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『日本人事』特別企画 「私の視点―これからの日本・ヒト・人事」 [2012.10.31]

第5回・完  水野陽二郞


人事部員は経営の伝道師、好かれなくとも「信頼される」人事であれ

水野 陽二郞 みずの ようじろう
株式会社豊田自動織機 執行役員 人事部 部長

1960年生まれ。1983年慶應義塾大学商学部卒業。同年4月 ㈱豊田自動織機製作所(現・豊田自動織機)に入社。2003年にトヨタL&Fカンパニー人事総務部部長に就任。その後、広報部部長、トヨタL&Fカンパニー国内営業部副部長を歴任し、2010年6月に執行役員トヨタL&Fカンパニー国内営業部部長に就任。2011年6月より執行役員人事部部長に就任し、現在に至る。


1.人事の役割

 書籍「日本人事」の中でも「経営と人事は一体である」と随所に書かれていますが、まさにそのとおりだと思います。個人の目標を会社の目標に沿うようにしていく。当たり前のことですが、個人の成長が部や課といった組織の成長を促し、その総和として会社の発展につながるということをよく認識する必要があります。
 そして、人事の役割は、経営の目的、目標を達成するための手段としての各施策を通じ、家族を含めた従業員一人ひとりが明るく元気でいられる、仕事にやりがいを持って成長していけるようにすることと言えます。すなわち、人事の仕事は、常に会社の持続的な発展に貢献するものでなければならないのです。

2.人が人を育てる

 当社では「腕」「知恵」「(和の)心」の三つが合わさって初めて職場の力が発揮できると考えています。固有技能、技術といった「腕」を最大限に発揮するためには「知恵(ノウハウ)」が必要となってくる。しかし、組織の力を最大化するには一人の力では限界があるため、幹となる根っこの部分ではチームワーク、和の心でつながっていなければいけない、ということです。
◆和の心
 東日本大震災以降、「絆」という言葉がよく使われます。今日この言葉が新鮮に聞こえるということは、絆なり連携、チームワークといった意識が希薄になっているということではないでしょうか。今更言うまでもありませんが、ネット社会が広がる中、デジタルでバーチャルな世界で、孤立して生きている人々が増えてきました。そして、このような社会の状況が、企業にも入り込んできています。
 企業としては、デジタル、バーチャルな世界から、ある意味アナログな人間社会に戻すことが必要だと考えています。今の若い人は、飲みに誘っても来ないから…と諦めてはいけません。われわれのようなモノづくりの会社にとって、チームワークは妥協できないことであって、人と人とのつながりは不可欠です。これがなくなったらグローバル化による空洞化以前に、日本からモノづくりがなくなってしまうでしょう。
 当社では、さまざまな仕掛けで個人を引っ張り出しています。夏祭り、運動会、駅伝大会など全社イベントに加え、職場単位でもレクリエーションを実施しています。これらはあくまでツールなので、型通り行うのではなく、個人に焦点を当て、味付けをして参加させるような工夫が必要です。独りぼっちにさせない、絆を深めていくためにFace to faceでのコミュニケーション、ふれあいの場をいかにつくっていくかが、今求められている気がします。

◆OJTが人材育成の基本
 専門知識というものは独学でも身に付けることができると思いますし、OFF-JTでも習得できると思いますが、「仕事」をするためには個別の専門知識だけでなく問題解決能力や指導力等のさまざまな能力、そしてベースとなる価値観や心構えの共有が必要です。点としての専門知識にこれらの能力、心構えを付加することにより、点から線へ、そして面へと進化させていかなければなりません。
 これらを身に付けるためには、自ら考え、行動することが大前提ですが、上司、先輩と共に働き、日々指導され、上司、先輩の考えを感じて吸収することが必要です。会社としては、時間はかかりますが、日々の徹底的なOJTを通じて、共通の価値観を持った自分以上の存在を育てることで、事業の継続性やさらなる会社の成長が実現できると考えています。

3.グローバル化の中での課題

 海外事業での人事労務管理で大切なことは、まず現地の労働慣行や制度を研究して、会社が事業運営をしていく上で大切にしている価値観と照らし合わせ、目的のための最適な手段を追及することだと思います。
◆アメリカでの経験
 私は29歳の時にアメリカで新会社を立ち上げるため、人事のコーディネータとして赴任しました。当時は英語力も全くなく、また当社として初めての海外工場であったため、会社として海外での人事労務管理に関するノウハウもない状況で、「日本人事」にも登場するトヨタの吉貴さんにもいろいろご教授いただき、自分なりに考えて方向性を見だしてきました。
 新会社設立に向けてまず取り組んだのは、労務基盤を確立するということでした。日本では、長年の労使双方の努力、協力により、利益の分配面だけでなく、源泉(企業業績)の確保に対しても自らの責任として対処するという相互認識が確立されています。しかし、少なくとも当時のアメリカでは、産別組合の影響が強く、個別企業の源泉確保に向けて労使が協力して取り組むという姿勢は感じられませんでした。従って、当社の場合、これは最終的には従業員が判断することなのですが、第三者の介在は必要とせず、経営を行っていくという考えを従業員に説明し、その上で人事労務の制度や仕組みを整備しました。
 われわれは、企業における生産性向上が労働条件の維持・向上をもたらし、その結果として従業員や家族の幸せにつながると考えています。会社の生産性を高め、会社を持続的に発展させていくためには経営者、従業員が一枚岩になることが必要であり、この部分で妥協はできないということです。

◆あたかも労働組合があるがごとく、人事労務の仕組みを構築する
 労働組合がない中で経営を行っていくということは、逆に言えば労働組合の役割を会社に取り込んでいく必要があるということです。
 特に注力したのが従業員とのコミュニケーションと従業員の要望や不平・不満を吸い上げる仕組みづくりでした。トップと従業員の直接対話、各階層別の懇談会、人事と各職場の懇談会等々、他の出向者からやり過ぎではないか、と言われる程実施してきました。
 このような場を通して、会社の状況や方向性を周知し、従業員に理解してもらうと同時に、従業員個々の悩み、不満、要望を人事が吸い上げ、労働組合の代わりに従業員の立場から会社トップに伝え、迅速に対応するということです。

4.人事部および人事部員のあるべき姿

 冒頭、申し上げたとおり、人事労務の制度、仕組みは経営の目的、目標を達成するための手段であり、常に会社の発展につながっていなければなりません。
 従って、人事に携わる人たちは、会社の状況はどうなっているのか、どのような方向に進もうとしているのか、その中で、従業員はどのような気持ちで働いているのか、常にアンテナを高くして把握しておく必要があります。
 また、経営を取り巻く環境や従業員の構成・心情等が、日々変化していることから、人事労務の制度、仕組みというのは、画―的・固定的なものではなく、事業環境や社会環境の変化に対応して常に変化するもの、言い換えれば「生き物」と言えます。
 常に心掛けるべきことは、現状の制度、仕組みや労使間のルールといったものが、どのような背景で生まれ、どのような考え方によって制定されたのか、ということを理解しておくことです。そうした本質を理解した上で、会社の状況、方向性、従業員の意識を見極めると同時にそれぞれの会社にある譲れない価値観に照らし合わせて、残すもの、変えるもの、廃止するものを区別、整理していくことが必要です。
 人事部および人事部員は経営の伝道師であり、リーダーであるという誇りと自負心を持つと同時に、常に謙虚に振る舞い「好かれなくとも信頼される人事」でありたいと思います。


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