これが上司と部下の生きる道 【中尾ゆうすけ】 [2011.06.24]

障害者雇用に見る、上司の職場マネジメント(後編)~差別や偏見の多くは、無知や誤解から生まれる~


これが上司と部下の生きる道(20)
中尾ゆうすけ(日本メンタルヘルス協会 公認心理カウンセラー)

障害者雇用への取り組み状況には、企業により大きく差があります。さらに言えば、職場ごとにも意識はまったく異なるのが現状です。前回より、障害者雇用という切り口から、職場風土に及ぼす上司の影響力について考察してきました。今回は、「障害者雇用への理解のある職場」「理解のない(少ない)職場」について考えていきます。(編集部)

障害者自身が、イキイキと働いているか?

実際の職場を見てみると、障害者雇用に対する理解がある職場と、ない(少ない)職場はすぐに分かる。

それは障害者自身がイキイキと働いているかどうかを見れば一目瞭然だ。

もちろん、障害の部位や程度によるところも大きいことは事実である。
例えば、心臓に障害がある場合など、仕事をするうえで、健常者と変わらないアウトプットが上げるケースがある。障害者であることを忘れてしまうほど、職場での理解も深く差別も偏見もない。

だから障害者自身もイキイキと働けるのだ。実際に筆者の知人の中には障害者ではあるが、健常者と変わらない成果を上げ、管理職になっている者もいる

本人の高い意識ももちろんであるが、職場の上司や同僚の理解が高いからこそ、障害者は安心して働くことができる。

理解のある職場では、周囲のメンバーは文句を言うわけではなく、日常的に声掛けをする

他にも、内臓に障害がある方の場合なども、健常者と変わらないように見える。ただし頻繁に通院が必要など勤務に影響があるケースがある。

筆者の知人にも、人工透析をされており、頻繁に通院することが必要な方がいた。
当然ながら出勤日数は少なくなる。仕事の負担は他のメンバーにその分のしかかってくるが、それに対し、誰一人文句を言うわけでもなく、逆に「明日は病院だろ? 残った仕事はやっておくから」などという声掛けが日常的だった。

理解のある職場とそうでない職場かによって、障害者がイキイキと働けるかそうでないかが決まる。

また、会社の施策としても、時短勤務の適用をするなど、制度面からの配慮もあった。

健常者と同等のアウトプットが難しいケース

一方、身体に障害がある場合や知的障害がある場合は、どうしても健常者と同等のアウトプットは難しくなるケースもある。
すると、職場の理解もかなり難しくなっているようだ。

できることが限られてしまったり、同じことをする場合でも時間がかかることもある。
しかし、それを理解したうえで、その上司は適切な業務指示をし、周囲の部下からのフォローができるような指導や風土を育てなければならない。

障害者への理解がある職場では…

職場メンバーの障害者に対する理解は、人間的な成熟度といってもいいだろう未成熟なメンバーが多いほど、差別や偏見が生まれる

例えば、聴覚に障害がある場合、コミュニケーションが極端に少なくなり、障害者が孤立してしまうケースがある。これは明らかに職場の理解が足りないといえる。

しかし、理解がある職場であればどうだろうか? 以前、筆者が勤務していた職場にも聴覚障害者がいた。その職場では、何人もの人が手話を覚え、また勉強していた
あらゆる仕事がマニュアル化され、言葉ではなく、絵や文字で説明ができるように整備されているから、仕事を覚えることも、仕事を進めることも、健常者に遜色(そんしょく)ないものだった。むしろ、耳が聞こえない分、健常者よりも集中力が高いと感じることさえあった。

そこでは、社内に数人いる聴覚障害者と定期的に手話の勉強会をしたりし、コミュニケーションの場を意図的に作ったりし、お互いがお互いを理解しあっていた。

障害者に対する差別や偏見の多くは、無知や誤解から生まれる

独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構のサイトにあるQ&A(本記事下の「関連サイト」参照)を見ると、まだまだ理解の足りない企業が多いと感じざるを得ない。

障害者に対する差別や偏見の多くは、無知や誤解から生まれる。少しの勇気をもって一歩踏み出し、手を差し伸べ、お互いを尊重し、理解し合えれば、何も難しいことはない。

障害者はできることが限られてしまう場合もあるが、できないわけではない。できないのはむしろ、上司や職場メンバーの指導力のなさから生まれる結果なのである。

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