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新任担当者のための労働法セミナー [2012.09.13]

第5回 変形労働時間制[3]


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士


1年単位の変形労働時間制(2)、1週間単位の非定型的変形労働時間制


 今回のクエスチョン

Q1 「1カ月単位の変形労働時間制」と「1年単位の変形労働時間制」ではどちらの
   ほうが有利ですか?


A1 どちらが有利かは一概にいえません


 1年間の労働時間に繁閑があったり、お盆、年末年始の休日が多い会社は、1年単位の変形労働時間制のほうが有利なケースが多いです。一方、1カ月のうちで繁閑があったり、1日の労働時間に長短がある会社は、1カ月単位の変形労働時間制のほうが使い勝手がよいケースが多いといえます。
 1年単位の変形労働時間制のほうが、平均する期間が長い分、所定労働時間を偏らせることができますので、会社にとって有利とも考えられます。しかし、1年単位の変形労働時間制には1日や1週の労働時間に上限がありますので、これらの点も考えあわせていただくとよいと思います。

【解説①】1年単位の変形労働時間制(2)

■1日または1週間の労働時間には上限がある
 
例えば、1年間という長い期間を平均してこの制度を使う場合、極端に偏った所定労働時間とすることもできます。そうすると、平均して1週間当たりの労働時間を40時間以内にしたとしても、労働者の健康や生活に支障が出る可能性があります。そのため、労働時間、連続労働日数などには限度が定められています。
・1日の上限:  10時間
・1週間の上限: 52時間
・対象期間の最も長い連続労働日数:6日
・特定期間の最も長い連続労働日数:12日

 「特定期間」は特に繁忙な期間として協定する期間です。ただし、対象期間の相当部分を特定期間とすることは法の趣旨に反して認められません。また、いったん協定した特定期間を対象期間の途中で変更することも認められません。

■3カ月超は労働日数の限度もある
 同様の考え方により、対象期間が3カ月を超える場合は労働日数の限度などが定められています。3カ月以内を対象とする場合は、この限度はありません。
(1)労働日数の限度 =280日×対象期間の暦日数÷365日
 上記の算式に当てはめて計算した日数が上限になります(1年365日の場合。端数は切り捨てます)。このため、対象期間が1年であれば、限度日数は280日になります。1年の労働日数の上限が280日ということは、1年で85日以上(365日-280日=85日)の休日を確保しなければならないということになります。
(2)週48時間を超える所定労働時間を設定するのは連続3週以内
(3)対象期間を初日から3カ月ごとに区切った各期間において、週48時間を超える週は3週以内

■旧協定と比較した限度もある
 
対象期間が3カ月を超える場合で、
(1)新協定で定める1日の労働時間のうち最も長いものが、以前の協定よりも長くなる場合で9時間を超える
 または
(2)新協定で定める1週間の労働時間のうち最も長いものが、以前の協定よりも長くなる場合で48時間を超える
――のであれば、以前の協定よりも労働日数を1日でも短くする必要があります。

■期間を区切って後で決定する方法もある
 
1年単位の変形労働時間制は、業務の都合で頻繁に労働日を変更する場合には適用できません。対象期間のすべての労働日と各日の労働時間を決定することが難しいのであれば、1カ月以上の期間に区切り、最初の期間だけをとりあえず決定しておく方法があります。
 この場合は、最初の期間を除く残りの期間については、労働日数と総労働時間を定めておけばよいのです。その後、各期間が始まる30日前までに、その期間の労働日と各日の労働時間を定めます。この場合、労働者の過半数を代表する者または過半数労働組合との同意を得て書面で通知します[図表]。

[図表]

 なお、業務の都合で頻繁に労働日を変更することはできませんが、業務上やむを得ない事由がある場合には、振替変更することはできます。労使協定には、その旨を記載しておく必要があります。

【解説②】1週間単位の非定型的変形労働時間制

■日ごとの繁閑に対応する制度
 
1週間単位の非定型的変形労働時間制は、日によって繁閑の差が激しい業種のための制度です。就業規則であらかじめ労働時間を特定できず、1年単位の変形労働時間制や1カ月単位の変形労働時間制を導入しにくい零細規模のサービス業の一部のみに認められています。
 週40時間以内であれば、1日10時間を超えない範囲で8時間を超える日があっても、時間外労働にはなりません。就業規則に労働時間を記載することが難しい仕事でも、就業規則に記載せずにシフト表で労働時間を通知することができます。
 この制度を活用できるのは、小売店、旅館、料理店、飲食店で労働者30人未満の事業場に限られています。

■週の開始前日までに労働時間を通知する
 
この制度を導入するには、労使協定を締結して労働基準監督署へ届け出する必要があります。各日の労働時間は、1週間の開始前までに書面で労働者に通知しなければなりません。
 通知した労働時間を変更することは、緊急でやむを得ない場合に限り、前日までに書面で労働者に通知することで可能です。

≪復習&応用問題≫

Q2 1週間単位の非定型的変形労働時間制で時間外労働となる時間を教えてください

 A2 以下のいずれかに該当する時間が時間外労働となります

 時間外労働となる時間は、次のいずれかに該当する時間です。1年単位や1カ月単位の変形労働時間制と基本的な考え方は同じです。
(1)事前通知による1日の所定労働時間に対して、
 ・ 所定労働時間が8時間を超える日は、その時間を超えて労働した時間
 ・ 所定労働時間が8時間以下の日は、8時間を超えて労働した時間
(2)1週の所定労働時間に対して、
 ・ 40時間を超えた時間((1)で時間外労働となる時間を除く)

Q3 飲食業で労働者30人未満の事業場です。1週間単位の非定型的変形労働時間制と
       1カ月単位の変形労働時間制とでは、どちらのほうが有利ですか

 A3 日ごとの繁閑がそれほどないなら、1カ月単位の変形労働時間制のほうが有利です

 1カ月単位の変形労働時間制が有利な点を簡単にまとめると、次のようになります。
  〇1日の労働時間の上限はない(1週間単位の非定型的変形労働時間制は10時間)
  〇特例事業場の1週の法定労働時間は44時間(1週間単位の非定型的変形労働時間制は40時間)

 日ごとの労働時間が変動することを想定したものが1週間単位の非定型的変形労働時間制です。ただし、週の開始前には各日の労働時間を通知する必要があり、その日の繁閑に合わせて労働時間を延長、短縮する制度ではありません。また、開始後に労働時間を変更できるのは緊急やむを得ない場合に限られます。
 一方、1カ月単位の変形労働時間制は、就業規則に労働時間のパターンやその周知方法などの記載は必要ですが、変形期間開始前までに勤務シフト表を明示すればよいこととされています。このように考えると、1週間単位の変形労働時間制とそれほど違いはないということになります。


※本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2011年8月に掲載したものです


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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』(以上、成美堂出版)など。
http://www.improve1998.com/


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