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Point of view [2014.02.28]

第13回 黒部得善

指揮命令の結果の見える化で管理職をサポートし、自社に合った労務管理を


黒部得善  くろべ とくよし
株式会社リーガル・リテラシー 代表取締役社長
1974年8月生まれ。明治学院大学法学部卒業。97年社会保険労務士取得。社会保険労務士 大野 実氏(現東京社会保険労務士会会長)に師事。その後、㈱日立国際ビジネスにてITコンサルティングに従事。2002年にリーガル・リテラシー設立。 辞めそうな人や儲からなくなるお店を発見するタイムカード解析サービス<ロームセキュリティTM>や、A3用紙1枚で就業規則等を整理し労務を見える化する<契約書ナビTM>など、実践で使える労務管理運用の手法を念頭に技術や手法の開発を行い、主に飲食店・アミューズ・小売り等の多店舗ビジネスの労務運用サポートを専門的に行う。また、集合型コンサルティングで労務の見える化をする「労務のミカタ塾」を定期的に開催。 著書に『お店のバイトはなぜ1週間で辞めるのか(共著)』『就業規則がお店を滅ぼす』(共に日経BP社)がある。

 

労務管理をしているのは誰か

 私は、今は、飲食業やアミューズメント業など、パート・アルバイト従業員の比率が多い多店舗展開の労務管理の運用をサポートしている。「今は」と書いたのは、労務管理の特徴を知ることから入れば、どんな業態の労務も見える化でき、対応できると考えているからだ。
 私は、労務管理とは労働契約から始まる、労働契約とは『会社が指揮命令する権利を買って、対価として賃金を支払うこと』と定義している。かなり雑な定義と怒られるかもしれないが、経営者自身が“人を雇う”ということを正しく定義していないと感じ、このように定義している。自社の社員に対しての不満を言うよりも、ちゃんと指揮命令する権利を使いこなしているのか、と思うのだ。
 経営者が指揮命令をし、その意をくんだ管理職が、日常的に部下に対して指揮命令を行うのが労務だ。100人経営者がいれば100通りの考えがある。だから、100社あれば100通りの労務管理が生まれる。
 では、指揮命令の特徴とは何であろうか。それを知るには、まず指揮命令の三つの距離を理解することだと考えている。

指揮命令の三つの距離

 指揮命令は、経営者をスタートとして、日常的に部下を使う管理職が、最前線に立ち労務管理を行うことである。そのため、労務管理を考える時には、実際に指揮命令する管理職がやりやすいような形にすることに配慮しなくては、絵に描いた餅で終わる。
 そこで考えなければならないのが、三つの距離である。三つの距離とは、次のようなものだ。

①地理的距離:本社と支店など、物理的な距離感があるもの。それによって交流頻度や情報伝達量など差を生む距離
②役職的距離:役職の数によって生まれる距離。役職の数が少ないことによる役職間の能力差、もしくは、世代間ギャップを生む距離
③契約的距離:正社員とアルバイトなど、契約内容の差や違い、およびそれによって生まれる忠誠心などの心理的な距離

 この三つの距離が離れているからダメというわけではないが、それぞれの距離感によって、指揮命令の形態や方法は異なる。例えば、100人の会社と言っても、ワンフロアで100人の正社員の会社と、10店舗で正社員20人とアルバイト80人の会社とでは、指揮命令のやり方は大きく違ってくる。自社の組織図を見ながら、三つの距離がどのような状態にあるか、どのような指揮命令が適切かを考えてみると理解しやすい。
 また、会社の成長や事業展開によって、この距離感は変化、進化していく。よく「人事制度が古くなって機能しなくなっている」という話を耳にする。しかし、これは制度が古くなったのではなく、会社が変化や進化していく際に、距離感が変わってきていることに気づかず、微調整をせずに放置した結果であると考えられる。私は常に労務に完成形はないと言っているのだが、それは会社を取り巻く環境により、この三つの距離感が常に変化しているからだ。

勤怠データを活用し管理職の適切な指揮命令を助ける

 では、管理職が適切な指揮命令を行うために人事部がすべきことは何か。私は勤怠データを活用し、指揮命令の結果を見える化することを薦めている。管理職が部下に指揮命令した結果が、勤怠データとして打刻されているからである。
 勤怠データを活用した労務管理を強く行うようになったのは、過労死事件に対応した際、『言われてみれば……』『そういえば……』『まさか……』という、なんとなく見過ごされている事実を数値化することで、指揮命令の結果としての人の動きを、規制で対処するのではなく、事実の蓄積から予測する必要性を強く感じたからだ。
 弊社の中心顧客層であるサービス業が中心ではあるが、弊社では、10万人を超える従業員の日々の動きから、上司である管理職(主に店長)がどのような指揮命令をしたかを日常的に数値化している。その中から、同じ仕事であっても、管理職によって指揮命令の方法が大きく異なっていることが分かる。部下の忙しさの偏り方も同様である。数値を規制し、リスクとして感知するというよりも、職場で何が起きているのかを人事部員が管理職に質問する能力を高めるために、勤怠データを使い、管理職が指揮命令を円滑に行えるようサポートする。それが今後の人事部の大きな役割ではないかと考えている。
 これは、給与を支払うためではなく、お金を生みだすための勤怠データの使い方である。この勤怠データを解析するアルゴリズムで二つの特許も取得できた。特許が取れたということは、指揮命令の結果としての人の動きという観点は、まだメジャーな視点ではないように思う。

自社を主語にした労務管理を

 指揮命令をするに当たっては、『前の会社はこうだった』『うちらの業界は』『法律は』など、さまざまな主語が出てくる。100社100通りの労務管理をするためには『うちの会社は』と、自社を主語にして労務管理をしなくてはならない。自社を主語にして指揮命令することを放棄するのは、「社員なんて誰でもよい」「人であれば誰でもよい」というメッセージにほかならない。
 『指揮命令の内容に見合った給与を支払うために評価制度を構築する』『指揮命令したことをできるようにさせるために教育体系を整備する』こと、すなわち良い人材を採用し、より良い人材に変えて公平な給与を支払うという人事の重大業務の原点は、すべて自社を主語にした指揮命令から始まっているのだから。


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