jin-jour(ジンジュール) |人材育成、リーダーシップ、モチベーション、メンタルヘルス対策など 人事の視点から、働く人と会社の関係を元気にする情報を発信

ログイン
MENU

メニュー

×

新任担当者のための労働法セミナー [2015.07.24]

第39回 就業規則③ 周知義務(労基法106条)、不利益変更


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 当社では、法律に従って就業規則を作成し、労働基準監督署への届け出をしていますが、労働者には周知していません。このたび、就業規則の記載に従って懲戒処分をする必要が出てきましたが、この就業規則の効力はありますか?


A1 就業規則の効力は周知させることで発生します


【解説】

 就業規則は、作成したり、届け出しただけでは、効力は発生しません。就業規則の効力は、労働者に周知されることで発生すると考えられています。例えば、労働者が問題を起こして懲戒処分をする際には、あらかじめ就業規則に懲戒の種別と事由を定めておかなければなりません。このとき、周知させていない就業規則では有効な懲戒処分はできないと考えられています(懲戒処分については、「第23回 懲戒処分、懲戒解雇」をご参照ください)。
 なお、労働契約法7条にも、「合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」と記載されています。

■周知はいつでも見られる状態であればよい

 このように、就業規則の効力という趣旨から周知させることは重要ですが、法律上においても義務づけられており(労働基準法106条)、罰則もあります。
 その方法は、次のいずれかの方法で周知させればよいとされており、一人ひとりに配布することまで義務づけられているわけではありません(労働基準法施行規則52条の2)。
 ①常時、各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける
 ②労働者に書面を交付する
 ③パソコンなどで労働者が常時確認できる環境を整える
 この法律で「事業場」とは、原則として「場所ごと」をいいます。また、「作業場」とは、事業場内の個々の現場をいい、「建物ごと」と考えればいいでしょう。大きな工場などでは、一つの建物に一つずつ、見やすい場所に掲示する方法などが考えられます。
 なお、就業規則のほか、労使協定なども周知させることが義務づけられています[図表1]
 労働者が知ろうと思えばいつでも知ることができる状態になっていれば、「周知させていた」ということになります。

[図表1]労働者に周知する内容
 


■労働条件を会社が一方的に引き下げることはできない

 本シリーズの「第37回 就業規則①」で「会社は、退職金制度を導入する義務はない」と説明しました。では、一度導入した退職金制度を廃止する必要が生じたときは、どうしたらいいのでしょうか?
 原則として、会社は一度定めた労働条件を引き下げることはできません。過去にも、裁判等で争われたものが多数あり、注意が必要です。
 しかし、「労働条件の引き下げはできない」と労働基準法等で定められているわけではなく、会社と労働者の双方が合意すれば可能です。一人ひとりに説明し、合意が得られるのであれば、不利益変更することができます。


■合理性があれば一方的にすることができる

 労働者全員が合意すれば不利益な変更も可能です。しかし、問題は、反対者がいる場合です。反対者が一人でもいれば、不利益変更はできないのでしょうか。判例では、「変更内容が合理的なものであれば、反対者にも適用される」という判断が示されています(秋北バス事件 最高裁大法廷 昭43.12.25判決)。
 「合理性」があるかどうかの判断要素は、判例によって出来上がっています[図表2]。労働者が被る不利益の程度や変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働者や労働組合との交渉の経緯など、これらの要素に従い総合的に判断されます。

[図表2]労働条件の不利益変更に合理性があるかどうかの判断基準
 

 なお、平成20年に施行された労働契約法には、判例によって出来上がったこの内容が盛り込まれており、合理的なものであれば、不利益変更できるとされています(同法10条)。
 労働条件は、よくすることは簡単ですが、悪くすること(不利益変更)は簡単にはできないのです。このように考えると、労働条件を決定、変更する際には、将来の負担をよく考えて行う必要があります。


《復習&応用問題》

Q2  当社は創業以来、毎週土曜日、日曜日を休日とする完全週休2日制としてきました。このたび、顧客対応のため、1カ月のうち1日だけ土曜日に出勤してもらう必要が生じました。労働者に説明をしましたが、反対する労働者が数人おり、同意してもらえません。どうしたらいいでしょうか?


A2 代償措置を検討するなどの対処が必要です

 不利益変更に合理性があるかどうかは、いくつかの要素(前掲[図表2])によって総合的に判断されるもので、個別のケースごとに異なります。
 ご相談のケースでは、土曜日に出勤する代わりに、前後の週に1日を交替で休むなどの措置が必要だと考えられます。それが難しいようであれば、1日の所定労働時間を短くして、月の労働時間を調整することなどを検討されることをお勧めいたします。
 さらに、変更の必要性などを理解してもらうよう、しっかりと説明し、場合によっては個別の事情を聞く必要もあると考えられます。
 余談ですが、1日の労働時間が8時間の会社であれば、出勤する土曜日と同じ週に休日を設けなければ、1週40時間を超えることに注意が必要です(変形労働時間制を活用しない場合)。

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2014年6月にご紹介したものです。


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

●人事・総務担当者なら知っておきたい、よくあるケース・実務のポイントを123問のQ&A形式で解説!

●労働時間、解雇、賃金など、問題となりがちな項目について、労働基準法の定め・取り扱い等を図解入りで解説

 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

書籍の詳細、内容見本の閲覧、ご注文はこちらをクリックしてください

下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


管理職のeラーニング講座、お試しできます

無料トライアル受付中

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

ログイン

×

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品