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HRエグゼクティブの羅針盤――企業の未来と人事の哲学 [2012.06.12]

第2回 多様性の光と影

 


舞田竜宣  まいた たつのぶ HRビジネスパートナー株式会社 代表取締役/
多摩大学大学院客員教授


 目の前の課題をこなすだけでなく、未来の会社と人をつくる使命を負ったHRエグゼクティブには、知識だけでなく深遠な構想力が求められる。そして構想をするためには、思考の軸となる「哲学」が欠かせない。
 そこでこの連載では、知識より哲学を練ることを目的に、ネットならではの双方向性を活かした対話形式で、一見シンプルだけれど中身は深い今日的問題について、読者とやりとりしながら考察を深めるという試みをしている。
 第1回はグローバル化をテーマに、以下の三つの点を読者に問うた。

1.日本本社で外国人を大量採用し、日本の若者の職が失われてもよいか
2.若手社員の海外経験は、辞めやすい人間をつくるのではないか
3.経営者は、日本人より外国人のほうが適任か

 この実験的な企画に、多くの方からさまざまなご意見が寄せられた。今回はそれらを基に、さらなる考察を深めてみよう。


問1 日本本社で外国人を大量採用し、日本の若者の職が失われてもよいか

■賛成、現実容認

 これに対して、「そう思う。失われるのは仕方がない」という意見がたくさん寄せられた。
 例えば、ある方は言う。

「機会平等」が大切であって、雇用を守る優先順位より高いと考えます。
日本人も負けないだけの学力、スキルを身に付けることが必須で、ゆとり教育等を行った結果、外国人に正社員の椅子を奪われたのです。
子供たちに徹底的に教育を行い、日本人の雇用を守るべきです。
実力を身に付けて雇用を守ることが王道です。
ただ雇用を守るためで実力のない日本人を雇うことは、社会主義、共産主義のようになり日本の国力を奪ってしまいます。

 また、別の方は次のように主張する。

日本人は「日本人」であるゆえに、外国人に比して日本企業で働く際には有利なのは間違いない。
なのに今企業が外国人ばかり雇おうとしているのは、外国人である不利さ(会社にとって不便さ)を補って余りあるメリットが外国人採用にあるからです。
自分たちがすでに持っているアドバンテージさえ活かせていないことを、日本人の求職者は理解したほうがいい。
それさえ活かせない人間は日本だけでなく世界では戦えない。

 外国人を採用するというのは、基本的には適材適所の考え方に基づく。これからグローバル展開を加速する中で、現有社員に適材が十分におらず、日本人の新卒でも不足となれば、国籍に関係なく採用するのは、ある意味で当然の人材戦略といえよう。
 事業だけでなく雇用も国際化する今後は、日本人は日本人であることに甘えず、世界の中で優秀人材と目されるよう自らを鍛えなければいけない。上記のご意見からは、そうした祈りにも近い思いが感じられる。

■反対

 一方で、次のような反対意見もいただいた。

日本の若者を守るある程度のナショナリズム的な考えがないと会社を発展させようとする愛社精神も生まれないと考えます。
愛社精神がなく個人の利益ばかり求める思想ばかりになると、企業の発展も妨げられると思います。

 ナショナリズムと聞くと、戦後教育を受けた人の多くは違和感を覚えるかもしれない。だが、国を愛し守ろうとする心というのは大切ではないだろうか。後で再び触れるが、アメリカの強さというのは、ここに根ざしている部分もあると思う。

■外国人雇用は、必ずしも日本人の雇用にとってマイナスではない

 かと思うと、以下のような意見をお寄せいただいた人事役員もおられた。

世界の人々と仕事をしていると、人間愛に宗教、文化、慣習、国境はないという場面をよく経験します。
人間愛の本質を追究し、人類の幸福を実現するために企業の存在感を見いだせればと思います。

 このような考え方は、コスモポリタニズム(世界主義)に根ざしているといってもよいだろう。
 それでは、ナショナリズムと、コスモポリタニズム、どちらが「正義」なのだろう?
 外国人雇用が、必ずしも日本人の雇用にとってマイナスではないのではないか、というご意見もいただいた。
 例えば、ある方は言う。

社内にいる日本人が彼らから能力を吸収し、彼ら以上の能力を発揮すればおのずと若者の雇用機会は回復すると考えますし、外国人が会社の売上に貢献してくれれば、それだけ日本国内の雇用に費用を割けるのではないかと考えます。

 同様のご意見は、別の方からもいただいた。

外国人大量採用で日本企業が発展し、もうけることで日本経済の向上につながる。
その結果、新たな雇用がうまれたり、賃金向上をみられたりするだろう。
逆に、外国人を採用せず、日本人のみを採用することで、企業発展が進まず、日本経済も停滞するなら、結果的に日本人の若者を(採用して)守ることにも限界が来る。守ること=相対的に力を失っていくこと。

 外国人が活躍することで、日本が発展し、それがこの国で働くすべての人にとってプラスに働くのではないか――というご意見だ。
 先ほど触れた「アメリカの強さ」は、この考え方に近い。彼らは、有能な人材をどんどん受け入れて産業を振興し経済を成長させることで、国民全体が長期的には栄えられると考える。そればかりではない。国外から来た有能な人材を、「アメリカ人」にしてしまう。
 これはコスモポリタニズムとナショナリズムの融合だ。「世界の適材が職を得るのは当然だ。だが、その適材はアメリカ人である」という論理を、彼らは成立させようとしているのだ。

■総括-問われるのは開かれた国として攻めに出る覚悟

 しかし、そうなると、国内においてグローバル競争が起きることになる。生まれや育ちが日本だろうと外国だろうと、この国で職を得られるかどうかはひとえに自分の力量にかかってくる。
 日本企業が、能力ある外国人を適材適所に採用することは、正しい。しかし、それが日本の若者の職を失うことにはならない。
 日本の若者も、外国人に負けないだけの能力と、気概や強い意志をもって臨めば、外国人に引けをとらないだろうから。日本の若者には、強く、大きな心を持ってほしい。
 閉じた国で守りを固めるのではなく、開かれた国として攻めに出る。この覚悟が、我々にあるか。それが問われる時代になるだろう。



「うちの12歳の娘が、○○小学生新聞を持ってきて、『外国人雇用が増えると日本人が就職できなくて困る』と言って来ました。」
 某社の人事部長からは、このような切実なメールをいただいた。ことが自分の家族、特に子供のこととなると、正直、答えるべき言葉が見つからない方も多いのではないだろうか。
 でもそれに対して、あえて答えるとしたならば、もしかするとこういう言い方もあるのかもしれない。
「たしかに、今までより就職が厳しくなるかもしれないね。でもそれは、日本がもっと大きくなるために必要なことなんだ。だからお前も、これからの日本の役に立てるよう、大きな人間に成長し、良い仕事に就いてほしい。
外国から来た人を、決して嫌ってはいけない。彼らも、日本が大きくなるために大切な役割を負っているのだから。日本は、みんなの国なんだからね。」

 

問2 若手社員の海外経験は、辞めやすい人間をつくるのではないか

 この問いに対しては、イエスもノーもあったが、いずれの主張にも共通する点があったように思われた。

■海外経験は人を成長させる

 まずは、海外経験を積むことの重要性である。
 ある方は言う。

若手社員が海外経験をしたがらないという意見書も目にする。しかし、若手社員には、こぞって海外体験をしてほしい。海外の体験は必ず一皮むけた大きな人間に脱皮、成長する。

 また、こういうご意見もあった。

逆説的には、辞めにくい社員を作ろうとして海外経験はじめ、社外経験をさせないようにすると、企業内の発想や常識にとらわれ、発展に限界があり、結果的にその企業は伸びないのではないか。

 まさに「かわいい子には旅をさせろ」で、若手の海外経験は本人にとって貴重な経験となり、それはひいては会社のためにもなる。
 しかし、視野を広げるその経験自体が、自己を活かす他の機会や、自分をより高く買ってくれる会社との出会いにつながらないか。それが海外経験の持つ裏の課題である。

■海外経験させるには適材の見極めが重要

 「海外だろうと国内だろうと、辞める人は辞める」というご意見もあった。また、このようなご見識もあった。

海外経験は、適材の見極めが重要だと思います。自分が何のために海外へ出て、苦労しなければならないのか、しっかり覚悟を持てる人を海外へ出すべきと考えます。

 たしかに、覚悟と使命感をもって海外に出ていく人は、会社へのエンゲージメント(絆)が強い。だからそういう人は、表面的な要因で会社を辞めたりはしないと思われる。

■大事なのは人の問題でなく、辞めない会社にしていくこと

 また多かったのは、「実力のある人が辞めない会社にすることが大事」というご意見である。

海外に出ると、若くして能力がある人材は高い職位=高い処遇を受けている現状を目の当たりにすることがよくあります。
そういった場合には、やはり人間ですので、同じような仕事をしていて同じようにキャリアアップをできる中であれば、高い処遇を受ける方に気持ちが傾くのは当然かと思います。
ただ、職位に対する処遇だけで今の若手社員が辞めやすくなるというわけではないと考えます。
なぜなら、彼らの多くは現在会社に入る時点では会社を通じて社会貢献したい、お金がすべてではないと考えているからです。
そのようなやりがいを忘れさせ、辞めやすい人間にするのであれば、それは会社の風土・人事制度が問題なのではないかと考えます。
人事担当者としては、そのような人間を作らないようにやりがいの持てる会社の風土・人事制度を日々検討していかなければならないと考えます。

 同様のご意見はほかにもある。

「人はパンのみに生きるにあらず」その会社の理念に共感して働く人もいます。
そのために企業の哲学、経営理念が必要で、魅力的な会社を創ることです。

 2001年に筆者が書いた『A&R優秀人材の囲い込み戦略』(東洋経済新報社)では、「アトラクションはお金、リテンションは心」と述べた。
 人を雇う(アトラクションする)ときは、お金で引っ張ってくることもできる。しかし辞めないように(リテンション)するためには、心に訴えかけることが必要だ。
 まさに風土、哲学、理念の面で、会社の魅力を高めることが極めて重要である。

■総括-グローバル化では組織開発の視点と行動が重要になる

 しかし筆者に言わせれば、この点こそが、これからの多くの日本企業の弱点となりかねない。
 日本企業は今まで、終身雇用という心地よい風土の中で、長期的に「同じ釜の飯を食い」「先輩の背中を見続ける」ことで、何もしなくても理念や哲学が共有できる社内システムを持っていた。このシステムは、ある意味すごい。維持のために何ら特別な努力もコストもいらないからだ。
 しかし問題は、若手を1人で海外に出したとき、このシステムでは理念も哲学も伝わらないという点だ。風土を理解し共感することも不可能ということだ。つまり、自分の会社に何ら共感を持たない若手が、海外ですばらしいチャンスに遭遇したら、どうなってしまうか分からないということである。
 グローバル化では先輩格の欧米企業は、だから風土、哲学、理念に社員を心酔させるため、巨額の投資をあえてしている。理念の浸透活動や、良い風土をつくる組織開発などに人とお金をつぎこんでいる。
 振り返って日本ではどうか。良い人材をつくるための人材開発にはようやく投資しても、良い組織をつくるための組織開発には手付かずのところも散見される。優秀な個人を採用し育成することは当然重要だが、そういう連中を集めただけでは良い風土もチームワークも生まれない。だから人材開発と組織開発は違うのだが、今の日本では両者の違いすら知る人は少ない。
 私たちの会社は、文化風土の形成維持や哲学理念の明示共有のために、意識的に具体的なアクションをしているだろうか?
 もしそれがなければ、海外に出る若手にとっての「わが社」は、私たちの目に映るそれとは、全然違って見えるだろう。

 

問3 経営者は、日本人より外国人のほうが適任か

 この問題は現実的には候補者の実力次第ということになるが、あえて聞いてみたところ、思いがけず外国人トップを推すご意見がよく見られた。

■賛成

 例えば、ある方はいう。

外国人のトップは、日本人と比べてグローバルだし、思考やアプローチの仕方が違う。違うやり方は、日本人にとっては刺激的で、驚天動地だ。組織は必ず刺激を受ける。それに共鳴する者もいるし、フラストレーションを起こす者もいる。
そうして、組織は活性化する。企業はそうして生き残るのである。

 また、ある方は、こうも言う。

経営者(会社トップ)は一般社員から見ると雲の上の存在であり、会社判断を受け入れる際には外国人経営者の方が、違った考え方を持っているのだと思うことができ、受け入れやすくなると思うから。

 単に能力があるという以上に、従来と異なる新しい考え方を持っているという点を評価している。これは、今の日本企業がいかに変革を必要としているかを反映しているようにも思われる。

■経営センスに国籍は関係ない

 また、王道のご意見としては、次のようなものがあった。

ビジョンと戦略的目標を示し、自らの言葉で人を共鳴させ、さらに、自ら有言実行の先頭に立つ人。
国籍に関係なく、こういう人のために頑張ろうという勇気が湧いてきます。

 英語や経営知識はともかく、やはり最も大切なのは、そこだろう。

■総括-経営者の本質が問われている

 ビジョンを持ち、それを分かりやすい言葉で語れるか。保身に走らず、高潔な精神で献身的に行動できるか。国籍を問わず、トップには今、それが問われている。


【次回テーマ: 雇用】
 さて、次回は「雇用」について、読者の皆さまのご見識を問いたい。

問1 終身雇用か、新陳代謝か
 終身雇用は年功序列や企業内組合とともに、「日本的経営」の三種の神器といわれ、日本企業の強さの秘密といわれてきた。だが、終身雇用が最大のメリットを発揮するのは組織の拡大期である。ポストの数が増え続け、新入社員の数も年々増えていれば、終身雇用は年功序列とあいまって組織の継続的なノウハウ蓄積と技能継承とを可能にする術として、組織の利益に貢献する。
 しかし、組織の拡大が止まり、ポスト数も増えず新入社員の数も絞られてしまうと、終身雇用は社員の平均年齢の上昇をもたらす。すると、人件費生産性の低下や、組織活力の低下といった負の面が顔を出す。
 一方で、次々と人が入れ替わる会社もある。そういう会社は比較的に社員の年齢は若く、だから人件費生産性は高く組織のイキもいいことが多い。ただ、人が次々と辞めるということは、働く人にとって楽しからざる何かがあるのかもしれない。
 欧米では、離職率の低さが「良い会社」の一つの指標である。一方で日本では、「キープ・ヤング」(若い会社であり続けること)のために、もっと新陳代謝があってもよいのではないかという声も聞く。
 終身雇用がよいのか、新陳代謝がよいのか。皆さんは、どう思われるだろう?

問2 正社員か、非正社員か
 「将来の 子供の夢は 正社員」とサラリーマン川柳もあるように、先の見えない時代には、安定性のある正社員になりたがる人が多い。しかし、会社としては、労働力の柔軟性を確保するために契約社員などの非正規社員を用いたがる向きもある。
 一方で、行き過ぎた非正規社員化が、企業のノウハウ蓄積や技能伝承を阻み、そのため近年では「非正社員の正社員化」を進めている会社もある。
 非正規社員の問題は、それだけではない。正社員として一生この会社にいると思えば、多少の自己犠牲を払ってでも会社のために尽くそうというコミットメントが期待できるが、非正規社員にそれを期待するのは一般的には難しい。
 ただ、出産や介護との両立を図る仕組みとして、また時には外国人労働者の現実的処遇として、雇用形態としての非正規社員は必要であるようにも思われる。
 そういう意味では、非正規社員は“多様性の時代”に適した雇用形態のようにも思われるが、しかし一方で、“不安定な時代”のあだ花のようにも思われる。
 これからの企業は、非正規社員を増やすべきなのだろうか。それとも、正社員を増やすべきなのだろうか?

 
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 (問1) 終身雇用か、新陳代謝か 
 (問2) 正社員か、非正社員か 
※ご意見募集は6月25日(月)をもって締め切りとさせていただきました。
  皆様のご協力誠に有り難うございました。
■お寄せいただいたご意見は、本連載次回の内容・構成に反映させていただくほか、「読者か
 らのご意見」として本編で引用・紹介させていただく場合がございます(ご意見募集は匿名
 で行い、ご意見を引用・紹介させていただく場合も、社名・個人名等は一切表記いたしませ
 ん)。

【著者紹介】
舞田竜宣 まいた たつのぶ
HRビジネスパートナー株式会社 代表取締役/多摩大学大学院客員教授
東京大学経済学部卒業。組織行動変革の専門コンサルタント会社を経て、マーサーおよびヒューイット・アソシエイツ(現・エーオンヒューイットジャパン)でグローバルな人事・組織コンサルティングを行う。ヒューイット・アソシエイツ日本法人社長などを経て現職。著書に『行動分析学で社員のやる気を引き出す技術』(日本経済新聞出版社)『社員が惚れる会社のつくり方』(日本実業出版社)、『行動分析学マネジメント』(日本経済新聞出版社)、『10年後の人事』(日本経団連出版)、『18歳から読む就「勝」本』(C&R研究所、共著)など、監修書籍として『人事労務用語辞典[第7版]』(日本経団連出版)がある。

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