作家・企業顧問、株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
三笠書房

BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ あなたの職場に、「仕事はできるが、一緒に働くのはつらい」と思われている社員はいないだろうか。本書が取り上げる「ブリリアント・ジャーク」とは、まさにそうした「仕事の能力は高く優秀(Brilliant)だが、協調性がなく周囲に悪影響を及ぼす嫌な人(Jerk)」を指す概念である。本書は、組織変革の支援に携わる沢渡あまね氏と、組織・人事領域の専門家である伊達洋駆氏が、実践知と研究知の双方からこの問題を掘り下げた一冊である。
■ 本書は全4章構成。第1章では、なぜブリリアント・ジャークが生まれ、組織内で許容され続けるのかを解説する。第2章では、職場で見られるブリリアント・ジャークを六つの類型に整理し、実績と権威を振りかざしマウンティング(優位性の誇示)と恐怖で支配しようとする「王様タイプ」や、いい人だがプレーヤーでいることに安住し経営やマネジメントの責任から逃げる「現実逃避タイプ」などの事例を通じて、それぞれが組織にもたらすリスクを明らかにする。第3章ではブリリアント・ジャークを暴走させないための組織設計を示し、最終章では “自分自身がブリリアント・ジャークになっていないか” という視点から自己点検を促している。
■ 本書の特徴は、問題を個人の性格や資質にのみ還元するのではなく、その背景にある組織構造やマネジメントの課題にも目を向けている点にある。成果主義や人材不足の下では、「優秀だから仕方がない」と問題行動が見過ごされがちだ。しかし、その結果として周囲の従業員の離職やメンタルヘルス不調、あるいは組織の生産性低下を招く可能性がある。このような職場の違和感に名前を与え、その背景と対応策を整理した本書は、人事担当者や管理職が組織運営を見直す際の参考となるだろう。