会社の制度をトコトン活用する 賢いマネープラン術 【深田晶恵】 [2011.08.29]

会社員としての特典を活かしたマネープランの立て方②―生命保険は、社会保障と勤務先の保障をベースに設計しよう


会社の制度をトコトン活用する 賢いマネープラン術(9)

深田晶恵 ふかたあきえ
ファイナンシャルプランナー、(株)生活設計塾クルー取締役

前回は、ムダなく医療保険に加入する方法をご説明しました。今回は引き続き、会社員としての特典を活かした生命保険の保障設計について解説していきます。

死亡保障型の生命保険は、だれでも必要?

まず大前提として押さえておきたいのは、死亡保障型の生命保険は「自分が死亡した場合に、経済的に困る人」がいる時に加入すべきものだということです。

「社会人になったら生命保険の一つくらい入っておくものだ」などという言葉を耳にすることがありますが、子どもがいない独身の人や共働き夫婦の場合、原則として死亡保障は不要です。ただし、「結婚したら、すぐに子どもがほしい」と考えているのであれば、結婚を機に加入するのも一つの方法です。特に女性の場合、妊娠期間中は保険に加入できなくなるので、早めに準備しておくことも大切です[図表1]。

扶養家族がいる場合など「生命保険に入っておいたほうがいいな」という人は、まず「社会保障」と「勤務先の保障」をチェックしましょう。保障設計の基本は、[図表2]のように「社会保障」「勤務先の保障」「私的保障」を積み上げ、これらで不足する分を民間の保険で補う、と考えること。

死亡保障というと、多くの人が「まず民間の生命保険に入ろう」と考えがちですが、すでに持っている保障を無視して加入すると、ムダな保険料を払うことになるので、注意が必要です。

まずは社会保障(国の保障)をチェック!

死亡保障の場合、まず確認したいのは社会保障である「遺族厚生年金」「遺族基礎年金」

会社員の夫が死亡した場合、加入している厚生年金から「遺族厚生年金」が、18歳未満の子どもがいる場合は、子の人数に応じて国民年金から「遺族基礎年金」が支払われます。

注意が必要なのは、遺族年金は基本的に「夫(男性)が亡くなった時」しか受け取れないこと。夫婦共働きで子どもを育てている場合、会社員の妻が死亡しても、父子家庭には遺族基礎年金は支給されませんし、遺族厚生年金も妻が死亡した時に夫が55歳未満の場合は受け取れません。

ただし、遺族厚生年金は、受給権者を子どもにすると、子どもが18歳になる年度末まで受給できることを知っておきましょう。子どもを受給権者にして申請できることは、ほとんど知られていませんから、この制度を知っているかどうかで明暗が分かれてしまうのです。

公的制度としては非常に残念な仕組みといわざるを得ませんが、子どものいる女性の方は、公的な保障が少ない実情を踏まえ、民間の保険で保障を確保すること、また、会社員の夫が死亡した場合は子どもが受給権者になり得ることなどを理解したうえでリスクヘッジしておくことが大切です。

次に会社の保障(福利厚生制度)を確認

次に確認したいのが、勤務先の保障。会社員の場合、福利厚生制度のハンドブックやイントラネットなどで「おくやみ」のコーナーを見てみましょう。死亡退職金や弔慰金のほか、会社によっては遺児育英年金や遺族生活支援金などの遺族補償を充実させているケースも少なくありません[図表3]。

一般に、死亡保障の必要額は、年を重ねるごとに小さくなります。例えば、生まれたばかりの子どもを独立するまで育てるのにかかるお金の総額と、大学生の子どもを独立するまでのお金の総額には大きな差があります。子どもの成長に合わせて、必要保障額は減っていくわけです。

また、遺族厚生年金の受給年額は厚生年金の加入期間が長いほど増えていきますし、死亡退職金も勤続年数が長くなるほど金額は増えていくのが一般的です。つまり、長く働くほど、社会保障や勤務先の保障が積み上がっていくわけです。また、私的保障といえる預貯金の額も、30代と50代ではずいぶん差があるはず。このように考えると、子どもが幼く、公的な保障が少ない若い世代の人ほど、民間の保険で死亡保障を用意する必要性は高いといえます。

民間の生命保険に加入するなら、自社にグループ保険があるか確認する

民間の生命保険に加入する際も、会社員のメリットである「グループ保険」を優先して検討しましょう。グループ保険とは、個別の企業に勤める人向けに保険会社が作っている商品で、同じ死亡保障額なら一般に売られているものより保険料が割安になっています。時々、「保険料が安いのは何かウラがあるのでは?」と不信感を持つ方がいらっしゃいますが、グループ保険が安いのはちゃんと合理的な理由があります。

一つは、その会社の仕事内容に合わせて保険料が設定されていること。危険な仕事をしている人が少ない、デスクワークがメインの会社なら、死亡リスクが低いため保険料は下がります。もう一つは、給与天引きで保険料が集められること。保険会社からすると、集金にかかる事務コストが大幅に軽減できるので、その分だけ保険料を安くできるわけです。

近年は、インターネットで加入できる割安な生命保険が増えていますが、グループ保険のほうがもっと安いこともあるので、ぜひ確認してみてください。

ただし、グループ保険は会社を辞めたり、子会社に転籍したりした場合などは解約せざるを得なくなることが考えられます(割安な保険料のメリットが継続して受け続けられないということ)。

転職する可能性がある人、関係会社がたくさんある会社に勤めている人は、そのような事態があることを前提に、グループ保険の利用は必要保障額の半分程度にとどめ、残り半分はネット生保で補うといった方法も検討しましょう。

最後に、もう一つ。家計相談を受けていると、「周りのみんなが入っているから、何となく」とグループ保険に加入し、そのことを忘れている人がたくさんいます。すでに加入している保障を知らずに民間の生命保険にたくさん入って、ムダな保険料を払い続けているケースは珍しくありません。一度、すでに給与天引きされている保険がないかどうか、給与明細をチェックしてみてください。

深田晶恵(ふかたあきえ)Profile
ファイナンシャルプランナー、(株)生活設計塾クルー取締役
CFP認定者 1級FP技能士
1967年北海道生まれ。外資系電機メーカー、日本フィリップス(株)で8年間勤務後、1996年にファイナンシャルプランナーに転身。FP資格取得後、 実務経験を積んだ後、1998年にFPとして独り立ちする。その後、同じオフィスの仲間と特定の金融商品や保険商品の販売を行わない独立系FP会社「生活 設計塾クルー」を設立し、個人向けに住宅ローンや保障設計などマネープランのコンサルティングを行う。一般個人向けのマネーセミナーのほか、企業の従業員 や自治体職員向けのライフプランセミナー講師としても活躍。メディアを通じたマネー情報の発信にも注力しており、『住宅ローンはこうして借りなさい改訂3 版』(ダイヤモンド社)、『幸せになるお金のバイブル』(日本経済新聞出版社)など多数の著書があるほか、日本経済新聞夕刊、『日経ビジネス Associe』『日経WOMAN』などの連載も持つ。
ブログ「お金のおけいこ。」 http://www.akie-fukata.com/
Twitter  http://twitter.com/akiefukata

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

シリーズ記事

キーワード

ログイン

  • ログイン

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品