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日本人事 ~プロが語る 人事魂~
アサヒビール 執行役員人事部長 丸山高見さん
[2011.07.11]

【日本人事】「目標とは、判断のモノサシ。モノサシが明確になれば『迷い』がなくなる」 アサヒビール株式会社 丸山 高見さん(4/4)


日本人事 ~人事のプロから働く人たちへ
アサヒビール 株式会社 執行役員人事部長 丸山 高見さん(4・完)

取材・文:溝上憲文(ジャーナリスト)
撮影:トリニティ

企業において、一人ひとりの社員の力を引き出す役割を担い、企業競争力のカギを握るのが人事部です。 人事の“魂”を次世代につなぐ「日本人事─NIPPON JINJI」では、経験豊富な人事パーソンに、仕事を通じて味わった「つらさ」「喜び」「やりがい」など、 人事として働くことの原点・本質を語ってもらいました。
朝専用の缶コーヒー「ワンダモーニングショット」の全社運動で大きな手応えを得た、アサヒビール 株式会社 執行役員人事部長 丸山 高見さん最終回となる今回は、会社の復活が生んださまざまな波及効果について語っていただきました。

連帯感と一体感が強固になった

同社の復活は、従業員の自信回復とモチベーション向上を促しただけではない。連帯感と一体感を強固にした。関連する一つのエピソードがある。同社は経営不振に陥った際にも、1人もクビを切ることはしなかったが、約100人を関連企業に出向させた。そして、業績回復後、その多くを復帰させたのである。

「受入先を探し、各社にお願いして回りました。出向に際しては、『武者修行のつもりでがんばれ』と言って、送り出しました。業績が回復し、戻ってくると、以前より一層活躍するようになりました。出向が、彼らのよい経験になったのだと思っています」

丸山氏は、2005年1月にアサヒビールの人事部長として復職する。しかし、飲料での濃密な3年間は彼にとっても思いが強かったのだろう。内示を受けたときはショックだったそうである。

「やっと組織の勢いがついたところですし、まだまだやりたいことがありました。そのときは周囲に励まされても、内心は反論したかったのですが…」と言って、丸山氏は笑う。

丸山高見さん(アサヒビール 株式会社 執行役員人事部長)

目標を明確に示し、全員がベクトルを合わせること

経営不振に陥り、不信感が漂う職場のなかで、従業員一人ひとりが自信に目覚め、その力を結集し、組織の活力を取り戻すにはどうすればいいのか。改めて、丸山氏に尋ねた。最大のポイントは、「目指すべき目標を明確にすることだ」と言う。

「目標を明確に示し、全員がベクトルを合わせることが大事です。それは、判断のモノサシだからです。モノサシが明確になれば、『迷い』がなくなります。無駄が少なくなり、生産性が向上します。

それには、よき指導者がいることが必要です。指導者が目標を示し、その浸透を図ることでモノサシが本物になります。そして、指導者は、職場の信頼関係を作り出すのです。信頼関係が築かれると、どういうことが起きるかと言えば、職場内に情報が飛び交うようになります。特に、悪い情報が円滑に飛び交うようになります。これまでは悪い情報が流れないために、ロスを出していたのです。『なぜ、もっと早く言ってくれなかったのか』ということが、いっぱいあったはずです。よい情報は後回しでいいのです。悪い情報が瞬時に流れるような職場にすることが重要です」

悪い情報を全員が共有することが、改善への布石となる。次に大事なのは、「目標を達成するためにどんな方法が有効なのか。どんどん提案が出てくる状況を作り出すことだ」と言う。丸山氏はこれを「提案のるつぼ」と呼ぶ。

職場に「提案のるつぼ」を作り出すことができれば、非常に強い組織になると指摘する。そして、アイデアがどんどん出てくるようにするには、「ビールや飲料でやったブレーンストーミングを徹底してやるのが有効です」とアドバイスする。まさに、実践から生まれた貴重な言葉である。

人事パーソンとしての丸山氏の半生は、これまで述べてきたように「人」を対象に”なんでも屋”に徹してきたと言ってもいいだろう。その丸山氏が、若い人事パーソンのキャリア形成についてこう提言する。

「特に今のように変化の激しい時代では、ずっと本体にいるよりは、違う環境で仕事をする期間を持ったほうがいい。違う職場それぞれで一所懸命に働き、専門性や人脈を作ったほうがいいと思います。私は労働組合やアサヒ飲料に行きましたが、異文化、異環境での武者修行の経験をしたほうがいい。何がいいかと言えば、視野がものすごく広がるからです」

戦略的、合理的思考法を身に付けること。
「現場を知ること」の大切さ

今日、多くの企業がグローバル市場に打って出るなど、経営環境は大きく変わってきている。5~10年先がどうなるのか分からない先行き不透明な状況下で、人事パーソンの果たすべき役割も大きく変わってくるだろう。今後、どういう姿勢で臨んでいけばいいのか。丸山氏は、戦略論や合理性の感覚を身に付けてほしいと指摘する。

「従業員を守る、大事にするんだということだけではなく、会社の戦略と従業員を守ることをどのようにマッチングさせるのかという戦略的、合理的思考法を身に付けることが重要だと思います。ビールのおいしさを、『コクがあって、キレがある』と表現しますが、『コク』と『キレ』は正反対のように感じても、両立するのです。グローバル戦略にしても、今の仲間を大事にする風土を壊してまで展開することはあり得ません。いろいろな改革をするにしても、このすばらしい人間集団、商品を愛し、全社一丸となって戦うパワーを持つ文化・風土を守るという前提の改革でなければなりません。

大事なものを守るという前提で、経営戦略と人事戦略を一体化することが重要です。今、MBA教育など若い人は一所懸命に勉強していますが、人事部員なら、なおさら経営論やアカウンティングを勉強し、経営戦略を踏まえたうえで、人事戦略をどうするのかという発想ができなければ、これからの人事は機能しないと思います」

従業員を守る、大事なものを守る――。この人事にとっての最大の企業価値を守り抜くには、どうするか。丸山氏は、「現場を知ること」に尽きると指摘する。

「机上で、どうの、こうのと考えていてもダメなのです。現場に出向いて、何に困っているのか、問題は何かを探ることが大切であり、回答は現場にあるのです。そこから出てきた命題を、経営戦略レベルでどのようにマッチングさせるのか、そして、人事機能は何ができるのかという発想でやる。そういう発想でやれば、仕事にも広がりが出て、おもしろくなると思います」

この言葉には、人事パーソンがなすべき要諦が言い尽くされている。企業の成長の根幹は、現場の「人」にあり、問題は常に現場で発生するが、解決の糸口も現場に隠されている。問題の発見と解決策を経営戦略レベルで検証し、実現に向けて行動することが求められている。

Profile
丸山 高見(まるやま たかみ)アサヒビール 株式会社 執行役員人事部長
1977年4月アサヒビール株式会社入社。営業(九州)、労働組合専従、営業課長(横浜)、3カ月研修(ビジネススクール)を経て、92年12月人事部福祉課長。98年9月首都圏本部総務部部長。2002年4月アサヒ飲料株式会社出向(企画部長)を経て、人事総務部長。05年1月アサヒビール株式会社に復職(人事部長)。08年4月執行役員人事部長。現在に至る。


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これは人事の指南書ではなく、企業人事の第一線で活躍する人事パーソンからの、等身大のメッセージです。
人事担当者一人ひとりに元気と勇気を届ける魂の伝承。それが「NIPPON JINJI」です。

■登場する人事パーソン(会社名50音順)
[アサヒビール株式会社 執行役員人事部長]丸山高見氏、[株式会社資生堂 人事部部長]高野幸洋氏、[東洋エンジニアリング株式会社 元人事部長]遠藤勝己氏、[トヨタ自動車株式会社 常務役員]吉貴寛良氏、[株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 取締役]桐山大介氏、[株式会社良品計画 代表取締役会長]松井忠三氏 ほか


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