2026年07月10日掲載

BOOK REVIEW - 『組織の器 なぜ「正しい」取り組みをしても人と組織は変わらないのか?』

羽生琢哉 著
株式会社人としての器 代表取締役 
日本能率協会マネジメントセンター 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 著者は人事・組織行動論の専門家として「人としての器」に関する研究を行っており、対話型ワークショップ「器物語(いれものがたり)」を通じた実践活動を展開している。一般的に「あの人は器が大きい」と言うときの「器」は、人間としての深さや広がりを指す。一方で、組織運営における「施策・制度」と「風土」の関係は、「中身(水)」と「器」の関係に似ていると著者は述べる。どれほど良い施策や制度を用意しても、それを受け止める組織の器が小さければあふれてしまい、ひびが入っていれば漏れ出てしまう。本書は、「器」という概念を構成する要素を整理したモデルと、「器」の成長過程を示す枠組みを手がかりに、個人の成長と組織全体の変革に生かすための実践知を説く。

■ 第1章は「器」を構成する四つの要素である「感情・態度・自我・認知」を整理した上で「器」という概念の正体に迫る。第2章は「器」が成長するメカニズムを解き明かし、第3章では職場の中での器づくりを検討する。第4章は視座を組織へと高め、なぜ正しいはずの施策が現場で機能しないのか、人事制度や評価の仕組みを「器」の観点からどうリデザインすればよいかを論じていく。最終章の第5章では組織から社会へと視座を広げ、人生をかけて「器」を育てる意味について解説する。

■ 本書で提示する「器」は新しい正解を意味する言葉ではなく、大切なのは「自分らしい器に向き合い続ける」というプロセスであると著者は強調する。そして「組織の器」とは「多様な個性を持つ人々を受け入れる組織のあり方」と定義する。人事制度が狙った運用にたどり着かず組織の行き詰まりを感じたとき、「個人の器」と「組織の器」に目を向けることが、流れを変えるきっかけになるかもしれない。

組織の器 なぜ「正しい」取り組みをしても人と組織は変わらないのか?

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