給与計算の基礎知識 [2012.03.01]

給与明細


 給与明細の例を示して給与計算の方法を説明します。みなさんも、自分の給与明細を使って、給与計算をしてみてください。

(1)給与明細の構成

 一般的に給与明細は、次の三つの部分に分けて表示されます。
①勤怠部分:給与計算期間中の労働日数、休暇取得日数、欠勤・遅刻・早退などの不就業日数・時間数(この日数・時間分の給与は支給されません)、時間外労働時間数などが表示されます。
②支給部分:基本給、手当などの項目ごとに支給額が示されます。全項目の合計額が「総支給額」となります。「総支給額」は、社会保険料や税金が控除される前の、いわゆる「社会保険料・税込み」の支給額となります。
③控除部分:社会保険料控除(介護保険、健康保険、厚生年金保険の保険料)、雇用保険料、源泉所得税、住民税の金額が示されます。これらは、事業主が各従業員の負担分を給与から天引きして、社会保険事務所や税務署などに納付します。これ以外にも、社宅利用料や生命保険料など、給与から控除するものの金額が示されます。
 支給部分に示された総支給額から控除部分の合計額を引いたものが「差引支給額」として、その月分の給与として支給される金額(いわゆる「手取り額」)になります。

【図表56】 給与明細の例


(2)勤怠部分

 計算期間中の労働日数などが示される部分で、時間外労働手当や欠勤控除などの計算のベースとなります。
 基本給の支給の仕方には、「当月分の基本給を翌月に支給する方法」と「当月分の基本給を当月に支給する方法」があり、それにより、給与の計算期間が異なってきます。また、基本給の対象期間と時間外労働時間の集計期間が異なっている場合もあります。基本給、時間外労働時間の締切日や計算期間を確認し、勤怠部分の表示とあっているかどうかを確認しましょう。

【図表57】 給与の締切日と支給日の設定
①当月の基本給を翌月に支払う方法
②当月の基本給を当月に支払う方法

 なお、1日の所定労働時間が8時間未満の場合、所定労働時間を超えて法定労働時間の範囲内の時間の取り扱いを確認しておくことも必要です。例えば、1日の所定労働時間が9:00~17:00(休憩1時間、7時間労働)の場合、17:00~18:00までの1時間について「法内超過(その時間分の給与を支払うが、時間外労働の取り扱いをしない)」とするか、「時間外労働」として取扱時間外労働時間数に加えて割増賃金を支払っているか、どちらかの取り扱いをしているはずです。
 週休2日制を導入している会社においては、休日労働についても同じように、法定休日を上回って付与されている所定休日の取り扱いを確認しておきましょう。
これらの取り扱いにより、時間外労働時間数の集計方法が変わるため、勤怠部分に表示される時間数も異なってきます。

 また、給与支給の方法により、労働日や不就業時間の取り扱いは次のようになります。

支給の方法労働日数と基本給与の支給不就業時間の取り扱い対象者(例)
完全月給制各月の実労働日数にかかわらず定額を支給する控除はしない管理職
月給制
月ぎめの賃金
同上不就業時間相当分を控除する正社員
日給制(月払い)
時給制(月払い)
各月の労働日数・時間数により給与額が変動(日給×実労働日数)実労働日数・時間数が減る
(総額からの控除ではない)
パートタイム労働者など


 例えば、完全月給制を採用しており、時間外労働の割増賃金の適用除外とされている管理職については、給与計算に伴う勤怠管理は不要になるため、不就業時間も時間外労働時間数も表示しないケースが多くなっています。

(3)支給部分

 基本給や手当などの支給額が項目ごとに表示されます。
 ここでは、時間外手当が、勤怠部分で示されている時間外労働時間に相当する支給額となっているかどうかを確認します。
 時間外手当の支給額は、次のとおり計算します。

時間外手当の支給額 = 時間外算定基礎額×割増率×時間外労働時間数
時間外算定基礎額とは、労働時間1時間当たりの給与(時間単価)です。
時間外算定基礎額 月額給与 ÷月の所定労働時間
 月額給与 ÷1日の所定労働時間数×月の所定労働日数)
 月額給与 ÷年間所定労働時間÷12カ月)
<月額給与が20万円、1日の所定労働時間8時間、月の労働日数が20日の場合>
時間外労働の算定基礎額(時間単価)200,000円÷(8時間×20日)
 1,250円  
<月額給与が20万円、年間の総労働時間が1,800時間>
時間外労働の算定基礎額(時間単価)200,000円÷(1,800時間÷12カ月)
 1,333円  


 なお、家族手当や住宅手当などは、時間外算定基礎額に含めなくてもよいものとされています。時間外算定基礎額の算出方法は給与規程などに記載されています。
 時間外労働の割増率は、労基法における最低基準が「時間外労働25%、休日労働35%、1カ月について60時間を超えた時間外労働50%、深夜労働25%」などとなっていますが、会社によっては、これを上回る割増率が設定されていることもあります。自社の給与規程などで確認してください。

労働基準法第37条5項
 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
 
労働基準法施行規則第21条
法第37条第5項 の規定によって、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第1項 及び第4項 の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
1別居手当
2子女教育手当
3住宅手当
4臨時に支払われた賃金
51カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(労働契約の内容の変更)


 基本給と諸手当(時間外労働手当を含む)の合計額が、給与の「総支給額」となります。従業員に支給される給与とは、この「総支給額」のことです。
 ただし、実際に従業員に支払われる金額は、総支給額から社会保険料や所得税などが控除されたものとなります。
 給与明細上は、総支給額の近くに「課税対象額」が表示されることがあります。これは、源泉所得税の額を決めるときの基準となる給与所得の額で、総支給額から次の金額が控除されたものです。
①非課税の手当

・通勤手当のうち一定金額以下のもの(通勤定期券などの金額、月額10万円まで)
・転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの
・宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの

②社会保険料
・介護保険、健康保険、厚生年金保険、雇用保険などの保険料で被保険者として負担するもの

総支給額   = 基本給+諸手当+時間外手当
課税対象額 = 総支給額 - 通勤手当 - 社会保険料合計


(4)控除部分

給与の総支給額から、社会保険料や源泉所得税、住民税などを控除します。
①給与(賞与)にかかる社会保険料(労働者負担分)の徴収
雇用保険
 毎月の給与(賞与)の総支給額に0.6%を乗じたものを保険料として徴収します。なお、雇用保険料は、労災保険料と合わせた1年分の保険料を6月1日から7月10日までの間に都道府県労働局に納付します。

給与明細に表示される雇用保険料(労働者負担分)=総支給額 × 0.6%


健康保険、介護保険、厚生年金保険
 標準報酬月額(4~6月の3カ月間にその労働者に支払った給与の1カ月当たり平均額)に保険料率を乗じた保険料、および、賞与の場合は、標準賞与(賞与の1000円未満を切り捨て)に保険料率を乗じたものを徴収します。徴収した社会保険料は、事業主負担分も合算して、給与を支払った翌月末までに年金事務所に納付します。
(なお、介護保険料は、40歳以上の労働者から徴収されます。)

 給与明細に表示される社会保険料(労働者負担分)=標準報酬月額 ×保険料率

※実際には、報酬月額(4~6月の給与総支給額の平均)を「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」に当てはめて、9月~翌年8月までの保険料を算定します。「保険料額表」は、巻末資料を参照してください。

【図表58】 社会保険料率一覧

②源泉所得税、住民税の徴収
 給与からは、次の税金が控除されます。
所得税
 個人の所得(収入から経費をひいたもの)にかかる税金で、国に納付します。税率は、所得金額に応じて5%~40%と幅がありますが、一般的な従業員であれば、税率はおおむね10~23%と考えればいいでしょう。
住民税
 個人の所得にかかる税金で、地方公共団体に納付します。道府県民税と市町村民税とがあり、標準税率は、「均等割(定額)」と「所得割(定率)」に分かれ、道府県民税が「1000円+4%」、市町村民税が「3,000円+6%」です(つまり、標準的な住民税率は「4000円+10%」となります)。

 所得税と住民税とでは納付方法が異なります。
 所得税は、1月から12月にかけて支払われる給与や賞与から取りあえず税金を徴収(源泉徴収)します。そして、その年の最後に(12月31日時点で)支払う税金額を確定し、すでに納付した金額との税額との差額について12月(または翌年の1月)に支払う給与で調整(納付額が少なければ追加徴収し、多すぎたら還付)します。この措置を「年末調整」といいます。
 ただし、給与収入が2000万円を超えている人や副収入がある人等は、自分で所得税の納付の手続きをします。これが「確定申告」です。
 一方、住民税は、1月1日時点での居住地において、前年の所得に基づいて支払う税金額を確定し、それを6月から翌年5月にかけて毎月の給与から控除します。これを「特別徴収」といいます。
 住民税の納付額は、毎年5月に事業主経由で労働者に通知(「市民税・県民税 特別徴収税額通知書」)されます。
 なお、退職などの事由により、住民税を労働者自身で納付することを「普通徴収」といいます。

【図表59】 所得税と住民税の徴収

 月々の給与から控除する源泉所得税は、課税対象額(給与支給額-通勤手当-社会保険料等)を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」に当てはめて算出します(なお、賞与の場合は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から賞与額に乗ずべき率を求め、源泉徴収税額を算出します)。「源泉徴収税額表(税額の算出率の表)」は、巻末資料を参照してください。
 住民税額は、地方公共団体から「市民税・県民税 特別徴収税額通知書」が通知されますので、事業主は、そこに記載された金額を給与から徴収し、納付します。

【図表60】 市民税・県民税 特別徴収税額通知書

【図表61】 給与明細の計算式

<算式一覧>
①(所定)労働日数=出勤日数+有給休暇日数
 20=19+1

②時間外手当=時間単価×割増率×時間外労働時間
 17,500=(270,000+20,000+30,000)÷160×1.25×7

③総支給額=基本給+手当
 352,500=270,000+20,000+30,000+5,000+17,500+10,000

④介護保険、健康保険、厚生年金保険の保険料
 標準報酬月額(36万円)を保険料月額表に当てはめて算出。
 介護保険料:2,718=360,000×0.755%
 健康保険料:17,064=360,000×4.74%
 厚生年金保険料:29,542=360,000×8.206%

⑤雇用保険料
 2,115=352,500×0.6%

⑥社会保険合計=介護保険+健康保険+厚生年金+雇用保険
 51,439=2,718+17,064+29,542+2,115

⑦課税対象額=総支給額-通勤手当-社会保険合計
 291,061=352,500-10,000-51,439

⑧所得税 (課税対象額を税額表に当てはめて算出)

⑨住民税(前年年収に基づき算出)

⑩控除計=社会保険合計+所得税+住民税+生命保険料等
 99,559=51,439+3,120+35,000+10,000

⑪差引支給額=総支給額-控除計額
 252,941=352,500-99,559

深瀬勝範(ふかせ・かつのり)Profile
社会保険労務士
1962年神奈川県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、大手電機メーカー、金融機関系コンサルティング会社、大手情報サービス会社を経て、2001年より現職。営利企業、社会福祉法人、学校法人等を対象に人事制度の設計、事業計画の策定等のコンサルティングを実施中。

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