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BOOK REVIEW 【編集部】 [2012.02.03]

BOOK REVIEW(69)「ゲーミフィケーション」は、ビジネスを/社会をどのように変えていくのか?


『ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える』
井上明人 NHK出版
四六判・256ページ 1470円(税込)

ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える
なぜソーシャルゲームはCMで大量に宣伝するほどに莫大な利益を生んでいるのだろうか?“ゲーム”を読み解けば、今のビジネスが見えてくる。これからのキーワードである「ゲーミフィケーション」を知るための一冊。
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■ゲームをビジネスに応用する

「ゲーミフィケーション」という言葉を、このごろよく目にするようになりました。

この言葉の簡単な定義は、「ゲームの要素をゲーム以外のものに使うこと」「ゲームが社会的な活動に役立つ全般」ということになります。とは言っても、この定義だと幅が広すぎて、いまいちとらえどころがありません。

ビジネスの領域におけるゲーミフィケーションの事例を取り上げていく本書では、もう少し限定的な概念として、この言葉を用います。「コンピューター・ゲームのなかで特徴的に培われてきたノウハウを現実の社会活動に応用する行為のこと」。例えば、学生時代に受験勉強を一種のゲームのような感覚で取り組んだり、夏休みのラジオ体操でハンコの数を競ったり……といった「ゲーム的に楽しむことができなくもない」ものは、ここには含みません。

この上記の定義を見て、例えば顧客へのインセンティブ付けのツールとして、自社サイトに商品の購入とリンクしたゲームのコーナーを作ってみた――というような例を思い浮かべる人もいるかもしれません。

もちろん、こうしたものは、ゲーミフィケーションをビジネスに応用した事例であるのですが、本書が紹介するのは、お客様動員のためのケーススタディだけではありません。人の行動を支えるツールとしてゲームの要素を導入する場合の実践的ステップ、カギとなる手法について豊富な事例を基に語られることが、本書の大きな特徴でもあります。

■社内制度として導入されたゲーミフィケーション~東京ディズニーリゾートやフェイスブックの事例

……と、ゲーミフィケーションを実現するステップやカギとなる手法をご紹介する前に、東京ディズニーリゾートにおける事例をご紹介しましょう。ただし、ここでプレイヤーとなるのは、顧客ではなくスタッフ(同社内用語では「キャスト」)です。

キャストの評価制度として、「ファイブスタープログラム」という仕組みがあります。

幹部が現場ですばらしい仕事をしているキャストを見かけた場合、幹部は同じ部門でなくとも、そのキャストに自らの署名を入れて、ファイブスターカードと呼ばれるカードをキャストに渡す(ファイブスターカードが貯まると、キャストはファイブスターパーティーと呼ばれるカードを持つスタッフしか参加できない特別なパーティーに招待される)。(本書101ページ)

また、同社では、入社後“M”から順に“M” “A” “G” “I” “C”の五段階でグレードアップしていく制度など、いわゆる企業における評価や等級制度に、ゲームをプレイする要素を導入し、従業員満足度の向上に努めています。

このほか、フェイスブック社が、社内連絡、進捗管理、評価制度に結び付いたシステムとして導入した「リップル」も紹介されます。

こうした事例に明らかなように、ゲーミフィケーションは、必ずしも社外の顧客に向けて提供されるもの、営業行為の一環として行われるだけのものではありません。社内の人材に向けた育成・能力開発手段として、モチベーションの向上策として、エンゲージメントの醸成策として、あるいは働きに対する評価をフィードバックする仕組みとして……さまざまな部分で応用することが可能です。

そういう観点から見ると、以下にご紹介するような具体的なステップやノウハウは、人事・育成担当者、あるいは現場マネジャーにとってはヒントの山ではないでしょうか。

■ゲームの要素を導入する場合の実践的ステップ、カギとなる手法、ノウハウ

まず、ゲーミフィケーションを実践するために、着想を得る必要があります。このステップでのヒントとして、以下のようなものが挙げられます。

・関係性の強化(ゲーミフィケーションが大きな強みを持つ分野の一つに、顧客との関係性の強化、サービスの継続性を上げることがある)

・フィードバックの可視化(定量的に計測する仕組みがあるかどうかを考え、それを明示的にフィードバックする手段を考える)

さらに、実際にゲームを作り上げる段階では、コンピューター・ゲームにおけるさまざまなノウハウが示されます。

「ゲームのルール」と「ゲームの魅力」の二つを、強制されていると感じさせることなく、ゲームをつくる側が意図した順序でたのしんでもらうための手法。これこそがコンピューター・ゲームが蓄積してきたノウハウだ。(本書161ページ)

こうしたノウハウの代表的なものとして、「アンロック」(最初は“プレイヤーができること”はほぼ一つしかないが、プレイを続けることでできることが徐々に増えていくこと)や「レベルデザイン」(プレイヤーの自発性を損なわずに、ゲームの難易度を高めていくこと)――といった手法が示されます。

■「ゲームを設計すること」の意味を知ること

こうした実践的なノウハウを見て、人事や人材育成の現場で語られる「ウェイの共有」「非金銭的報酬」「スモールステップ」「ストレッチ目標」「リフレクション」「アンラーン(学びほぐし)」といった言葉との共鳴関係や、働く現場、人を育てる現場での応用可能性を感じる担当者は多いのではないでしょうか。

「ゲーミフィケーション」という言葉自体は、ひょっとすると短命な、一時のバズワード(流行語)に過ぎないものかもしれません。しかし、一方でゲームには「人をたのしませ、複雑なものを理解させ、人を行動に駆り立てる」力があることも事実だ、と筆者は言います。

ゲームをプレイするように、定められたルールの中で遊んでいると、いつの間にか能力開発に、生産活動に、「仕事」になっている――と言うと、なんだか一昔前のSF小説みたいで、人によってはそういう仕事の在り方に嫌悪感を覚えるかもしれません。しかし、ゲームを設計することの意味を知っており、ゲーム設計や(プレイヤーの評価に応じた)カスタマイズを施せる人がたくさんいるのであれば?……

働く現場におけるゲーミフィケーションの実践について、さまざまな角度から示唆を提供してくれる一冊です。


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