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人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 [2014.01.06]

[39]『「現代型うつ」はサボりなのか』―吉野 聡


平凡社新書 2013年9月



 中高年から見れば単なる甘えやサボりに見えることが多い「現代型うつ」ですが、本書では「現代型うつ」を単に批判するのでなく、この病理をどのように理解し、どのような職場支援が必要なのかが具体的に述べられています。

 前半部分では、「現代型うつ」とは何かを事例を交えながら解説していますが、「現代型うつ」は、著者の実感として、患者の家庭が比較的裕福な場合が多いといった興味深い記述もあります。「現代型うつ」は不適応が原因であり、何に対して不適応を起こしているのかと言えば、これまで中高年が普通だと思ってきた職場環境に、ということになるとのことです。

 社会的病理とも言われる「現代型うつ」について、若者の働くモチベーションの問題や管理職のプレイングマネージャー化など、その背景となっている近年の職場環境の変化に触れています。日本と同様に「現代型うつ」が話題に上る国に韓国とイタリアがあり、3国に共通しているのは、労働者保護の傾向が強い労働法制と、家という制度を非常に大切しているお国柄であるというのも興味深いです。縦社会で、家族のように従業員を大切にする会社の在り方が、実存の不安を抱える「現代型うつ」の背景にあるとしています。

 日本うつ病学会さえも病理としては否定的見解を示している「現代型うつ」ですが、著者は「現代型うつ」も「うつ病」であるとの立場をとっており、産業医としてのこの見方は、実際に対処しなければならない事案として現実にこの問題に向き合っている人事パーソンの見方に呼応するかと思います。

 後半部分では、職場で「うつ」の若者とどう向き合い、職場の「うつ」をどう克服すればよいかが述べられていますが、著者は、上司の対応いかんで「現代型うつ」は回復に向かわせることができると訴えています。

 職場で「現代型うつ」の患者を支援することが最良の方法であり、そのアプローチの仕方として、「本人への支援的アプローチ 」(ストレス処理能力の強化)、「職場対応アプローチ」(褒め方・叱り方)、「限界提示アプローチ 」(企業における支援体制の限界の明示)の三つを示しています。

 また、ここでは、「SOC」(Sense Of Coherence)という概念を紹介しています。SOCは日本語で「首尾一貫感覚」と訳され、つらいことにも意味を見いだせる「有意味感」、困難な状況を秩序立てて受け止められる「把握可能感」、つらいことに対してもやればできると思える「処理可能感」の三つから成り、SOCを高めることで、「現代型うつ」は乗り越えられるとしています。

 つまり、SOCは鍛え、高めていくことが可能であり、会社こそがSOCを鍛える場であって、例えば「把握可能感」を高めるには、「一貫性のある経験をさせる」「本人の力+少しの負荷をかける」といったことが大事であるとしています。

 「褒め方・叱り方」について言えば、褒める際は間髪入れずに褒め、叱る際は具体的な理由を挙げて叱ることが大事であるとしています。また、「褒めて、叱って、褒める」という“サンドイッチ型”の叱り方なども紹介されています。

 現場で「現代型うつ」に向き合っている精神科産業医によって書かれた、人事パーソンにお薦めの一冊です。
 
<本書籍の書評マップ&評価> 下の画像をクリックすると拡大表示になります

 

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2013年10月にご紹介したものです 

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒) 
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長 
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格 
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに) 
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント 
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」 
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント 
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格 
    
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員 
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員 
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー 

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