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コーピングで始める「自分改造計画」【田中ウルヴェ京】 [2012.06.12]

頑張り屋の部下だが、その仕事スタイルは「質より量」。結局、全てが中途半端に…


コーピングで始める「自分改造計画」~第9回:ケーススタディ(その7)

田中ウルヴェ京(メンタルトレーナー/コーピングコーチ)
株式会社MJコンテス 代表取締役社長
 前向きかつエネルギッシュ。体力と精神力の限界まで仕事を抱え、いつも必死な部下Aさん。しかしせっかく取ってきた仕事も一人で抱えるがゆえ、結果は毎度中途半端に。仕事の成果として特筆すべきものもなく、彼が回し切れなかったものは同僚や後輩が結果的にフォローする羽目に。周囲もそんなAさんに呆(あき)れ始めています。いくら指導しても自らの仕事のスタイルを変えようとはしない彼に、上司のあなただったら、どうアプローチしますか?

9回目:ケーススタディ(7)

 部下のAさんは、なんでも前向きでエネルギッシュに取り組むのはいいのですが、基本的に仕事は「質より量」を重視しており、いつも体力と精神力のギリギリまで膨大な量の仕事を抱え、それをこなそうとしています。結果的に、仕事の成果として特筆すべきものはなく、逆に中途半端になった仕事を同僚や後輩がフォローして、何とかなっている始末です。何度注意しても、指導してもどんどん仕事を取ってきてはため込んでばかりです。もっと体力よりも頭を使ってほしいのですが、Aさんには理解されず(理解できず)、ほとほと困っています(呆れています)。

■アサーション型のコミュニケーションを取るために

 この例のAさんはとても「頑張り屋さん」ですね。しかし結果的にその「頑張り」が独りよがりでしかなく、周囲を巻き込んでマイナスに作用してしまうという、もったいない状態です。こういうケースの場合、上司のあなたにぜひ参考にしていただきたいことがあります。第7回「『べき思考』の同僚と上手にコミュニケーションを取る秘訣(ひけつ)」でご紹介したアサーションです。

[編注]アサーション:自分の意思や気持ちを主張し、相手に押し付けるというスタイルを取らず、相手の心情や立場に配慮し、相手にとっても受け入れやすい表現によって、相手を確実に動かしていこうというコミュニケーションのスタイルのこと。

 アサーションの特徴を少しおさらいしましょう。アサーション型のコミュニケーションでは、しっかりと伝えるべきことは主張しつつも、相手との間に感情的な衝突を生み出さず、相手を受け入れながら巧みに自分の気持ちを相手に伝えることが特徴です。その技術の一つとして「DESC法」と呼ばれる、とても有益なコミュニケーション技術があります。

■「DESC法」の四つのステップ

 DESC法は英語のDescribeExpressSuggestConsequenceの頭文字を取って作られた造語です。この四つのステップをうまく踏むことで、相手に問題点を指摘し、改善を促すことができる優れた方法といえます。各ステップを簡単に解説すると、下記のようになります。

(1)Describe(描写する、事実を伝える)
 まず、問題の原因となっている状況や、相手の行動を、客観的に描写します。主観を交えずにあっさり、さらりと伝えることが大事です。

(2)Express(表現する、自分の意見や気持ちを持ち出す)
 伝えた状況に対しての、自分自身の主観的な気持ちを表現、説明します。「私」という主語を明確に示すことで、相手が自分の話を真剣に聞いてくれる状況に持っていくことが望まれます。

(3)Suggest(特定の提案をする、お願いをする)
 状況を変えるための解決策、妥協案を提案します。具体的、現実的な提案が望ましいでしょう。また、表現としては「~していただけませんか?」など、丁寧であることが求められます。

(4)Consequence(結果を示唆する)
 要望を受け入れてもらえた場合、あるいは受け入れてもらえなかった場合、それがどのような結果をもたらすかを相手に示唆します。

■指導の結果、本人の「やる気」やよい部分までつぶしてしまわないために

 Aさんの場合、良くも悪くも「やる気」はあるのです。いつも必死に努力していることは、むしろ多くの場合は素晴らしいことであるはずです。しかしこのケースではその努力が結果、周囲を巻き込み独りよがりなものになっていることが問題なわけです。ですから、彼のやる気や良い部分をつぶしてしまうような指導の仕方よりも、DESC法を上手に応用し、彼にも納得しやすい理解を求めることが賢い方法といえるでしょう。
 DESCに当てはめ、この問題を解決すると次のような流れが想定できるでしょう。

D:事実を伝える
 「仕事をたくさん取ってくるAさんは、やる気があり、努力家で素晴らしいです。しかし、せっかく取ってきてくれた仕事が想像以上に作業量があったりして、意に反して中途半端になってしまうことも多いですね」

E:自分の気持ちを示す
 「私は上司として、Aさんの努力に正直、ありがたいな、と思っていると同時に、せっかくAさんが努力しているなら、それを何とか結果につなげるには、どういうサポートをしてあげると良いのか悩んでいます。」

S:お願いをする
「せっかくの仕事を確実に成果として残していくために、例えば仕事を取ってくる際に、チームに先にAさんのプランを話し、みんなで仕事を完成させていくように工夫してみてはどうでしょうか?」

C:結果を示唆する
 「そうすれば、チームのみんなも予定が立ち、Aさんのイメージを共有できることで、より確実にAさんのサポートが可能になり、それこそAさんの持ち味ももっと生きてくると思います。みんなで結果を出し続けることができれば、会社としてもとても助かります」

■メンバー一人一人の持ち味を発揮させるコミュニケーション

 いかがでしょうか? 上司と部下の関係では、ついつい上から下へ命令形で指導しがちにもなりますが、相手の良さをつぶさずにチームを引き上げる方法は実はたくさんあるのです。相手が誰であれ、こうした誠実なコミュニケーションは、一人一人の持ち味を発揮できる機会となり、建設的で、生産的な結果を生むことにつながります。

profile  田中ウルヴェ京(メンタルトレーナー/国立鹿屋体育大学客員教授)
 1967年生まれ。聖心女子学院初中高等科を経て、日本大学在学中の1988年にソウル五輪シンクロ・デュエットで銅メダル獲得。1989~1999年に日本代表チームコーチ、アメリカ五輪ヘッドコーチアシスタント、フランス代表チーム招待コーチなどを歴任。1991年より渡米、米国カリフォルニア州セントメリーズ大学大学院健康・体育・リクリエーション学部修士課程修了。99年からは米国アーゴジー心理専門大学院にて認知行動療法とスポーツカウンセリングを、2000年米国サンディエゴ大学院にてパフォーマンスエンハンスメントとアスレティックリタイヤメントを学ぶ。
 2001年に起業し、心身の健康をテーマに、株式会社MJコンテスを経営。アスリートからビジネスパーソンまで幅広くメンタル指導を行う一方、東京・白金台と大阪にピラティススタジオ「DMJボディバランシング」を持つ。
 企業研修や講演は年に200を数え、最近では報道番組でコメンテーターも務める。夫はフランス人、二児の母。『書くだけで人生が変わる{感謝日記} すぐに幸福を引き寄せる30の方法』(実業之日本社)、『「リーダー力」を鍛える!メンタルトレーニング実践講座』(PHP研究所)など著書、共著、訳著多数。
http://www.mjcomtesse.com


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