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解剖!“外資”に学ぶ人材マネジメント
File:1 ジョンソン・エンド・ジョンソン
[2010.09.27]

解剖! “外資”に学ぶ人材マネジメント ~今さら聞けない成果主義の本当のトコロ【ジョンソン・エンド・ジョンソン編②】


File:1 ジョンソン・エンド・ジョンソン(2/3)
和田東子(わだ とうこ)HRDジャーナリスト

目標の達成率で評価が決まる成果主義が“うまく回る”ためには、「目標を低くして達成率を高めたい」という誘惑に個人が打ち勝つ必要があります。しかし、それを各人の意識にだけ任せていては、必ず失敗します。
また、「同じ仕事を同程度まで達成した場合は、役職の高低にかかわらず評価と賃金は同一なのか? それとも異なるのか? 異なるとすれば、どのようなルールで異なるのか?」という疑問に対して、辻褄の合った説明ができなければ、評価の納得性を保つことができません。 

これらはまさに成果主義の運用の難しさといえますが、J&Jでは「だれもが高い目標を立てないではいられない2つの仕掛け」を作ることで、この難しさを乗り越えています。

■重要なのは「目標は4つまで」というルール

部門内で全員の目標をシェアすることで、メンバーが互いのことを気にかける雰囲気が生まれるという点ですばらしい取り組みですが(1/3 参照)、それだけでは、「中間レビューで目標を上方修正する」というほどのモチベーションを引き出すには足りない気がします。なぜわざわざ、だれもが目標を上方修正するのでしょうか。その理由は2つ目の仕掛けにあります。

 

大島 弊社では、期初に立てる目標は、4つまでしか設定できないというルールがあります。期中に新しい案件が発生し、新しい目標を立てる必要が出たときには、追加するのではなく、入れ替えます。このルールが非常に重要です。

4つしか目標を書けないので、皆、できるだけ達成したら高い評価を得られるような“格好いい”目標を書こうとします。ここに通常業務を書く人はあまりいません。通常業務では150%の達成率になったとしても、高い評価はつかないでしょう。

中間レビュー時に目標を上方修正する人が多いのもそのせいです。そのままにしておくと、期末の評価が低くなる可能性があるからです。

人事総務本部人事部企画グループシニアマネジャー、大島恵美さん

――その方法ですと前提として、各人のバンド(等級)にふさわしい目標レベルがどれくらいかを示す必要がありますね。そこはジョブディスクリプション(各人の職務内容を定めた覚書)によって運用しているのですか?

大島 よくそう聞かれるのですが、実は弊社にはきちんとしたジョブディスクリプションはありません。部門内で発生する仕事は、だれかがやらなくてはなりません。例えば、私なら普通にできる仕事であっても、入社3年目の安藤にとっては難しい仕事があったとします。その時私が別の仕事で手が離せないとなれば、たとえ彼女にとって難しくても、彼女に任せる以外にありません。そんな時、等級やジョブディスクリプションにこだわっていると、実際問題として仕事が回っていきません。

ただ安藤にとって難しい仕事をやりきることができれば、その分、高く評価されます。このようなケースでは仮に98%しか達成できなかったとしても、それだけのことにチャレンジし、ここまでやったということでそれなりに高く評価されるでしょう。

安藤 評価の際には、この等級の人が何をどれだけやったのか、という点で見てもらっているということは感じます。もし上の等級の人がやれば滞りなくできたはずなのに、自分は一生懸命やったけれど、そのレベルに達しなかったとします。それでも私の等級で考えればどうか、という点で見てもらっているので、評価の客観性に対しての信頼はありますよね。

人事総務本部人事部企画グループ、安藤彩さん

――そうなると、上司が目標設定時に、その人の役割レベルに対して設定した目標が適正かどうかを判断することが重要になりますね。口で言うのは簡単ですが、その判断は、実際はかなり難しいのではないでしょうか。

大島 そのため、部内での目標設定面談が終わった後に、マネージャーが集まり、目標のレベル合わせをしています。ここで各人の目標の適正さも見ますが、部門間でのレベルのズレがないかを議論するのです。

マネージャー自身のパフォーマンスは、いわば部下の目標の総和です。ここで部下の低い目標を受容したままでいると、結局、自分の評価を下げることになります。

期末の評価時期にも、評価結果のレベル合わせをマネージャーの中で行います。仮に評価が甘い上司がいて、部下に総じて高めの評価を与えていたとしましょう。このミーティングで「それは高すぎるだろう?」という話になり、調整が行われます。

大切なのは、目標設定時の“にぎり”なんです。きちんと目標が設定でき、ゴールイメージのレベル合わせができていれば、評価はそれほどズレません。マネージャー研修でも目標設定指導の方法を教えています。各人の等級に照らして適正な目標を設定させることは、マネージャーの重要な役割です。

■目標設定では、極力「数値化すること」が基本

――目標はどのように立てるのですか。数値化することが大切ですが、仕事の中には数値化しにくいものもあります。

安藤 上司からは、何かしら数値化できる指標を考えるよう指導されます。例えば、スケジュール的なタイムラインを設定して、9月までに80%完了しているとするものもありますし、もしオペレーション的な業務であれば「ミスを何件以内に抑える」といった目標もあり得ます。現在4人が介在している仕事のプロセスを改善して、関わる人を2人まで減らすといった書き方もあるでしょう。

大島 極力数値化していくのが基本ですが、数値化すると逆におかしなことになるといった場合には、定性的な目標を立てます。例えば、私が安藤の育成を目標にしたとします。しかし、育成された状態を数値で示すのは難しいものです。この場合には、どういった状態が育成をしたといえるのか書きます。例えば、外部からの取材に、安藤が一人で答え、その成果物を見ても合格点の受け答えができるようになるといった目標にすれば、ある程度客観的に育成された状態を把握することができるでしょう。

――ちょっとセコイ話ですが、御社の方法ですと、同じ仕事を同じ程度できたとして、人によって評価と給料が変わるということが起こりませんか? 等級が下の人が最も高い評価を取り、上の人が普通の評価だったといったときには、等級が下の人のほうがトクをするのでしょうか?

大島 可能性としてはゼロではありません。業績評価は9段階で、9が一番上で、1が一番下です。例えば、同じ仕事をして下の等級の人が「9」を取り、上の等級の人が「5」だった場合には、下の等級の人のほうが給料が高くなる可能性があります。評価間格差が1つくらいであれば、等級ごとに給与の幅を持たせているので、そこで吸収されてしまいます。ただ基本的に、こういったケースはあまりありません。全員が自分にとってチャレンジングな目標を立てているので、そもそも上の等級の人が、下の等級の人にとってのチャレンジングな仕事を、自分の目標として立てることはまずないからです。

だから弊社では、難しい仕事を振られて嫌がる人はあまりいません。例えば、私であれば上司の仕事を「ちょっとこれやってくれない」と言われれば、「これで高い評価を得られるぞ」とちょっとワクワクするわけですし、安藤にしても私の仕事を振られればワクワクするはずです。もちろんバランスはあって、私がいきなり社長の仕事を振られたら「それはちょっと……」と思いますが、割とみな、こういった感じだと思います。

――なるほど。ここでも「目標は4つまで」ルールが効いてくるわけですね。う~ん、非常によく考えられていますね(笑)


■通常業務やチームワークはコンピテンシー評価でカバー

J&Jでは、だれもが「高い目標を立てないではいられない仕掛け」があるのは理解できましたが、一方で高い目標ばかりが推奨されると、地道な仕事をないがしろにする雰囲気が生まれる心配もあります。

 

――例えば工場のライン管理、あるいはどの企業にも必ずある経理や総務といった仕事は、オペレーションをきちんと回していくことが非常に大切です。高い目標ばかりを重視すると、こういった仕事がないがしろにされるといったことはありませんか。

大島 感覚的には「そういったこともあり得るのでしょうね」というのはわかります。ただ、その問題は、少なくとも弊社では起きていません。まず工場のラインの管理といった仕事をしている人が、非常に少ないのです。

また、人事でも給与計算や支払いに関わる業務があります。給料をきちんと払うことは重要な仕事ですし、払わないと大変なことになります。しかし、その仕事を目標にするかというと、そうではありません。少しでもプロジェクトや何かを変えるといったことを目標にしようとします。

その点で「目標は4つまで」というルールがポイントなのです。以前はいくつでも書けたのですが、そうすると、自分の仕事を20個書いて、それぞれ5%ずつ配分するという人が出てきました。新しい業務が発生しても目標に書いていないからやらないとか。こういったことを避けるためにも、「4つ」と決めたことは非常に重要でした。

安藤 例えば、私の仕事の1つに、給与や人事情報などのデータベース管理があります。しかし、その仕事を目標として書くよりは、会社にとって重要度が高く、自分にとってもチャレンジングな仕事を目標にします。4つしか書けないとなると、必然的に通常業務は目標のリストから落ちていきます。通常のオペレーション的な業務はもちろん重要ですが、意識のうえではできて当たり前のことですし、他の業務を邪魔しないようにフローを改善していくとか、そういった意識になっていきます。

大島 オペレーション的な仕事や通常業務は、コンピテンシー評価のほうでカバーされているのです。通常業務は「できて当たり前」。したがって、きちんとできないとコンピテンシー評価で大きなマイナスになります。仮に非常にチャレンジングな仕事を目標に掲げ、そちらではすばらしい業績を上げた人がいたとします。ところが、その人が通常やるべきことを疎かにしていたとなると、コンピテンシー評価で相当下がります。

 

<ジョンソン・エンド・ジョンソン Point②>

  • 目標は4つまでしか書けない。そのため高評価を得るために、だれもが高い目標を設定するようになる。
  • 同じ仕事を同程度のレベルで達成した場合に、高等級者よりも等級の低い人のほうが賞与が高くなる可能性があるが、現実にはまずない。なぜなら高等級者が等級の低い人にとってのチャレンジングな目標を、自分の目標として設定することがないから。
  • 目標設定時と評価時にマネージャーが集まり、部門間のレベル合わせを行う。
  • 通常業務やチームワークはコンピテンシー評価でカバーする。

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