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人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 [2015.08.17]

[77]『労働時間制度改革―ホワイトカラー・エグゼンプションはなぜ必要か』

 (大内 伸哉著 中央経済社 2015年2月)


 本書の著者は、ホワイトカラー・エグゼンプションを巡っては、現に長時間労働がある中で割増賃金を廃した制度の導入は論外だという意見もあれば、「ホワイトカラー・エグゼンプション=成果主義賃金」と捉えて導入を主張する声もあるが、どちらの論も、ホワイトカラー・エグゼンプションが労働基準法の改正論であるという意識が希薄なまま議論されているとしています。

 そこで本書では、まず、労働時間制度を論じるために知っておくべき法律の基本知識を解説した上で、日本の労働時間規制は労働者の健康保護に本当に役立ってきたかという疑問を投げかけるとともに、先進諸外国の労働時間法制との比較を通して、日本の労働時間規制の問題点を考察しています。

 それによれば、日本の労働時間規制は、三六協定の実態などから、①"上限規制"が生ぬるく、②過半数代表者は企業のイエスマンがなりやすい、③大した必要がなくても時間外労働させることができ、④割増賃金のごまかしに対するペナルティ機能は果たされていない、⑤労働者のほうも割増賃金があるため時間外労働を嫌がらなくなってしまい、⑥労働時間にカウントできるかどうか分からない仕事が増える――等々、問題山積であるとのことです。

 こうした実態を踏まえた著者の主張として興味深いのは、割増賃金が労働時間抑制に寄与しているかは疑問であり、労働者側からすれば、割増賃金があるからもっと働きたくなってしまうのではないかと。そうなると健康面では逆効果であるとして、「割増賃金不要論」を唱えている点です(実際、ドイツのように、法律上の割増賃金を撤廃した国もあるとのこと)。

 労働者の健康を確保するには、むしろ欧州のように労働時間に「絶対的上限」を設けることのほうが必要であり(有効性に疑問がある三六協定に委ねずに)、1日の労働時間も欧州流の「勤務間インターバル規制」で対応するのが望ましいとしています。その上で割増賃金を残すのであれば、1週40時間を超える時間外労働に適応すれば十分であり、割増賃金との関係だけのために、1日8時間の法定労働時間を残す必要はないとしています。

 労働時間規制改革の議論は、三六協定と割増賃金による労働時間制度が失敗に終わったことを率直に認めることから始めるべきであり、ホワイトカラー・エグゼンプションは、労働時間に関する規制緩和論ではなく、労働時間規制を再構築するための理論的考察の帰結にすぎないとしています。そして、運用課題の多い裁量労働制や管理監督者の適用除外制も発展的に解消し、新たな統一的な適用除外制に統合すべきだとしています。

 「残業代ゼロ」だからホワイトカラー・エグゼンプションはよくないというのは根本的に間違いで、より効率的に働くためには残業代がないほうがよいのではないか――本書はこうした問題意識から入って、割増賃金がある限り時間と賃金は切り離せず、これにメスを入れることがホワイトカラー・エグゼンプション論の狙いであるとし、ホワイトカラー・エグゼンプションの対象者がなし崩し的に増えることを懸念するよりも、ホワイトカラー・エグゼンプションに適した労働者が少ないことが日本社会の問題であるとしています。

 現行の労働時間規制の問題点については、実務者も共感する点が多いのではないでしょうか。ホワイトカラー・エグゼンプションの意義についての示唆を与えてくれる本でもあり、お薦めです。

<本書籍の書評マップ&評価> 下の画像をクリックすると拡大表示になります

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2015年5月にご紹介したものです。

 

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒) 
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長 
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格 
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに) 
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント 
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」 
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント 
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格 
    
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員 
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員 
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー 

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