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企業がEAPを活用するコツ [2011.08.30]

第4回 人事労務担当者や管理職からの相談(1) ~EAPカウンセラーによる付加価値のあるサービスとは?~

亀田 高志 かめだ たかし

株式会社産業医大ソリューションズ 代表取締役社長・医師

EAPサービスは従業員の福利厚生ではなくなった

米国発で国内では1980年代から紹介されるようになったEAPだが、徐々に利用が増えてきた。一部の大手企業や米国系外資系企業の例を除いて、従来は企業の健康保険組合の中で行われているものが多く、被保険者のための健康相談の一種としてメンタルな問題をも受け付けるというイメージが一般的であった。実際に、企業で設置した電話相談も同様の趣旨のものが多かった。そこでは、匿名性を保ちながら、個人的なストレスや不安、悩みを相談できる、従業員のための福利厚生サービスという位置づけが定着していた。そのようなものが、EAPのイメージだと感じる読者も少なくないのではないだろうか?

ところが、2000年前後から、自殺やメンタルヘルス不調を労災認定の対象とするという行政指針(心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針、平11. 9.14 基発544)が出されたり、過重労働による若い労働者の自殺に関して、損害賠償を認める最高裁判決(電通事件 最高裁二小 平12. 3.24判決)が出て、次第にメンタルヘルスへの企業側の問題意識は人材リスクという色彩が強くなってくる。加えて、メンタルヘルス不調によって、休業や長期休職に陥る従業員が増加し、労働損失や職場の生産性への影響が看過できなくなってきた。

そうした状況を受けて、メンタルに対応できる産業医が重宝されたり、メンタル不調対策に長けた人材を探す動きが広がっているのである。

しかし、現代はどの企業でもグローバル化や高度情報化を背景として、リーマンショック以降の経済不況に加えて、東日本大震災の影響を少なからず受けている。当然、効果の明確ではない、電話相談を中止したり、EAP業者側にディスカウントを要求したりするという動きになっている。そもそも匿名の相談だけで職場の不調者が減るわけではないし、ましてや問題も解決しないという当たり前の事実を、企業の側も認識するようになったのではないだろうか。

EAPの現代的な活用法

一方で、人事労務担当者としては、メンタルヘルス不調に過重労働が関係していれば、労災申請のリスクを感じたり、休業や長期休職に伴う労働損失や職場の生産性への影響を懸念しているのではないだろうか。そんな状況にあるならば、最も有効な解決法は、管理職や人事労務担当者からの相談に乗ってくれる、専門家を確保することである。

メンタルに強い産業医とは、不調者の対応やその問題解決に腕を振るってくれる医師だ。それは人事労務担当者から見れば、任せてしまうという発想である。しかし、企業の人材のリスク、労働損失、あるいは職場の生産性の問題を医師である産業医が解決してくれるわけではない。実際には、人事労務担当者や直属の上司たちが手を掛けなくては、問題は解消しない。

一方で、例えば、目の前にいる問題を抱えた従業員へのアプローチ、不調者の状態に比してふさわしくない診断書の取り扱いの判断、職場復帰したのに欠勤を繰り返す場合の対応など、人事労務担当者や直属の上司たちが自らなんでも行うのは不安なはずだ。そこを補完してくれるのが今回紹介する人事労務担当者や管理職からの相談を受け付けるというEAPによるサービスなのである。

アメリカに本部のある国際EAP協会では、EAP専門家のための基準を策定し、公表している。その中には組織の問題への対処と個人の問題への対処の二つが目的として掲げられている。そして、中核的なサービス技術の一つとして、この人事労務担当者や管理職からの相談が明示されている。

国内でも産業医や職場で働く保健師や看護師のような、いわゆる産業看護職の中には事業場の中で同じようなサービスを意識せずに行っている場合がある。例えば、気心の知れた人事労務担当者が産業医や看護職の部屋に来て、職場で欠勤の目立つ従業員への介入を相談するようなケースである。しかし、それはまれなことであるが、もしも外注できるなら、読者である人事労務担当者にとても有益ではないだろうか。

人事労務担当者や管理職からの相談の実際

では、実際にEAPカウンセラーが、この機能を果たす様子はどのようなものだろうか?次に列挙してみよう。

<EAPカウンセラーが来所している場合>

  •  EAPカウンセラーの相談相手に人事労務担当者や管理職が含まれていて、従業員からの相談の合間に時間を割いてもらえる。
  •  相談の対象は、例えば、以下のような問題(職場のメンタルヘルスの分野では事例性(じれいせい)と呼ぶが)の目立つ従業員に関するもの
  •  遅刻や欠勤等の勤怠の問題
  •  業務の滞りのような個人の生産性の低下
  •  個人の身だしなみやコミュニケーション上の支障
  •  特定の従業員の行動が引き起こす職場全体の生産性の低下
  •  相談や助言の内容は以下のような事項である。
  •  本人への問題点に関する分析
  •  本人の起こす問題に対する指摘の仕方
  •  EAPカウンセラーへの面接に連れてくる方法
  •  本人の起こす問題を解消していく道筋
  •  本人の対応が拒否的だった場合の代替案

ポイントは職場での問題、つまり事例性の解消を目的としている点である。もちろん、メンタルヘルス不調を治療するように、精神科の専門医に紹介したり、産業医に手伝ってもらったりすることも対応の助言には含まれている。しかし、人事労務担当者にせよ、管理職にせよ、悩ましいのは病気そのものではなくて、個人の職場での問題が解消しないことや、そのために同僚たちや事業そのものに影響が出てくるところなのである。

したがって、その点を解消することに焦点を当てれば、人事労務担当者や管理職から相談を受ける形のEAPサービスは有益で、無駄のないものとなり得る。

もしも、間違って病気を治そうなどと考えると、医療情報に立ち入る必要が出てくるように感じられるかもしれない。けれども、事例性の解消のためなら、人事や上司としての対処法に限られるのだから、知るべき情報、知らなくてよい情報はクリアになる。

上記ではEAPカウンセラーが来所した場合を示したが、電話相談を窓口にしても、同様のアドバイスを受けることは可能である。

来所形式でも電話形式でも、本人に直接面接を行い、相談対応や短期のカウンセリング、あるいは外部医療機関の紹介を行う場合だけでなく、人事労務担当者や直属の上司への助言だけになることもあるだろう。

次回は、この人事労務担当者や直属の上司からの相談対応の実際を紹介し、EAPと契約することについて説明を加える。

写真:亀田 高志さん

Profile

亀田 高志 かめだ たかし

株式会社産業医大ソリューションズ 代表取締役社長・医師
1991年産業医科大学医学部卒業後、NKK(現JFEスチール)や日本アイ・ビー・エム(株)で計11年間、専属産業医の実務に従事。2005年に産業医科大学産業医実務研修センター講師となり、2006年10月に産業医科大学による(株)産業医大ソリューションズ設立に伴い現職。
職場の健康管理対策、特にメンタルヘルス対策を専門とし、現在は、企業に対するコンサルティングサービスと研修講師を手がけている。メンタルヘルス相談機関であるEAP(従業員支援プログラム)の活用やゆとり世代等の若手問題の防止やその育成にも詳しい。


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