代表 寺澤康介
(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)
ProFuture代表の寺澤です。
2026年8月13日付の日本経済新聞電子版にて、不動産デベロッパーの霞ヶ関キャピタルによる、採用市場の常識を覆す大胆な取り組みについて紹介されました。同社は2025年12月に、2027年4月入社の新入社員に対して初年度年収1400万円を提示する募集を開始すると発表していましたが、今回はその最新動向が伝えられています。
同社が狙うのは、既存の枠組みに収まらない「尖った天才」の獲得です。学歴や専攻に捉われず、分野を問わず「日本一」の実績や特出したスキルを持つ人材を評価する「トップタレント選考」を導入しています。約1300人のエントリーから厳選された約10人の内定枠には、英ケンブリッジ大学の学生や、現実の事象を数式で表す「数理モデリング」の研究者、金融工学のコンテスト優勝者、起業家、AI開発者などが名を連ねています。既にインターンとして業務に従事している内定者もおり、外部に委託していた設計図の概算作成料を自動で算出するツールをわずか数日で開発したり、土地の金額・将来の稼働率・キャッシュフロー予測などを基に開発用地の投資判断を支援する独自AIを開発するなど、早くも革新的な成果を生み出しているということです。
この背景にあるのは、年々高まる若手の採用競争と、AI時代の到来による労働価値の変化です。高度なスキルを持つ人材であれば、年次を問わず大きな価値を創出できると判断し、外資系企業や海外テック系企業へ流出しがちな最優秀層を慰留するため、国内最高峰の報酬体系を用意したとのことです。年功序列や横並び意識が根強い日本企業の賃金モデルに対し、同社の挑戦は一石を投じる形となっており、続く2028年卒採用でも既に700人以上から応募があるなど、大きな反響を呼んでいます。こうした給与水準の大幅な引き上げや専門性評価の動きが、今後、ほかの国内企業における賃金体系や採用戦略にどの程度の波及効果をもたらすのか、引き続き目が離せません。
大企業の3割近くで大学1・2年時から関係構築を図る
今回は、HR総研が採用担当者を対象に実施した「2027年&2028年新卒採用動向調査(6月)」(調査期間:2026年6月1~9日)の結果から、2027年卒採用と2028年卒採用の両方に関するトピックを紹介します。
※以下、同調査結果の割合(%)は、小数点以下を四捨五入して整数で表示しています。
そのため、合計が100%にならない場合があります。
まずは、2027年卒学生向けインターンシップを実施した月を従業員規模別に見てみましょう。新卒採用の早期化を考慮し、今回調査より2027年卒学生が大学1年生だった2023年度以降の動きから確認しています。その結果、大企業では「2023年12月以前」から2割近くの企業がインターンシップを開催しており、「2024年4~8月」と「2024年9~12月」には2割半ば~3割近くが実施していたことが分かります[図表1]。
[図表1]従業員規模別 2027年卒学生向けインターンシップの実施時期(複数回答)

資料出所:HR総研「2027年&2028年新卒採用動向調査(6月)」([図表2~8]も同じ)
規模の大きい企業ほど、インターンシップの応募資格を学部3年生や大学院1年生に限定せず、大学1・2年生の頃からターゲット層となり得る学生と接点を持ち、自社の認知度向上や関係構築・相互理解を図ろうとしていることがうかがえます。早期に動くことで自社ファンの裾野を広げ、本格的な選考への移行をスムーズにする狙いがありそうです。とはいえ、大企業のインターンシップ実施時期のピークは「2025年7月」~「2025年8月」(2027年卒学生の大学3年夏期休暇期間中)で、例年どおり4割近くの企業がこの期間に実施しています。その後、「2025年9月」~「2025年10月」は3割程度を維持し、徐々に減少しています。これまでは大学3年時の8~9月がピークになる傾向が強かったのですが、7月への前倒し傾向がうかがえます。
一方、中堅・中小企業のピーク時期は「2025年8月」(それぞれ60%、53%)で、次いで「2025年9月」(同52%、42%)が続きます。「2025年7月」はいずれも2割程度(同24%、21%)にとどまり、大企業のような前倒し傾向は見られません。中堅企業では、その後「2025年12月」まで4割から半数程度で推移した後、年明けの「2026年1月」からは一気に低下し「2026年3月以降」は4%と1割未満になっています。
次に、面接選考の開始時期を見てみます。大企業では、2027年卒学生の多くが大学3年の夏期休暇期間である「2025年9月」までに40%が開始しており、「2025年12月」までには51%と過半数の企業が開始しています[図表2]。「2025年12月」までに開始した割合は、中堅企業で61%、中小企業で32%となっており、特に中堅企業で早く選考が開始されていたことがうかがえます。
[図表2]従業員規模別 2027年卒採用の面接選考の開始時期(予定含む)

さらに、2023年度までさかのぼると、大企業では2027年卒学生がまだ大学2年時である「2025年3月」までに4分の1(25%)の企業が面接選考を開始しており、新卒採用のさらなる早期化が顕著です。一方、中堅企業は同時期ではまだ3%にとどまり、「2025年4月」(13%)、「2025年11月」「2025年12月」(ともに11%)と、大学3年時からの面接が急速に展開されています。
中小企業では、「2026年3月」が17%で最も多く、「2026年8月以降」も15%となっています。「2026年1月」以降に7割近い企業がようやく選考を始めている点からも、大企業や中堅企業とは異なるスケジュール感となっています。
内定解禁時点で採用活動終了企業は4~5割程度
内定(内々定)出しの開始時期についても確認してみます。まず文系学生について、大企業では「2025年9月」までに開始している割合が4割近く(38%)、年明けの「2026年1月」までに開始している割合は半数(50%)に上っています[図表3]。「2025年9月」までに開始した割合は、中堅企業で29%、中小企業で17%です。しかし、中堅企業では、「2026年1月」時点で大企業を上回る55%が内定出しを開始しており、大企業と同様に早期化が進んでいます。一方、中小企業では、「2026年1月」時点でも24%にとどまり、最多は「2026年8月以降」の17%となっています。
[図表3]従業員規模別 2027年卒採用の内定(内々定)出しの開始時期:文系(予定含む)

理系の内定出し開始時期についても、大企業では「2025年9月」までに36%、年明けの「2026年1月」時点では54%と過半数に上っています[図表4]。「2025年9月」までに開始した割合は中堅企業で29%、中小企業では17%と、文系と大きな違いは見られません。「2026年1月」時点での割合も中堅企業が58%、中小企業が27%となっており、文系と同様の傾向を示しています。
[図表4]従業員規模別 2027年卒採用の内定(内々定)出しの開始時期:理系(予定含む)

2027年卒採用選考活動の終了時期(留学生・外国人などの選考を除く)の見込みについても見てみましょう。大企業では「2025年12月」までに9%の企業が採用活動を終了しているものの、その後は緩やかな伸びにとどまります[図表5]。「2026年3月」時点で16%、「2026年6月」時点で32%、正式内定解禁の10月を目前にした「2026年9月」時点でようやく過半数(54%)に達する見込みです。近年では、10月1日にこだわって内定式を開催する企業は減少傾向にあるものの、半数近い大企業がこの時期まで採用活動の継続を想定しているというのは、意外に思われるかもしれません。なお、大企業で8割を超えるのは「2026年12月」時点になります。
[図表5]従業員規模別 2027年卒採用選考活動の終了時期(留学生・外国人などの選考を除く)の見込み

面接開始が大企業と並んで早かった中堅企業ですが、採用活動の終了時期の見込みは大企業よりもさらに遅く、「2026年3月」時点ではわずか3%、「2026年6月」時点で大企業の半分の16%にとどまります。夏場以降に選考が進展し、「2026年9月」時点では大企業とほぼ同じ55%で過半数に達します。
一方の中小企業では、「2026年6月」時点では中堅企業を上回る22%が終了見込みであるものの、「2026年9月」時点で44%、「2026年12月」時点で71%といずれも中堅企業を下回ります。「2027年3月」とする企業も3割近く(27%)あり、採用予定数に満たないまま、対象学生の卒業によって否応なしに終了せざるを得ない実態が推測されます。
「ターゲット層の確保」と「辞退者の増加」が課題
2027年卒採用において苦労したことや悩んだことについて、フリーコメントで寄せられた回答の一部を抜粋して紹介します。「ターゲット層の確保」や「辞退者の増加」を挙げる声が多数を占めました。
・新卒者のレベルを上げたいがうまくいかない(メーカー、300名以下)
・母集団の形成と会社説明会への誘致(メーカー、300名以下)
・エントリー数の減少。学生の質の低下(メーカー、300名以下)
・母集団形成と意向醸成(IT・通信、301~1000名)
・ターゲット層が選考につながらない(サービス、300名以下)
・母集団内における、自社が求める人物の確保(IT・通信、301~1000名)
・ターゲット層の母集団形成(商社・流通、1001名以上)
・いくら指導・支援しても担当者の対応不足が改善せず、適切な対応ができないために結果に結びついていない(商社・流通、300名以下)
・選考途中や内定後の辞退の増加(商社・流通、300名以下)
・内定者のモチベーション維持(IT・通信、1001名以上)
・内定承諾が獲得できないのが一番の課題(メーカー、1001名以上)
・親会社が変わり大きな変革期にあるため、学生の内定辞退が一向に減らない(メーカー、1001名以上)
・女性の応募が例年より多いことから、女性の面接官をこれまでより増加させたために、通常業務への負荷が増した(サービス、300名以下)
・男性応募者の弱体化(メーカー、1001名以上)
「ターゲット層の見直し」大企業で7割程度が実施意向
ここからは、2028年卒採用に関するトピックを取り上げます。まず、2028年卒採用の採用計画数の前年比較については、「前年並み」がいずれの企業規模でも6割を超え、大企業では7割近く(69%)に上っています[図表6]。ただし、「増やす」の割合は大企業で18%、中堅企業で19%と2割近くに上り、中小企業でも13%となる一方、「減らす」はそれぞれわずか4%、5%、2%にとどまるなど、すべての企業規模で「増やす」の割合が「減らす」を大きく上回っています。2028年卒採用についても、企業側の採用意欲は高い状態が継続し、採用難がさらに続くことが必至です。
[図表6]従業員規模別 2028年卒採用の採用計画数の前年比較

AIの急速な進展・普及を踏まえ、自社の求める人物像や採用ターゲット層の見直しを行う必要性について聞いたところ、大企業では「既に見直したが、常に見直す必要がある」が最多で27%、次いで「見直す必要があり、現在、見直している最中」が26%と3割近くに上っています[図表7]。「まだ見直していないため、今後見直す必要がある」が16%で、これらを合計した7割近く(69%)が “見直す必要がある” と前向きな姿勢を示しています。変化の激しい時代に対応するために、求めるスキルをアップデートし続けることが組織の競争力に直結するという危機感が背景にあるといえます。
一方、中堅企業では「分からない」が28%と最多であるなど、まだ様子をうかがっている企業が多く、“見直す必要がある” は4割程度になっています。中小企業では「まだ見直しておらず、今後も見直す必要はない」が最多で28%、次いで「分からない」が24%となっており、採用ターゲット層の見直しに慎重な姿勢を取っている企業が過半数となっています。この差は、個人レベルでの活用にとどまらず、企業組織としてAIを実際の業務フローにどれだけ深く組み込んでいるかという取り組みレベルの違いに起因しているものと推測されます。
[図表7]従業員規模別 AIの急速な進展・普及を踏まえて、自社の採用ターゲット層の見直しを行う必要性

最後に、2028年卒採用の内定(内々定)出しの開始時期を前年比較で聞いたところ、いずれの企業規模においても「ほぼ変わらない」が、大企業で72%、中堅企業で62%、中小企業で83%と圧倒的多数を占めました[図表8]。ただし、“早くなる” とする割合(「1カ月以上早くなる」~「2週間程度早くなる」の合計)は、大企業で27%、中堅企業で35%、中小企業で12%となっています。特に、中堅企業の約4割が内定出しの開始を早めるとしている点が、2028年卒採用の特徴的な傾向といえそうです。早期化の波が中堅企業層にもさらに強く波及していくのか、今後の動向が注目されます。
[図表8]従業員規模別 2028年卒採用の内定(内々定)出し開始時期の前年比較

次回は、HR総研が就活口コミサイト「就活会議」と共同で、2027年卒業予定の同サイト会員学生を対象に実施した「2027年新卒学生の就職活動動向調査(6月)」の結果を紹介します。
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寺澤康介 てらざわ こうすけ ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長 1986年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。2007年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。 著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。 https://www.hrpro.co.jp/ |
