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解剖!“外資”に学ぶ人材マネジメント
File:4 イケア
[2011.03.04]

解剖!“外資”に学ぶ人材マネジメント ~今さら聞けない成果主義の本当のトコロ【イケア編②】


File:4 イケア(2/2)
和田東子(わだ とうこ HRDジャーナリスト)

何を聞いても「対話を通じて」という枕詞が付くイケア。しかし、そのような対話を機能させることは、生やさしいことではないような気がします。その点はどのように考え、実践しているのでしょうか? 「最もイケア的な部分」に探ってみました。

<企業データ>
創業
:1943年(スウェーデン)
総売上高:約2兆4000億円
従業員数:12万3000人(39カ国)
事業内容:家具等の製造・小売り

■たった2項目の超シンプル評価

――目標設定はわかりましたが、評価はどのように行うのでしょうか?

下風 「業務に関する評価」と「コミュニケーションに関する評価」、この2項目だけです。業務評価はジョブディスクリプションと期の目標です。これをそれぞれ5段階で評価し、50%/50%の割合で総合点を付けます。

コミュニケーションが評価の50%を占めることは、カンパニーバリュー(企業の価値観)として一番大切にしているところです。イケアではいかに高い成果を出そうと、周囲との協調を欠いていたら、それを「ハイパフォーム」とはいいません。イケアは個人主義の会社ではないからです。

ヒューマンリソース・マネジャー 下風亜子さん

――たった2項目なんですか? 具体的にどのように評価を行うのでしょうか?

下風 ワークブック形式の考課表を使って、まず自分で振り返りを行います。そして現在の仕事の状態を「うまくいっている」「停滞している」「混乱している」「インスピレーションによってブレイクスルーしている」の4つの状態のうち、どれに自分が当てはまるのか考えるのです。このフレームはイケア独自のものなんです。

内容は基本的な情報の記入、ゴールレターに書いた業務とゴールに関する判定条件の記入、そして自分の状態の振り返りなどです。後はこの期の最も優れた達成や、逆に一番ストレスになったことなどを書く形になっています。

■考課表ではなく、「ワークブック」である意味とは?

下風 マネジャーも同じフレームで考えていきますので、双方の結果をつき合わせてみると、何がどのようにズレているのかが明確です。評価がズレるのは、目標設定時に何を求めているのかをきちんと共有できていなかったからです。スタートが違えば、結果は当然ズレが生じます。ですから、まず事前期待の理解について話し合うのです。

――ズレは対話の不足から生じる、ということですね。フレームはそのズレを認識するツールだと。ではコミュニケーションのほうはどのように評価するのですか?

下風 ワークブックの続きですが、「周囲の人々と信頼関係を築いていますか?」「それを自分の部署内で行っていますか?」「さらに他部門とのコミュニケーションやコラボレーションを実践していますか?」といった設問に答えていきます。

コミュニケーションはマネジャーと社員自身とギャップが生じやすい部分です。自分ではできているつもりなのに、マネジャーから見るとそうではないとか。

その話し合いの結果、「期待を超えた」が3、「期待どおり」が2、「期待を下回った」が1と判定します。間の1.5、2.5もあるので、評価は全部で5段階になります。

――お話を聞く限り、御社のこのワークブックは、評価面談シートというより、そこでの話し合いをかみ合わせるためのツールという側面が強いように感じます。

下風 ワークブックは、自分自身に対する深い振り返りを支援するツールなのです。一般に企業で言うところの「評価」では、考課者-被考課者といった関係性が強いのですが、イケアは一人ひとりが、自分で自分の状態に気づくことを大切にしています。自分で弱点とチャレンジポイントに気づき、改善していこうと考えられればそれに越したことはありません。「マネジャーはあなたをサポートしていきますが、中身を決めるのはあなた自身ですよ」というメッセージが、このワークブックに込められています。

■降格も自己申告?

――ところで、御社では降格もあるのですか?

下風 もちろん、あります。それは普通の会社と同じです。だからこそ、先ほども言いましたが役割に対して求められる期待を事前に明確化し、共有することが大切なのです。その対話がしっかりされていて、そこを本人が理解していれば、基本的に自分が期待に応えられていないことに気づきますよね。その場合、本人から「この仕事に向いていないと思う」「そこまで数字が出せない」といった話が出てきます。マネジャーは「ではあなたは、どの方向に強みがあるのか。どうすれば開花できるか」といった観点から話していきます。何らかのスキルや知識を身に付けてもらったり、社内公募で別のフィールドに行くといった選択肢を考えます。

もちろんこのような言葉が本人から出てくるためには、マネジャーと率直に対話をしていることが前提になります。

――降格も自己申告ということですか?

下風 ただ1回で降格はしません。改善をアドバイスしてチャレンジして、といった過程の中で、どうしても無理だと思った場合に、こういった言葉が出てきます。つまり、それだけマネジャーが部下と信頼関係を築き、業務の経緯を見つづけ、本人もフィードバックを受け入れられる体制を作っていくことが極めて重要なのです。それができていれば、残念ではあるかもしれませんが納得して、「自分は期待に応えられていない。現段階では自分には難しいので、ここ(下のポジション)からやり直します」と言い出します。

■ひとえにマネジャーの力量次第

――それはなかなか、マネジャーの役割は大変なものがありますね。

下風 そうなのです。こういったスタイルをよしとしてきたことで、マネジャーのコーチング力が非常に問われるようになってきました。現在はマネジャーの力量によって、トークのクオリティにバラツキが出ている状態です。

しかし、それは十分分かっていますが、この方法にトライし続けるほうがマネジャー自身の「人を育成する力」が高まっていきますし、社員も対話をしながら成長していけます。そちらのほうが、会社全体としてはメリットが大きいと考えているのです。

ただ時間はすごくかかります。今年からこれまで以上にマネジャーのコミュニケーション教育に力を入れています。イケアはコミュニケーションに強みのある会社です。ですから継続的にその向上を目指していかなければなりません。

――社員のコミュニケーション力を向上し続けることが、「コミュニケーションに強みがある」と言えるためには必要ということですね。それは会社としての大きな決意ですね。

■社内公募で85%以上のポジションが決まる

――ところで御社では、昇進昇格はどのように決めるのですか?

下風 85%以上が社内公募です。あるポジションに人材が必要になったら、全社員に対して公募をかけます。この制度を「オープンイケア」といいます。社員は社内のイントラネットシステムでレジュメを送り、選考を行っていきます。当社では人事を1人で決めてはいけないというルールがあります。ですから一次、二次、三次選考を含めて、人事等も入って決めていきます。

公募で重要なのはフィードバックです。結果的に選ばれなかった候補者全員に、なぜ今回はこの人になり、あなたは何が足りなかったのか、もしまた機会があって、このポジションに応募するならば、どんな点を強化していけばよいのかを丁寧に伝えます。社員の中にはこのフィードバックを受けたいので、立候補するという人もいますね。

――応募したことは上司に伝えるのですか。それとも完全に秘密になっているのですか?

下風 その質問は社内でもよく受けるのですが、この点については、特に決まりはありません。ただ、「コモンセンス(常識)を大切にしてほしい」と言っています。冷静に考えて、一緒に仕事をしているのにまったく何も言わないで応募するというのは、コモンセンスとしておかしいですよね。ましてや、イケアではコミュニケーションと協調を大切にしているのですから。ですから、むしろそちらの啓蒙なんです。

(まとめ)「コミュニケーションに強みがある会社であること」を選ぶ

多くの企業で、上司と部下双方が目標を間違いなく理解して共有するために、目標の指標づくりと数値化が重要だといわれています。そのため目標設定の際に、上司と部下が「何を求められているのか」について、すり合わせを行うのです。

実はイケアも、目指すところは本質的に同じです。ただイケアが提示しているのは、「数値化したとして、それで本当に共有できますか?」という問いではないでしょうか。

確かに、どのような指標を立てたとしても、それだけでは本当の意味で目標を表すことはできません。むしろ重要なのは、指標づくりと数値化の過程で上司と部下が深い話し合うこと、つまり対話です。対話から相互理解と目標の共有が生まれます。指標と数値は、相互理解の結果、表れたものでしかありません。

「ならば、我々は、ストレートに対話に重きを置こう、対話を磨いていこう」

いってみれば、このような道を選んだのがイケアなのではないでしょうか。だからもちろん指標も使うし、それでフォローもしていく。でも、本当に重要なのは、そこで対話をし、対話から相互理解を生み出すそのプロセスにある。それが本当に「目標を共有する」ということとイケアは考えているのです。

このような観点からイケアの取り組みを見直すと、それまで見えなかったものが見えてきます。「対話を通じて」という耳障りのよい言葉から感じる、フワフワしたイメージではなく、業績を上げるためだからこそ必要な、現実的な取り組みとしての対話です。イケアはコストを削減し、高利益体質の組織になるために、対話を強化しています。

下風さんは「ゴールはクリアで非常にアグレッシブです。しかし、その過程でヒューマンを大切にしているのです」とおっしゃっていました。その言葉の意味は、まさにこれです。だからこそ労力をかけ、時間がかかっても対話を行っていく。イケアにとって対話は“投資”なのです。それが「コミュニケーションに強みのある会社」であることを選んだイケアという会社の意志でありバリューだといえます。

この非常にユニークな会社についてお伝えすることは、この誌面では足りませんでした。参考図書として『イケアの挑戦~創業者は語る』(ノルディック出版)を紹介します。イケアのバリューの根幹、倹約と簡素、誠実さと家族を大切にする気持ちなど、イケアのバックボーンがより理解できると思います。

 –イケア編 完–


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