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新任担当者のための労働法セミナー [2013.10.29]

第18回 平均賃金(労働基準法12条)、休業手当(労働基準法26条)、その他


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 平均賃金の計算方法を教えてください


A1 3カ月の賃金を平均して計算します


 平均賃金は、解雇予告手当、休業手当、災害補償、年次有給休暇の賃金、減給の制裁の算定の場合に用いられます。
 平均賃金は、算定する事由が生じた日以前3カ月間に支払った賃金総額を、その期間の暦日数で除して計算します。賃金総額には、通勤手当も含めます。

<計算例(1)――月給の場合>

――これが平均賃金となる

<ポイント>
①「算定する事由が生じた日」は含めず、前日から3カ月間を算定する
②賃金締切日があるときは、直前の賃金締切日から起算する(入社後3カ月未満であっても、直前の賃金締切日から起算する)
③臨時に支払った賃金、3カ月を超える期間ごとに支払った賃金、現金以外で支払ったものは賃金総額から除く
④業務上災害による休業、産前産後休業、会社都合の休業、育児・介護休業は賃金総額、暦日数から除く
⑤試用期間は賃金総額、暦日数から除く(ただし、試用期間中に平均賃金を算定する事由が生じた場合は算入する)
⑥入社後3カ月に満たない場合は、入社後の期間で計算する

○時間給の場合は二つの方法で計算する
 日給制、時間給制、請負制の場合は、3カ月間の賃金総額をその期間中に働いた日数で除して、その6割を算出し、最低保障とします。つまり、先ほどの計算方法と、この計算方法での日額の高いほうが平均賃金となります。

<計算例(2)――時給制や日給制、歩合給制の場合>
 時給制や日給制、歩合給制の場合は、①と②の高いほうを平均賃金とする

    ⇒ ①と②の高いほうを平均賃金とする。この場合は、「3000円」となる

【解説】

■歩合給制には保障が必要(労働基準法27条)

 営業職などに歩合給を取り入れている場合、極端に賃金が低ければ、労働者が生活をする上で支障が出ます。そのため会社は、通常の賃金とあまり隔たらない程度の賃金を保障することが義務づけられています。
保障額は、おおよその目安として、その労働者の平均賃金の約6割程度が妥当とされています。
 もちろん、労働者が働かなかった時間の賃金まで保障を義務づけているものではありません。

■使用者の責に帰すべき事由による休業には、平均賃金の6割を支払う(労働基準法26条)

 仕事がなく、工場を稼働しないときには労働者に休んでもらうことがあります。このような使用者の都合による休業の場合は、労働者の生活を保護する必要があるため、平均賃金の6割以上(休業手当)を支払うことが義務づけられています。
 地震や災害などの不可抗力による場合は、「使用者の都合による休業」から除かれますが、その他の事由による休業は、広い範囲で「使用者の都合」になります。例えば、親会社の経営難で資金の調達ができないという理由での休業は、使用者の都合とされています[図表1]

[図表1] 使用者の責に帰すべき事由に該当するかどうかの判断例

該当する 該当しない
  • 親会社の経営難のために資材、資金の供給を受けることができない
  • 争議行為をした労働組合員以外の労働者を、就業させることができるにもかかわらず休業させた場合
  •  
  •  
  • 天災事変 (いわゆる不可抗力) による休業の場合
  • 労働組合の争議行為に対抗するための作業所閉鎖
  • 定期健康診断の結果に基づく休業または労働時間の短縮
  • 行政官庁からの代休付与命令による休業

なお、就業規則などで、「休日」と定められている日には休業手当を支払う義務はありません。また、休業手当は所定の賃金支払日に支払うものとされています。

■1日のうち一部を休業した日は6割との差額を支払う

 1日のうち一部を休業した場合で、労働した時間の割合で賃金が支払われていても、その額が平均賃金の6割に満たない場合は、6割に不足する差額を支払う必要があります(昭27.8.7 基収3445)。
 つまり、一部を休業した日に、労働した時間に対して払われた賃金が平均賃金の6割以上であれば、それ以上支払う義務はないということになります。
 また、土曜日など所定労働時間が短い日については、通常どおり働いた場合の賃金よりも、休業手当のほうが高くなることがあります。この日に休業させた場合でも、平均賃金の6割を支払う必要があります。

■差別的な取り扱いは禁止されている(労働基準法3条、4条)

 労働基準法3条では、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取り扱いをしてはならないと定めています。信条とは特定の宗教的もしくは政治的信念をいい、社会的身分とは生来的な身分のことで、役職のことではありません。
 また、労働基準法4条では、「男女同一賃金の原則」として、女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取り扱いをしてはならないと定めています。差別的取り扱いとは、女性を不利に取り扱う場合のみならず、有利に扱う場合も含みます。
 なお、職務、能率、技能、年齢、勤続年数等によって賃金に個人的差異のあることは、差別的取り扱いに当たりません。


《復習&応用問題》

Q2 賃金支給日はまだ先ですが、「子供の出産のため」という理由で賃金を前払いしてほしいという申し出がありました。応じなければなりませんか?


A2 働いていない分の賃金の前払いの申し出には応じなくても構いません

 労働基準法25条には、出産、疾病、災害等非常時の費用に充てるために請求があれば、「支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない」と定められています。
 そのため、請求があれば、賃金支給日前であっても賃金を支払う必要があります。ただし、支払い義務があるのは、すでに働いた分に対する賃金であり、働いていない分の賃金の前払いを義務づけているわけではありません。
 なお、ここでいう非常時とは、「労働者または労働者の収入によって生計を維持する者」が、次に該当する場合を指します(労働基準法施行規則9条)。
 ①出産、疾病、または災害を受けた場合
 ②結婚または死亡した場合
 ③やむを得ない事由により1週間以上にわたって帰郷する場合

Q3 当社の退職金規程には、支払日は明記していませんが、通常約1カ月以内に払っています。先日退職した者から、7日以内に支払うよう言われましたが、応じる必要はありますか?


A3 退職者からの請求があれば7日以内に支払わなければなりません(労働基準法23条)

 労働者が退職した場合、権利者から請求があれば、7日以内に賃金を支払わなければなりません。また、積立金、貯蓄金など名称にかかわらず労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。
退職金も支給条件が明確な場合は「賃金」であり、この法律の適用を受けます。ただし、退職金の場合は通常の賃金とは若干異なり、退職金規程に支払い時期が定められている場合は、定められた時期に支払えば問題ないとされています(昭26.12.27 基収5483、昭63.3.14 基発150)。
 定めがない場合は、労働者から請求があれば、7日以内に支払わなければならないという裁判例があり、注意が必要です(宇田工業事件 大阪地裁 昭60.12.23判決)。
 なお、労働者が死亡した場合で、権利者から請求があった場合も同様です。ただし、ここでいう「権利者」とは、退職の場合は本人、死亡の場合は相続人をいい、金銭貸借関係にある債権者は含まれませんので、労働者の借金の取立人からの請求に応じて支払うことを義務づけるものではありません。

Q4 先の東日本大震災のときのように、計画停電が実施されるために休業する場合は、「使用者の責に帰すべき事由」に該当せず、休業手当を払う必要はないと考えてよろしいですか?


A4 計画停電の時間帯については、原則として使用者の責に帰すべき事由に該当しませんが、それ以外の時間帯については状況により判断(平23.3.15 基監発0315第1号)。[図表2]をご参照ください。

[図表2]計画停電が実施される場合の労働基準法26条の取り扱い

計画停電の時間帯 ○原則として使用者の責に帰すべき事由に該当しない
計画停電以外の時間帯

○原則として使用者の責に帰すべき事由に該当する

○ただし、計画停電が実施される日に、計画停電の時間帯を含めて休業とする場合であって、他の手段や休業回避努力等を総合的に見て、やむを得ないと認められる場合には、計画停電以外の時間帯を含めて使用者の責に帰すべき事由に該当しない

計画停電が予定されていたが、実施されなかった場合 ○計画停電の予定、変更の内容、公表時期により、上記の考え方をもとに判断される


※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2012年9月にご紹介したものです。


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

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●労働時間、解雇、賃金など、問題となりがちな項目について、労働基準法の定め・取り扱い等を図解入りで解説

 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


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