組合など、従業員の健康データを集積する仕組みを企業グループが持つ事例は世界からも注目されている。増加するメンタルヘルス不調に加え、労働者の加齢に伴う生活習慣病など、従業員の健康がこれまで以上に経営に大きな影響を与える少子高齢社会・日本。リスクを軽減し、さらには職場の生産性の向上を目指す上で、自社の貴重なデータを活かさない手はない。健康経営の取り組みは、まずはこのデータ解析とその読み取りから始めてみてはいかがだろうか。

監修:古井 祐司(東京大学政策ビジョン研究センター 特任助教)

古井 祐司 ふるい ゆうじ

東京大学政策ビジョン研究センター 特任助教

東京大学大学院医学系研究科修了、医学博士。専門は予防医学、保健医療政策。東京大学医科学研究所等を経て、平成16年同大学医学部附属病院22世紀医療センター助教就任。同時期に健康委員会ヘルスケア・コミッティーを株式会社化し、同社代表取締役就任。平成24年からは、健康経営の普及・研究拠点を同大学政策ビジョン研究センター内に創設。内閣府 経済財政諮問会議専門委員(現任)等を務める。著書に『会社の業績は社員の健康状態で9割決まる』(幻冬舎・平成27年)などがある。

無料セミナーのご案内(東京・大阪開催)

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■東京開催 2016年 10月14日(金)14:00~17:00(受付開始 13:30~)

[会場] フクラシア東京ステーション H会議室

(JR「東京」駅・地下鉄「大手町」駅 地下直結)

[定員] 200名  参加無料(下記より事前お申し込みをお願いします)

■大阪開催 2016年 10月11日(火)14:00~17:00(受付開始 13:30~)

※大阪開催はご好評により満席のため、受け付け終了いたしました

セミナー内容

第一部 健康経営が企業に与えるインパクト

東京大学政策ビジョン研究センター

健康経営研究ユニット 特任助教  古井 祐司

第二部 従業員の健康被害と企業リスク

森・濱田松本法律事務所

弁護士  髙谷 知佐子

第三部 産業医から見たヘルスケアの課題

東京海上日動メディカルサービス株式会社

第五医療部長  吉次 聖志

第四部 健康経営の実践(取組事例のご紹介)

■お申し込みはこちら■

http://www.tokiorisk.co.jp/seminar/20161011.html

お問い合わせ

事務局: 東京海上日動リスクコンサルティング株式会社

[事務局連絡先]TEL:03-5288-6591 FAX:03-5288-6590
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-5-1 大手町ファーストスクエア ウエストタワー23階

主 催:

協 力:

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です


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