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人事担当者のための「福利厚生」の基礎知識 [2012.03.01]

4.健康医療施策

 

一般社団法人 企業福祉・共済総合研究所
主任研究員 秋谷 貴洋

1 健康医療施策の目的

 従業員にとって心身の健康の保持は職業生活を営む基盤であるとともに、従業員の生理的ならびに安全の欲求に影響を及ぼします。
 企業が健康医療施策を行う目的は、法定福利厚生制度が社会保障制度の一端を担っていることから、法律の趣旨を達成することはもちろんのこと、労務管理という視点では、従業員本人の稼得能力や経済面での減退ならびに喪失を防止するとともに、企業の生産活動の維持を図ることといえます。
 法定外福利厚生制度における主な健康医療施策は、社会保障制度が未整備な明治期から任意に取り組まれていましたが、大正11年の健康保険法の制定以降、社会保障制度を補完する施策として次第に形成されました。
 社会保障制度は医療保障と所得保障が柱となっていることから、法定外福利厚生の健康医療施策には、企業内病院や診療所といった厚生施設の設置、法定外健康診査(法定外健診項目の実施、各種ドックならびに婦人健診の実施もしくは費用補助など、以下「法定外健診」)、金銭給付(保険適用外医療費補助、休業時の所得保障、医療費貸付など)、用役の提供(健康教育や健康相談、ホームヘルプサービスなど)などが見られます。
 これらの健康医療施策は、法定福利厚生制度(法律で規定された現物給付や現金給付)を補完、あるいは分担していると言え、[図表1]に示すように、従業員の業務上に関わる事項については、労働安全衛生法(以下「労安法」)や労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」)で、業務外の事項については健康保険法(以下「健保法」)や高齢者の医療の確保に関する法(「高医確保法」)といった法令による保険事業を基盤にして、法定給付の上積み給付や、職場の健康管理スタッフによる従業員の疾病予防事業が行われています。
 したがって、業務上災害や私傷病などの療養に関わる現物給付や現金給付の多くは法定福利厚生制度でカバーすることができますが、従業員の療養による入院や休業が長期化する場合、あるいは、公的保険適用外の負傷疾病が生じた場合の経済的な負担については、健康医療施策がその安定の役割を果たすこととなります。

[図表1] ライフステージで関与する健康に関する主な法律と対象者

2 健康医療施策における予防の視点の重要性

 健康医療施策を展開する上で重要となるのが、事故や災害、あるいは疾病や障害等を事前に予防する視点です。特に、従業員に対する健康教育や健康相談は、労安法ならび健保法にもその努力的な取り組みを規定しています(労安法69条、健保法150条)。
 今日ではメンタルヘルスや腰痛予防に関するセミナーをはじめ、医療保険者による健康教育(生活習慣改善教育や転倒防止セミナーなど)と併せて健康相談が展開されています。また、企業内共済会のライフプランセミナーのプログラムに健康に関する情報提供を組み込んで展開する例や、外部の専門機関と契約して健康相談も展開されています。
 特に近年、早期予防の観点から、若年層に対しても不規則な食生活の改善(三食摂取)や栄養バランスを考えたコンビニ食の組み合わせについての保健師によるアドバイスをはじめ、社員食堂でヘルシーメニューの提供など、従業員の生活様式や関心ごとに合わせたプログラムの構築が見られます。
 このように健康教育や健康相談に限らず、体育活動やレクリエーションを通じての心身の保持増進、あるいは法外健診の実施による疾病予防の活動も展開されています。
 さらに、法定外福利厚生施設の副次的な効果を応用し、社員食堂や寮を通じて、従業員の食生活習慣の改善や職場でのストレスを改善しようとする動きも見られます。
 なお、このような職場の改善には、産業医や職場の健康管理スタッフの支援により、PDCA(計画、実行、評価、改善という流れ)による職場の健康管理体制づくりや、労働安全衛生と健康管理の両スタッフ連携、職域における健康管理推進リーダーなどの人材の育成なども重要となります。しかし、中小企業においては、これらの健康管理スタッフを確保することが現実的に難しいため、地域産業保健センターや健康保険組合などを通じて、事業所の従業員の健康の保持増進を推進するなどが考えられます。
 さらに、健康医療施策は労働者にとって機微な情報も多いことから、個人情報の保護に関する法律(平15.5.30 法律57)をはじめ、健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針(平成16.6.14 厚労告242)、健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針(平16.7.30 厚労告308)などの関連法令や通達を参考にして実施することも必要となります。

3 労使双方にとってメリットをもたらす健康医療施策

 健康医療施策については、[図表2]の「ヘルスケアサポート(従業員の通院・健康増進に対する補助等)」の費用の傾向にみられるように、労働者の給与総額が減少傾向にある中でも増加傾向にあり、従業員に対する健康の保持増進への関心には根強いものがあります。
 また、平成20年4月からスタートした特定健康診査等は、多くの労働者にメタボリックへの関心を高めただけでなく、幅広い世代に日常生活での健康保持への意識をもたらすきっかけとなったといえます。
 また、近年では、某計量器等製造販売企業の社員食堂のレシピが話題となりましたが、その企業における従業員の生活改善効果は、社会的にも大きな話題と関心を与え、就職ランキングにも影響を与えました。これは、同社の施策の取り組みが利害関係者(ステークホルダー)から企業評価を受けた成功事例の一つといえますが、健康医療施策は労使双方にメリットをもたらす可能性があるといえます。

[図表2] 医療・健康費用の推移

執筆者プロフィール
[写真] 秋谷 貴洋秋谷 貴洋 あきや たかひろ

法政大学大学院 社会科学研究科修士課程修了 1989年に(社)産業労働研究所(現・企業福祉・共済総合研究所)入所。企業福祉や健康保険組合の実務に関する調査や情報収集・提供に関する業務に従事し、現在に至る。

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