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育成担当者のための 今月の注目トピック [2012.12.27]

第9回 ITツールを活用し、研修フォローアップを活性化・有意義化する 

 


中川繁勝  なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー


 研修プログラムをどうするか? 講師は? どう参加してもらうか? 参加者の現場業務との調整は? 研修評価は? 研修の意義を上長や各部署のマネジャーたちにどう説明して納得してもらうか? ――育成担当者の悩みは多い。中でも、「研修の効果測定」と並んで、長きにわたりテーマとなっている割に実践が難しいことの一つとして挙げられるのが「研修のフォローアップ」ではないだろうか。
 今回は研修フォローアップに注目してみたい。

●複数のハードルに阻まれる研修フォローアップの現状

 正直なところ育成担当者にとっては、研修を実施してアンケートを採るところまでで精いっぱいな現状ではないだろうか。現場に帰ってしまった受講者全員に対して追跡してフォローすることは物理的に難しい。再び、あるいは再三にわたり集まってもらいフォローアップ研修をすれば、成長を確認したり振り返ったりすることもできる。しかし、現場の業務を鑑みれば困難なハードルがいくつか見えてくる。チャレンジしたことのある育成担当者も少ないだろう。
 では現場の上長や先輩社員にフォローしてもらおう、という考え方もある。OJTでのフォローアップだ。親身になってフォローに協力してくれる方々もいるだろうが、何人もの部下が参加した、さまざまな研修のフォローを個別に行うというのは、上長や先輩社員に大きな負担となってのしかかってしまう。結果的にフォローアップ自体が手薄になるだけでなく、上長や先輩社員がフォローに対して非協力的な方向に傾いてしまう危険性もある。
 このような事情でなかなか進んでいないのが研修フォローアップである。「研修には出てみたものの、学んだ内容を実際の業務の中ではできない」「分かってはいるけど難しい」という非達成感が横行し、研修が“やりっぱなし”になってしまうのが実情だ。
 これは育成担当者にとっても受講者にとっても、部下を研修に送り出した現場の上長にとっても残念な結果だ。

●研修の学びを成長につなげる方法

 研修で学びと成長のすべてが完結するわけではない。研修という限られた時間の中では、少なからず実感を伴いながら納得し、知識をインプットし、自分はどうすればいいのかに気づくところまで行ければ十分だろう。
 では、どうしたら研修での学びを現場の仕事に生かして成長していけるのだろうか。ここで一つ興味深いツールを紹介しよう。

・行動計画の実施状況を日々入力
 「Action T.C.」というITツールだ。研修後、受講者はAction T.C.にアカウントを持ち、ここで、研修での学びに沿った目標設定と、そのための行動計画(Action T.C.では目標と行動計画を合わせて「アクションプラン」と呼ぶ)を作成する。ここまでは、これまでも研修の中で行われてきたことだが、Action T.C.では受講者が行動計画の実施状況を日々入力する。行動計画についての日記を書くようなイメージだ。これでアクションプランに対する振り返りを行う。

・リマインド機能とシンプルな操作で「振り返り」を習慣化
 実は、従来の手法で同じようなことをすると、ここに一つのハードルがある。面倒くさくなってしまったり、つい忘れてしまうのだ。Action T.C.はITツールの強みを生かし、リマインドメールを受講者に送ることで振り返りの記録を促す。メールのURLをクリックするだけで入力ページに移ることができる。さらに入力も「できた」「できなかった」という簡単な選択肢を選ぶだけというシンプルさだ。その後、自己分析を記述する。
 このように、セルフチェックによって行動を振り返ることをAction T.C.が習慣化してくれるというわけだ。日々研修での学びや気づきから得られた行動を振り返ってもらえるというのは、育成担当者にとってありがたいことだ。

・受講者全員、研修のステークホルダー全員を巻き込む
 さらにその記録したという事実は研修を受けた他の受講者仲間(全員あるいは研修内でのグループ)にメールで通知される。振り返りという行動をしたかどうかが他者に分かる仕組みになっているのだ。受信した仲間はメールのURLをクリックすることでページに移動し、記録した相手の振り返りを読んでフィードバックコメントを残すことができる。そこには応援や共感の言葉が書かれたり、「こうしたらどう?」というようなアドバイスが書かれたりする。時には上長からのコメントもあるし、別の部署のマネジャーからフィードバックコメントが入ることもある。このツールは組織内の斜めの関係を作ることにも一役買っている。受講者は仲間や上長と共に、自分の設定した目標に向かって行動する日々を送ることとなる。受講者はお互いの状況を見合ったり応援コメントを送り合ったりすることで、共に成長していくというわけだ。Action T.C.は個人向けのツールではなく、チーム、あるいは研修のステークホルダー全員を巻き込んだツールになっている。

・育成担当者は受講者各人の振り返り状況をフォロー可能
 とはいえ、受講者にすべてを任せてしまっていては、育成担当者にとっては結局やりっぱなしになってしまう。そこで、育成担当者には受講者全員のアクションプランや振り返りの記録回数とその内容、他者への応援メッセージの回数などが一覧できるようになっている。すなわち、Action T.C.を使ったフォローアップに積極的に参加しているのかどうかが一目で分かるというわけだ。ここで動きの芳(かんば)しくない受講者を見つけ、個別にフォローしていくことができる。全員をフォローするのは難しいが、個別に、かつ動きの鈍い受講者をうまくすくい上げることができるのだ。
 これによって、受講者は研修を離れた後でも、研修での学びと気づきはもちろん仲間とのつながりまでも維持しながら日々を過ごし、行動を定着化していくプロセスを進んでいくことができる――というわけだ。上長にも先輩にも育成担当者にも過剰な負担を掛けることなく、受講者同士が自律的に支え合い成長していくことができるツールと言えよう。
 Action T.C.というITツールは、研修フォローアップに存在する数々のハードルを、ITを利用することでクリアしたと言える。育成におけるIT活用と言うとeラーニングが思い浮かぶが、こういうITの使い方もあるのだ。

●何が行動を促していくのか

 Action T.C.は研修フォローアップのツールではなく「行動改善システム」と名付けられている。研修の重要な目的の一つは「行動変容」だ。この行動変容を促すためのいくつかの仕掛けがこのITツールに搭載されている。それをひもといてみよう。

1.振り返りを促す機会
 大きなポイントの一つは、行動の振り返りを行っていることだろう。東京大学の中原淳准教授は、自身の著書の中でアクション(行動)とリフレクション(内省)――すなわち振り返りの重要性を説いている。例えば、帰りの電車の中で、なんとなく今日一日の出来事を振り返る人もいるだろう。しかし、その頭の中にある考えを文字という見える形にすることで、私たちは自分の考えや想(おも)いを再認識することができるし、またフィードバックを得る機会もできるのだ。Action T.C.では、その機会が日々のメールで飛んでくる。毎日上司に「今日はどうだった?」と尋ねられる機会をメールに置き換えているわけだ。

2.他者の存在とフィードバック
 前述の中原准教授の著書『リフレクティブ・マネジャー』(光文社新書 神戸大学大学院 金井壽宏教授との共著)に、「リフレクションの結果、感じたこと、気づいたこと、思ったこと、考えたことは、他の人々と話し合った方がいい」とある。業務の中で、しかも離れた部署にいたりする受講者たちが物理的に集まるというのは難しい面があるが、ITツールがそれを可能にしている。それぞれの行動記録に対して相互にコメントするという仕組みがそれだ。日々繰り返しリフレクションを行っていくことを、独りぼっちではなく仲間を作って相互に支え合いながら進める仕掛けは、“誰かとつながりたい”という私たちの潜在的な想いにも共鳴し、うまく働くのであろう。
 仲間の存在は心強い。安心感もあるし、場合によってはそこにライバル心も生まれるかもしれないが、いずれにしても続けていくモチベーションにつながっている。継続と学びを深め気づきを生かすために、他者の存在とフィードバックが必要であると言えよう。

3.面白みを演出する競争の原理
 私たちは行動の中に“面白み”を求めている。遊びでも仕事でも面白いと熱中することができる。実はAction T.C.の中には、個人やグループごとのランキングを表示する機能がついているのだ。競争の対象になるのは振り返りの記録数、フィードバックした回数、フィードバックされた回数などがある。うまい具合にライバル心をあおり、グループごとのランキングとなれば、お互いのフィードバックの数が勝敗を左右することになるので、必然的に振り返り数やフィードバックの数が増える。フィードバックはやる気に影響を与えているので、個人のみならずグループ全体のやる気まで高まってくる。うまく競争を促して面白みを演出することがツールを利用することへのモチベーションとなり、自律的に活用する要因になっている。

●成長を促す仕掛け作り

 育成担当者のスタンスとして、自分であるいは自部署のリソースだけで何かしなくては、という意識もあるだろう。しかし、研修フォローアップにおいて成長を促しているものは、研修そのものでも育成担当者や育成部門でもなく、一人ひとりが他者とどうつながり、どう支え合っていくか――というところにありそうだ。その要点を押さえてしまいさえすれば、育成担当者に仕掛けられることはまだまだあるに違いない。
 研修を提供するということは育成担当者が社員の成長を促すための一つの仕掛けにすぎない。だとすれば、「社員の成長を促す」という目的において、育成担当者にできる仕掛けは、「研修フォローアップ」を含めまだまだありそうな気はしないだろうか。

Action T.C.の紹介ページ:http://actiontc.jp/

 ※本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2011年12月に掲載したものです

中川繁勝中川繁勝 なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー

システムエンジニア、ネットワーク技術者養成のマーケティングを経て、ITコンサルティング会社の人財開発マネジャーとしてコンサルタントの育成に従事した後、独立。現在は、研修講師としてロジカルシンキングやプレゼンテーション等のコミュニケーション系研修を提供するとともに、人財育成を支援するためのコンサルティングサービスも提供している。NPO法人人材育成マネジメント研究会理事。ワールド・カフェをはじめとした対話の場の普及を促進するダイナミクス・オブ・ダイアログLLPのパートナーとして、各種ワールド・カフェとワールド・カフェ・ウィークの開催を推進。また、場活流チェンジリーダー塾にてメンターとしてリーダーの在り方を養成する活動にも従事する。


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