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マネジメントの視点からみた ワーク・ライフ・バランス時代の長時間労働削減とは [2011.09.20]

第10回 残業削減に向けた傾向と対策(6)-管理職のなにげない行動が部下の残業を引き起こす2-

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員

前回は、なぜ、残業の削減に管理職のマネジメントが重要なのかを、残業の発生メカニズムを紐解く中で説明した。併せて、弊社が実施したアンケート調査結果を紹介しながら、管理職の日々のなにげない行動の積み重ねが、部下の残業を引き起こしていることも明らかにした。

管理職の日々の意識や行動に潜む残業発生の要因は、大きく以下の七つのパターンに分けられる。さらに、この七つのパターンは、管理職が仕事を、(1)部下の誰にやらせるかといった仕事の配分の問題と、(2)その実行を促すために何をどのようにやらせるかといった具体的な指示の出し方の問題、さらには、(3)管理職自身の日ごろの行動にかかわる問題の三つに分類することができる。今回は、そのうち、(1)仕事の配分の問題に焦点を当てて、その問題の背景と改善策を見ていこう。

図:1.管理職が陥りやすい七つのパターン 1.頼みやすい部下に仕事を頼む 2.ローパフォーマーには仕事を与えない 3.残業前提の仕事の指示 4.意味のない会議の開催 5.必要以上の資料の作成 6.自分がやったほうが早いのでつい自分でやってしまう 7.管理職自身の長時間残業 注)今回は1と2を取り上げる。

1.仕事の配分の基本は“適材適所”と“育成”

管理職が頼みやすい部下にばかり仕事を頼んでいたら、頼まれた人の残業時間が長くなるのは当然であろう。逆に、必要最低限の人員しか用意されていない、欠員補充さえままならない中で、初めからローパフォーマー(low performer)には仕事を与えなければ、ほかのメンバーにそのしわ寄せが行くことになり、ローパフォーマーは毎日早く帰るけれども、それ以外のメンバーは恒常的な長時間残業に陥ってしまうことになる。

前回も述べたように、仕事というものは、その目的を達成するために管理職が部下の中の誰にやらせるかを決定し、その実行を指示するところから始まる。だからこそ、管理職が初めにやらなければならないのは、仕事を誰に割り振るのかを決定することなのである。その際、管理職自身が戒めなければならないのは、仕事の配分の基本は、“適材適所”と“育成”であり、好き嫌いや頼みやすさで仕事を割り振るものではないということだ。

仕事の割り振りは、「難しい仕事だから経験のあるAさんに任せよう」とか「この仕事は、まだまだBさんには荷が重いかもしれないけれど、無事やり遂げたら大きく伸びるだろう」といった、しっかりとした理由付けや明確な意図に基づいて行わなければならない。

ただし、多くの場合、その仕事にふさわしい人と、仕事に余裕のある人が一致しない。だからこそ、仕事の平準化ができずに、残業の多い人とそうでない人が出てきてしまうのである。

2.限られたメンバーの中で最適な業務分担を決定するのが管理職の責務

では、どうすればよいのだろうか。これに関しては残念ながら特効薬といえるような解決策は存在しない。ただし、できること、やらなければならないことはある。それは、“適材適所”であるAさんに仕事を割り振る前に、Aさんが抱えている仕事を洗い出し、その中にAさん以外でもできる仕事があれば、あらかじめそういう人に仕事を振り分け直しておくことである。若手のBさんだけでは不安であれば、ベテラン社員を補助役として就け、支援するようにしておくわけだ。

要は、仕事を振り分ける直接の対象者だけではなく、管理者たるものチーム全員の能力と仕事の入り具合を把握し、常に進捗を管理1し、必要に応じて他のメンバーを巻き込むなど、そのつど最適な業務分担を決定するのである。これこそがマネジメントであり、こうしたマネジメントをできるのが真の管理職であることを日ごろから認識しておかなければならないし、会社としても認識させておかなければならない。

1進捗管理の重要性については、第2回連載「重要なのは、なぜ残業が発生するのか、その原因を上司と部下でともに考えること」を参照のこと。

3.ローパフォーマー対策をどうするのか

なお、こうした最適な業務分担を決定していくに当たり、昨今、特に重要になっているのが、ローパフォーマー対策である。“up or out”2の雇用慣行のない日本企業の場合、たとえローパフォーマーであっても「その人にできる仕事」を切り分けて割り振っていくことで戦力化していかないと、組織全体の力、いわゆる組織力は向上しない。そもそも成果が期待できないからといってローパフォーマーに仕事を割り振らないと、仕事を覚える機会、チャレンジする機会が与えられずに、いつまでたっても実力がつかず、さらに落ちこぼれていってしまうではないか。

ローパフォーマーと一口に言っても、能力的に厳しい人もいるのだろうし、適性とキャリア開発がうまくいかなかった場合もあるだろう。担当業務や上司、顧客に恵まれなかったせいかもしれないし、家庭の事情等私的な理由あるいはメンタルヘルス面で力が出せない人もいるに違いない。あるいは、会社の戦略や組織運営に納得できないのかもしれない。ローパフォーマーに対しては、こうした個々の事情をかんがみた上で、異動させて新しい職場で再チャレンジの機会を与えたり、一人ひとり具体的な改善目標を設定し、能力と意識の両面からの底上げを図ったりすることが求められる3

今回は、仕事の割り振りという、マネジメントの根幹にかかわる部分について、残業の発生要因という視点から述べた。なかなか解決が難しい課題ではあるが、難しいからといって放置したままでは前には進まない。こういうときは基本に戻って、まずは何ができていて、何ができていないのか検証した上で、できるところから、例えば、チームメンバーの能力の洗い出しと仕事の入り具合の把握、また、進捗管理の徹底から手をつけていくことが肝要である。

2達成目標に対して成果を上げたり、目標をクリアすれば、”up”=昇格、昇給すること。逆に、達成目標に対して成果が出せなかったり、目標をクリアできなければ”out”=退職、会社を辞めざるを得ないこと。コンサルティングファームでよく使われる言葉である。

3それでも目標を達成できない、改善項目に取り掛かろうとしないというのであれば、それはもう一管理職、一職場の問題ではない。人事部としての、ひいては会社としての対応が必要となる。

次回は、管理職の日ごろのなにげない指示の仕方が残業を引き起こすこと、また管理職自身の行動に潜む残業の発生要因について見ていきたい。

※次回は2011年10月3日に掲載します。

写真:広田 薫さん

Profile

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員
1962年神奈川県横須賀市生まれ。1985年中央大学法学部卒業。2003年法政大学大学院政策科学専攻修士課程修了(政策科学修士)。
厚生労働省などから労働時間管理に関するプロジェクトを20年以上にわたって多数受託・研究。民間企業に対する残業削減、ワーク・ライフ・バランス推進といったテーマの研修・コンサルティング・ソリューション提案などにも豊富な実績を持つ。
主な著書:『経営環境の変化に応じた労働時間管理の進め方(厚生労働省「労働時間制度改善セミナー」テキスト)』(全国労働基準関係団体連合会)、『義務化!65歳までの雇用延長制度導入と実務』(2004年7月発行:日本法令)。なお、本テーマでは『労政時報』第3735号(08.10.10)に『マネジメントの視点から見た残業削減の進め方-生産性向上とワーク・ライフ・バランス実現に向けた長時間労働削減の視点と対応策』を執筆。


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