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人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 [2016.04.25]

[92]『「職場のメンタルヘルス」を強化する―ストレスに強い組織をつくり、競争優位を目指す』

 (吉野 聡 著 ダイヤモンド社 2016年1月)

 

 著者は、これまでのメンタルヘルス対策の問題点は、「ストレス低減」に主眼が置かれてきたことであり、メンタルヘルス対策がコンプライアンスといった枠組みの中で形式的に行われている限り、それは企業にとって単なるコストであって、実効的な成果は上がらないとしています。その上で本書では、ストレスに強い組織をつくるためのメンタルヘルス対策の在り方を提唱しています。

 第1章では、メンタルヘルス対策は「予防成長型」「予防配慮型」「事後成長型」「事後配慮型」の四つに分類でき、従来の「事後配慮型メンタルヘルス対策」では本人の言いなりに対応することで周囲の負担が増え、職場全体が疲弊してしまうとしています。さらに、心の健康を損なうケースとして「精神病型メンタルヘルス不調」「過負荷型メンタルヘルス不調」「不適応型メンタルヘルス不調」の三つがあり、特に今は「不適応型メンタルヘルス不調」が増えているとしています。

 第2章では、うつ病の診断は「2週間以上の症状の継続」が要件となるが、職場での対応で評価すべきは、メンタルヘルス不調が、実際の職務遂行能力にどのような影響を及ぼしているかという機能性と、その人が担当している業務の遂行に支障が出ていないかという事例性であるとしています。また、本人の希望通りの配慮は必ずしも有益ではなく、「うつの人に『がんばれ』と言ってはいけない」といった言説もある面では正しいが、ある面では正しくないとし、メンタルヘルス不調社員に過度に配慮するのは適切な対応ではないとしています。

 第3章では、メンタルヘルス対策を経営課題と捉える観点から、メンタルヘルス休職者比率が上昇した企業の業績は悪化する傾向にあると指摘。そして、メンタルヘルス休職者の下には、プレゼンティズム(勤怠上はきちんと職場に来ているものの、勤務時間中も効率が低下している人たち)とアブセンティズム(当日休を頻回に繰り返したり、頻繁に遅刻する人たち)という大きな問題が隠れているとしています。また、職場のメンタルヘルス対策=「職場のストレスを低減させること」と考えるのは正しくなく、労働時間を「短縮」しても問題は解決せず、労働生産性の低さを改善するマネジメントこそが有効であるとしています。

 第4章では、ストレスを前向きに捉え、自らの成長につなげることができる物事の捉え方を促す「予防成長型メンタルヘルス対策」が今後は求められるとし、メンタルヘルス・マネジメントの一環としての人材育成について解説。論理療法モデルであるABC理論と、SOC(Sense of Coherence、「首尾一貫感覚」の意)という二つの考え方を通して、メンタルに強い人材育成のポイントを示しています。

 第5章では、ストレスを職場活性化につなげるマネジメントについて解説。努力に見合った報酬が得られるとは限らない低成長時代においては、心理的報酬がその意義を増し、上司からの適正な評価、自分自身の成長実感など、やりがいや達成感、周囲の評価などがそれに当たるとしています。また、マネジメントの基本は上司と部下の信頼関係であり、アサーティブなコミュニケーションが重要だとしています。
 さらに、ストレスチェック制度は、ストレスの状況を部署ごとに分析できるので、職場の課題を客観視するには有効だが、「ストレスが低い職場がよい職場だ」と安直に考えてはいけないと。職場は「疲弊職場型」「活性職場型」「職場外負担型」「不活性職場型」の4種類に分類でき、職場のストレス要因が大きくても、ストレス反応が適切にコントロールされている「活性職場」を目指すべきであるとしています。

 これまでも、産業医としての経験を踏まえた上で、精神科医としての専門家の立場から、企業のメンタルヘルス問題への現実的な対応法、実践的な提言や示唆をしてきた著者ですが、今回は、職場のメンタルヘルス対策は誰のためにどのような考え方に基づいて行われるべきか、今一度原点に立ち返って、そのあるべき姿を体系的に整理したように思いました。「職場のメンタルヘルス」はマネジメント問題であるということをあらためて強く啓発される本であり、人事パーソン、マネジャーにお薦めです。

<本書籍の書評マップ&評価> 下の画像をクリックすると拡大表示になります

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2016年3月にご紹介したものです。

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒) 
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長 
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格 
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに) 
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント 
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」 
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント 
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格 
    
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員 
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員 
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー 

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