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[2011.07.12]

出張先への移動時間は労働時間に当たりますか。社有車を運転しての出張ではどうですか?


A 出張先への往復に要した時間は、原則として労働時間とはされません。

「労働時間」とは、使用者の指揮命令下にあり、労務から完全に解放された時間(休憩時間)を除いた時間をいいます。使用者の指揮命令下にあり、自由利用が保障された時間でなければ「労働時間」であるため、実際に作業に従事している時間だけでなく、作業と作業の間の待機している時間(いわゆる「手待ち時間」)も労働時間に含まれます。したがって、例えば、①貨物の積み込み係が貨物自動車の到着を待って体を休めている時間や、②運転手が2人乗り込んで交替で運転に当たる場合の助手席等で休んでいる時間などは、いずれも「労働時間」といえます。
これに対して、出張先への移動時間については、休日の出張に関するものではありますが、休日労働として取り扱わなくても差し支えない旨の行政通達があります(参考資料①)。したがって、出張の際に列車や航空機などの公共交通機関を利用して旅行(移動)する場合、これらに乗車中の時間について、使用者から物品の監視等、別段の指示命令がない限り、原則として労働時間として取り扱わなくても、労働基準法違反とはならないといえます。

上記通達に照らして考えると、社有車を運転しての出張であっても、例えばそれが①得意先へ製品を納入するため車両に積み込んで運搬する場合には労働時間ですが、②単に交通機関として営業車を使用し運転する場合は、たとえ車両運転による心身の疲労があるとしても、そのことだけをもって労働時間として取り扱うことにはなりません。
①の場合は、物品を運搬すること自体を目的とした出張であり、その際の時間は、無事に物品を目的地まで送り届けることが出張の用務であるため、その時間を自由に利用することはできず、盗難や損傷などがあれば、就業規則上の定めなどにより制裁等を科せられることも考えられ、使用者の指揮監督の下にある時間といえ、「労働時間」とみるべきです。
これに対して、②の場合は、自ら運転したとしても、その時間について、労働者の自由な利用が可能であり、使用者の指揮監督下にないと実質的に認められるものであるならば、「労働時間ではない」と解するべきでしょう。

現実の場面では、両者の境があいまいな場合もあり得るため、実態に即し、具体的な諸事情を総合的に考慮して、実質的な判断をする必要があります。判例においても、多くのものが、出張の際の往復に要する時間については、労働時間に当たらないと判断しています(参考資料②)。もちろん、移動時間のすべてが労働時間に該当しないわけではなく、具体的な労働義務の有無、移動時間中の活動における自由度などを勘案したうえで、使用者の指揮監督の下にある時間とされれば、労働時間として処理すべきでしょう。

<参考資料>
①昭23.3.17 基発461、昭33.2.13 基発90
出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取り扱わなくても差し支えない。
②日本工業検査事件(横浜地裁川崎支部 昭46.1.26決定)
出張の際の往復に要する時間は、労働者が日常の出勤に費す時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがってまた時間外労働の問題は起り得ないと解するのが相当である。

回答者 益田浩一郎 社会保険労務士(益田社会保険労務士事務所 代表)

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