代表 寺澤康介
(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)
ProFuture代表の寺澤です。
2026年6月9日の朝日新聞で、全国初の「女子大の理工学部」が人気になっているとの記事が掲載されました。この大学は広島市の安田女子大学で、2025年4月に生物科学、情報科学、建築の3学科から成る理工学部を開設したところ、合計180人(各60人)の定員に対して、初年度入試には延べ884人、次年度も延べ789人と、定員の4倍を超える出願があったといいます。近年、受験生の減少が多くの大学で重要課題とされる中でも、特に「地方私立大」や「女子大」の学生集めは厳しいとされています。その中で、なぜ安田女子大学はこれほどまでに受験生を集めることができたのでしょうか。それは、「理工=男性」という先入観や、理工系分野で就職した場合の職場環境に対する不安を解消すべく、数多くの高校を訪問して理系の学びについて説いて回るとともに、高校生・保護者を対象とした、理系職場で働く女性との交流見学ツアーや科学体験イベントの開催など、地道な活動を根気強く続けた結果だとされています。さらに、受験教科においても理数系科目を必須とすることなく選択科目にとどめたことで、高校時代に文系だった学生にも大きく門戸を開いたことが功を奏したようです。こうした取り組みの実施に当たっては、高校生や保護者への事前の入念なヒアリングが大いに参考になったといいます。
これは、大学の受験生集めの一つの好事例というだけではなく、企業の採用活動における選考応募者集めにも応用できるのではないかと思います。新卒採用においても、まさに “マーケティング力” が問われる時代が来ています。既成概念にとらわれることなく、新しい発想に基づく果敢な取り組みを期待しています。
理系でジョブ型採用支持が急拡大
今回は、前回に引き続き、HR総研が就活口コミサイト「就活会議」と共同で、2027年卒業予定の同サイト会員学生を対象に実施した「2027年新卒学生の就職活動動向調査(3月)」(調査期間:2026年3月5~16日)の結果の分析について紹介した後、HR総研が採用担当者を対象に実施した「2027年&2028年新卒採用動向調査(6月)」(調査期間:2026年6月1~9日)の結果をいち早く紹介します。
※以下、同調査結果の割合(%)は、小数点以下を四捨五入して整数で表示しています。
そのため、合計が100%にならない場合があります。
まずは、「2027年新卒学生の就職活動動向調査(3月)」の結果から、「ジョブ型(職種別)採用への賛否」について、2025年卒から2027年卒にかけての過去3年間の調査結果を踏まえた経時変化を見てみましょう[図表1]。
文系では、「賛成」が3年間を通じて5割台半ばで推移しています。一方、理系では、「賛成」が2025年卒56%、2026年卒66%、2027年卒74%と右肩上がりで増加しており、ジョブ型採用への支持が急速に高まっていることが分かります。また、「どちらとも言えない」は文系では過去3年間において4割前後で推移しているのに対して、理系では39%から23%まで低下しており、「反対」は文系・理系ともにわずか5%以下にとどまっています。このように、文系では慎重姿勢も一定程度残る一方、理系ではジョブ型採用を前向きに捉える傾向が年々強まっています。
[図表1]文理別 ジョブ型(職種別)採用への賛否(3年間の経時変化)

資料出所:HR総研×就活会議「2027年新卒学生の就職活動動向調査(2026年3月)」([図表2~3]も同じ)
ここで、2026年3月初旬の段階で内定承諾した学生について、「総合職採用(特定の職種に限定されていない従来型採用)」と「ジョブ型採用(職種別またはコース別採用)」のいずれであったのかを文理別に見てみると、文系では「総合職採用」の割合が71%と圧倒的に高くなっています[図表2]。これに対して、理系では「ジョブ型採用」の割合が64%と高くなっており、両極端な結果となっています。[図表1]で見た「ジョブ型採用への賛否」の違いが、実際の内定承諾先の採用形式に明確に反映されていることが分かります。
[図表2]文理別 内定承諾先の採用形式

近年は、IT系企業を中心に、新入社員全員を横並びで同一初任給とするのではなく、能力やスキルが著しく高いと認められる場合に、他の新入社員とは異なる初任給で処遇する動きが少しずつ広がっています。これを踏まえて「能力・スキルに応じた特別処遇の導入への賛否」について、過去3年間の経時変化を見てみましょう[図表3]。
「賛成」の割合は、文系では3年間において6割前後で推移しています。一方、理系では2025年卒54%、2026年卒61%、2027年卒67%と、2025年卒では文系を下回っていたにもかかわらず、年々増加しており、2027年卒では7割近くにまで増加しています。理系のほうが、能力・スキルに応じた処遇差を前向きに受け止める傾向が強まっていることがうかがえます。また、「どちらとも言えない」は、文系では3割程度を維持しているのに対して、理系では2025年卒39%から2027年卒29%へと10ポイント減少しています。
[図表3]文理別 能力・スキルに応じた特別処遇の導入への賛否(3年間の経時変化)

このように、文系・理系ともに能力やスキルに応じた特別処遇には比較的肯定している一方、特に理系ではその支持が年々強まっている結果となっています。この背景として、ジョブ型採用への賛成派が増加していることにも関連して、仕事に自身の専門性を生かすことを望む理系学生が多いため、能力・スキルを高く評価されることへの期待が反映されていることのほか、文系学生では学生時代に培った能力やスキルは極めて限定的であり、自分自身は “特別処遇を受けられる側” になることはないと認識しているのではないかと推察されます。
AIの進化・普及により変わる企業の求める人材像
ここからは、採用担当者を対象とした「2027年&2028年新卒採用動向調査(6月)」の結果を紹介します。今回は、「AI」をキーワードにしたトピックを取り上げます。
近年の生成AIの急速な進化と、企業ユーザーだけでなく個人ユーザーまでを巻き込んだ普及スピードを背景に、企業としてこれまでよりも重視したいターゲット層(求める人材像)を複数回答で聞いた結果が[図表4]です。企業規模別に比較してみましょう。
1001名以上の大企業で最も多かったのは「変化適応力の高い人材」(44%)で、以下「自律的に学び続けられる人材」(34%)、「高い専門性を持つ人材」(27%)、「課題を設定できる人材」(25%)と続きます。
これに対して、301~1000名の中堅企業、ならびに300名以下の中小企業では、ともに「自律的に学び続けられる人材」がそれぞれ58%、51%と半数を超えて最多となっています。中堅企業では、大企業でトップだった「変化適応力の高い人材」が32%でこれに続きますが、中小企業では20%にとどまり6位となっています。代わって中小企業で2位だったのは「良好な人間関係構築力の高い人材」(44%)で、「当事者意識を持って自走できる人材」と「他者を巻き込める人材」(ともに27%)が続くなど、企業規模によって傾向が大きく異なることが分かります。
[図表4]AIの急速な進化・普及を踏まえて、より重視したいターゲット層(求める人材像)(複数回答)

資料出所:HR総研「2027年&2028年新卒採用動向調査(2026年6月)」([図表5~8]も同じ)
大企業で3割近くあった「高い専門性を持つ人材」について、中堅企業ではわずか5%、中小企業でも10%にとどまります。大企業ではAIに関する「高い専門性」が求められると考えられているのに対して、中堅・中小企業では「高い専門性」はAIに任せてしまえばよいと考えられているのかもしれません。
エントリーシートのAI対策の行きつく所
就職活動での学生の生成AI活用は年々進み、中でも多くの企業が導入するエントリーシートについては、その作成・添削過程において生成AIを活用する学生が大半となっています。HR総研が「就活会議」と共同で実施した2025年11月の調査では、インターンシップ応募時のエントリーシートで生成AIを活用した割合は、2026年卒(38%)から2027年卒(64%)へと、26ポイントも増加しました。もはやエントリーシートを含む書類選考の是非が問われる事態だといっても過言ではありません。そんな状況の中、企業の対策状況はどうなっているのでしょうか。
企業規模別に見ると、大企業では「対策をしている」30%、「今後、対策する予定」32%で、両方を合わせた “対策・対策予定派” は6割を超えます[図表5]。中堅企業では「対策をしている」は12%にとどまり、「今後、対策する予定」15%と合わせても大企業の半分にもなりません。中小企業では「対策をしている」は10%と最も少ないものの、「今後、対策する予定」は24%であり、“対策・対策予定派” は中堅企業を上回っています。
中堅企業と中小企業では、どちらも「様子を見ている」が最も多く、それぞれ58%、48%となっています。生成AIを活用して作成されたエントリーシートをどう扱うのか、あるいはそもそもエントリーシートを継続するのかを含めた対策に向けた議論は、これから本番を迎えることになりそうです。
[図表5]学生がエントリーシート作成にAI活用していることへの対策状況

“対策・対策予定派” の企業を対象に、その対策内容(予定を含む)を複数回答で聞いた結果が[図表6]です。
最も多かったのは「面接でエントリーシート内容を深掘り確認する」(60%)で、僅差で「エントリーシートだけで評価を決めないようにする」(59%)が続き、「面接・グループディスカッションなど対面評価を重視する」(51%)までが半数を超えています。「面接でエントリーシート内容を深掘り確認する」方法であれば、エントリーシートの内容の大半が生成AIによる成果物なのか、いったん自身で作成した内容の添削を生成AIに委ねただけなのかの見極めは容易にできそうです。2位の「エントリーシートだけで評価を決めないようにする」は、面接で会うまでもないと容易に判断できるほど見るべきところのない(中身のない)エントリーシートは別として、従来の書類選考としての役割は十分に果たせないことにつながり、結果的には一次面接に呼ぶ応募者は増やさざるを得なくなるでしょう。
なお、「動画選考・録画選考を活用する」(20%)は、割合としては高くないですが、2017年にいち早くAIによるエントリーシート判定を導入したソフトバンクが、2025年からエントリーシート自体を廃止し、神戸大学などと共同開発した独自のAIシステム解析による動画選考を導入した例がこれに当たります。学生に動画を提出させることで、従来のエントリーシートによるテキストデータでは測れなかったパーソナリティーや熱意、コミュニケーション能力などをより直接的に評価できるようになったといいます。
「エントリーシートの設問内容を見直す」や「AIでは回答しづらい設問を増やす」など、エントリーシートの設問を見直す動きもありますが、これらは結局のところテキスト情報であることに変わりはありません。対面か動画かを問わず、ソフトバンクの例のように、パーソナリティーや熱意、コミュニケーション能力などを測るには、最終的にはやはり「面接重視」に行きつくことになりそうです。
[図表6]学生がエントリーシート作成にAI活用していることへの対策内容(複数回答)

高い生産性より、自分で考える力や人間同士の対話を重視
就職活動で学生がAIを活用することについて、前述のように企業は選考方法の見直しを迫られるなどの苦労はあるものの、今後はビジネスにおいてもAI活用はますます進展することは明白であり、AIを活用できる能力は社会人として評価されるべきものという側面もあります。それを踏まえ、学生の就職活動へのAI活用に対する企業の考え方を改めて聞いてみました。
その結果を企業規模別に見ると、「積極的に活用してほしい」という非常に肯定的な意見は、どの企業規模でも5~7%にとどまりました[図表7]。ただし、「AIを活用できることも重要な能力である」は大企業では33%で最も多く、中堅企業(24%)と中小企業(17%)でも2番目に多くなっています。また、「使用自体は問題ない」も大企業では25%で2位、中堅企業(29%)と中小企業(39%)ではともに最多となるなど、これらの3項目を合わせた “肯定派” はいずれの企業規模でも6割程度を占めています。企業の考え方としては、AIを活用する技術は入社後もビジネスにおいて有益な能力・スキルであり、就職活動でのAIの活用には肯定的な見方が大半となっています。
ただ、「一定の制限は必要」とするやや慎重な意見は、中小企業では7%と少ない一方、大企業と中堅企業ではそれぞれ23%、21%と2割程度見られます。
[図表7]学生の就職活動へのAI活用に対する企業の考え方

最後に、ビジネスにおいてもAI活用が急速に進む中で、今後、若手社員の育成方針をどうしていく予定なのかを聞いてみました[図表8]。新入社員教育や内定者教育にも関係してくることですので、参考にしてください。
企業規模別に見ると、大企業で最も多かったのは「AIを活用しつつ、自分で考える力や個性も重視して育成したい」で、45%に達しています。中堅企業でも最多ながら、34%と大企業より10ポイント以上低くなっています。代わりに、大企業では14%だった「AIに頼りすぎず、人間同士の対話や経験を重視して育成したい」が24%と、大企業比で10ポイント高くなっています。一方、中小企業では、「AIに頼りすぎず、人間同士の対話や経験を重視して育成したい」が最多で、中堅企業よりも5ポイント高い29%となっています。「AIを活用しつつ、自分で考える力や個性も重視して育成したい」も27%と比較的高いものの、他の規模よりは低い割合となっています。
「AIを活用しつつ、自分で考える力や個性も重視して育成したい」と考える企業は規模が大きいほど多く、逆に「AIに頼りすぎず、人間同士の対話や経験を重視して育成したい」と考える企業は規模が小さいほど多くなっています。AIを活用しすぎるとそれに頼ってしまい自分で考えなくなるといわれる中、「自分で考える力や個性」を重視したいと考える大企業、AIとの対話ではなく「人間同士の対話や経験」を重視したいと考える中小企業という構図になっていることがうかがえます。
また、「AIを積極活用し、高い生産性を発揮できる人材を育成したい」と考える企業は、いずれの企業規模でも10~14%と少数派のようです。
[図表8]AI活用を考慮した今後の若手社員の育成方針

次回は、HR総研が「就活会議」と共催する「2027年卒 採用川柳・短歌」と「2027年卒 就活川柳・短歌」の入選作品をお届けします。
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寺澤康介 てらざわ こうすけ ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長 1986年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。2007年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。 著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。 https://www.hrpro.co.jp/ |
