2026年06月18日掲載

就業規則のモデル条文 ~定め方・見直し方 - 第8回 労働時間・休憩・休日・休暇①

寺前総合法律事務所 パートナー弁護士
岡崎教行

 第8・9回は、就業規則における、労働時間・休憩・休日・休暇に関する条文について検討していきます。今回は、まず基本となる労働時間と休憩時間、そして1カ月単位の変形労働時間制を取り上げます。

労働時間

 労働時間については、労働基準法(以下、労基法)32条が以下のとおり定めています。

(労働時間)
第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。

2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

 労基法上は、原則として1週40時間、1日8時間以内のみ労働させることを認めています。同法は、労働時間の規制については1週間単位の規制を基本としていることから、第1項にその原則を定め、第2項では、それを各日に割り振り、1日の労働時間を定めています。ここでいう「1週間」とは、日曜日から土曜日の暦週のことをいいますが、就業規則でそれを変更することができます。また、「1日」とは、午前0時から午後12時までの暦日のことをいいます。この1週40時間、1日8時間のことを「法定労働時間」といい、法定労働時間の範囲内で使用者が決める労働時間のことを「所定労働時間」といいます。
 次に、就業規則に所定労働時間をどう定めるかを検討します。就業規則では、1日の「始業及び終業の時刻」を定めなければなりません(労基法89条1号)。この点に関して、まれに以下のような規定例を見ることがあります。

[具体例1]

(所定労働時間)
第●条 1日の労働時間は8時間とする。

 この場合、始業・終業時刻の定めがありません。したがって、労基法89条1号違反となり、不適法となります。当職は、所定労働時間について次のような規定例をお勧めしています。

[具体例2]

(所定労働時間)
第●条 所定労働時間は、次のとおりとする。
 始業時刻 午前9時
 終業時刻 午後6時

 実際の業務では、会社の業務上の都合によって、始業・終業時刻を繰り上げたり、繰り下げたりする必要が生じる場合があります。会社の一方的な命令で、始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げを行うためには、就業規則の定めが必要です。就業規則に定めがない場合には、これを一方的に行うことはできず、従業員の同意が必要となります。そのため、次のように定めることを推奨しています。

[具体例2の追記案]

(所定労働時間)
第●条 所定労働時間は、次のとおりとする。
 始業時刻 午前9時
 終業時刻 午後6時

2 業務の都合、その他やむを得ない事情により、会社は、始業・終業時刻を繰り上げ、または繰り下げることがある。この場合、前日までに会社は従業員に通知する。

休憩時間

 休憩時間については、労基法34条で以下のとおり定めています。

(休憩)
第34条 使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

2 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りではない。

3 使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

 条文に書かれているとおり、休憩時間は、労働時間の途中で与えなければなりません。したがって、例えば所定労働時間7時間30分で休憩時間45分の場合、残業して実働8時間を超える際には追加で15分の休憩を労働時間の途中で与えなければなりません。なお、休憩時間は、分割して与えることも可能です。
 また、休憩時間は一斉に与えなければならず、それとは別の取り扱い(交替制など)をするためには、労使協定の締結が必要となります(なお、運輸交通業、商業、金融・保険業、映画・演劇業、郵便・電気通信業、保健衛生業、接客娯楽業および官公署の事業の労働者については、労使協定を結ぶことなく一斉に休憩を与えなくてもよいとされています)。
 次に、就業規則に休憩時間をどのように定めるのかを検討します。就業規則では、1日の「休憩時間」を定めなければならないとされています(労基法89条1号)。多くの会社では、「正午から午後1時まで」「午前11時30分から午後0時30分まで」のように、休憩する時刻(以下、休憩時刻)が特定されていると思います。もっとも、業種や業態によっては休憩時刻を特定できない会社もあるでしょう。このような場合、休憩時刻を就業規則に定めなければならないのかという問題があります。同条同号では、労働時間については「始業及び終業の時刻」を記載すべきとしていますが、休憩については単に「休憩時間」(休憩時刻となっていない)としていますので、休憩時刻を就業規則で特定しなくてもよいと解されます。
 ただ、休憩時間の長さ、休憩時間の与え方は就業規則に定める必要があると行政当局は考えていることから(厚生労働省労働基準局編『令和3年版 労働基準法・下』労働法コンメンタール③[労務行政]1004ページ)、休憩時間の長さ(例えば1時間など)、休憩時間の与え方(一斉に与えるか、交替で与えるか等)は記載しておいたほうが無難でしょう。
 また、上記のとおり、多くの会社では就業規則で休憩時刻が特定されていますが、その場合は特定された休憩時刻が労働契約の内容となっています。したがって、会社が一方的な命令として休憩時刻を変更できるための根拠規定として、休憩時刻の繰り上げ・繰り下げの定めを置いておく必要があります。規定がない場合には、これを一方的に行うことができず、従業員の同意が必要となります。
 なお、就業規則に休憩時刻を特定していない企業の場合には、その都度定めることになりますが、一度定めた休憩時刻を変更する際にはやはり根拠規定が必要なので、繰り上げ・繰り下げの定めを置いておく必要があります。
 以上より、当職が推奨しているのは次の規定例です。

[具体例3]

<休憩時刻を特定する場合>
(休憩時間)
第●条 休憩時間は正午から午後1時とする。

2 休憩時間は一斉に付与する。ただし、労使協定に定めるところにより交替制とすることがある。

3 業務の都合、その他やむを得ない事情により、会社は、休憩時間を繰り上げ、または繰り下げることがある。

<休憩時刻を特定しない場合>
(休憩時間)
第●条 休憩時間は1時間とし、労働時間の中途に与える。

2 休憩時間は一斉に付与する。ただし、労使協定に定めるところにより交替制とすることがある。

3 業務の都合、その他やむを得ない事情により、会社は、指定した休憩時間を繰り上げ、または繰り下げることがある。

1カ月単位の変形労働時間制

[1]変形労働時間とは

 変形労働時間制には、1カ月単位、1年単位、1週間単位のものがあります。ここでは、最近、複数の裁判例で世をにぎわせている1カ月単位の変形労働時間制について取り上げます。
 変形労働時間制は、一定期間を単位として、その期間内の所定労働時間を平均して法定労働時間以内であることを条件に、1日および1週の法定労働時間を超える労働を認める制度です。そのため、1カ月単位の変形労働時間制の場合、1カ月の所定労働時間を平均して法定労働時間以内であれば、1日8時間、1週40時間を超えること(例えば1日10時間や1週45時間など)ができます。

[2]1カ月単位の変形労働時間制が認められるための要件

 1カ月単位の変形労働時間制については、労基法32条の2および労基法施行規則12条の2に記載があります。

<労基法32条の2>
 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が前条第1項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる。

2 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

<労基法施行規則12条の2>
 使用者は、法第32条の2から第32条の4までの規定により労働者に労働させる場合には、就業規則その他これに準ずるもの又は書面による協定(労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む。)において、法第32条の2から第32条の4までにおいて規定する期間の起算日を明らかにするものとする。

 これらの条文を踏まえて、1カ月単位の変形労働時間制が認められるための要件を見ていきます。東京地裁労働部の裁判官らが執筆した『類型別 労働関係訴訟の実務〔改訂版〕Ⅰ』(佐々木宗啓ほか編著、青林書院)では、「1か月単位の変形労働時間制の適用が認められるためには、過半数代表との書面による協定(労使協定)、就業規則又は就業規則に準ずるもの(ただし、就業規則作成義務のある常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合には、就業規則に定めることを要する。昭22.9.13発基17号)において、変形労働時間制の実施を定め、その中で、①労働時間の総枠の定め、②変形期間における労働時間の特定、③変形期間の起算日を明示することが求められる(労使協定や就業規則等の労働基準監督署長への届出は効力要件ではないと解される。)」(下線は当職によるもの)とされています。
 したがって、就業規則では、
❶変形労働時間制の実施の定め
❷労働時間の総枠の定め
❸変形期間における労働時間の特定
❹変形期間の起算日
——を明示する必要があります。

[3]規定例の検討

 ここで話が分かりにくくなるので、いったん当職が勧めている規定例を示します。実務上、月間シフトで運用するケースが多いので、それを前提としています。

[具体例4]

(1カ月単位の変形労働時間制)
第●条 ●部に所属する従業員の労働時間は、毎月1日を起算日とする1カ月単位の変形労働時間制とし、1カ月を平均して1週間40時間以内とする。

2 各勤務シフトにおける各日の始業時刻と終業時刻および休憩時間は以下のとおりとする。

シフト名 始業時刻 終業時刻 休憩時間
Aシフト 8:00 17:00 11:30〜12:30
Bシフト 9:30 18:30 12:30〜13:30
Cシフト 11:00 20:00 13:00〜14:00

3 各従業員の勤務シフトと休日の割り振りは、グループごとに毎起算日の1週間前までに決定して月間勤務シフト表を従業員に示す。なお、シフトの組み合わせについては、原則として以下の順番とする。
A→C→B
B→A→C
C→B→A

 まず第1項で、変形労働時間制を実施することの定めを記載しています(❶変形労働時間制の実施の定め)。また、「1カ月を平均して1週間40時間以内とする」と記載することで、労働時間の総枠を定めています(❷労働時間の総枠の定め)。
 実務上よくあるのは、就業規則にこのように書いているにもかかわらず、実際にシフトを策定するときに、労働時間の総枠を超えたシフトを作ってしまうことです。これだけで変形労働時間制が無効となってしまう点には留意してください。
 労働時間の総枠は、「1週間の法定労働時間×変形期間の暦日数÷7日」で算出しますので、以下の時間数になります。

1カ月の暦日数 労働時間の総枠
31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160.0時間

 次に、第2項と第3項で、変形期間における労働時間の特定について記載をしています(❸変形期間における労働時間の特定)。この点、日本マクドナルド事件(名古屋地裁 令4.10.26判決)は、「1か月単位の変形労働時間制が有効であるためには、①就業規則その他これに準ずるものにより、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、②就業規則において定める場合には労働基準法89条により各日の労働時間の長さだけではなく、始業及び終業時刻も定める必要があり、③業務の実態から月ごとに勤務割を作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業終業時刻、各直勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法等を定めておき、各日の勤務割は、それに従って、変形期間の開始前までに具体的に特定することで足りるとされている(労働基準法32条の2第1項、労働基準局長通達昭和63年1月1日基発第1号、同年3月14日基発第150号)」と判示しています。
 [具体例4]の第2項では、すべてのシフトの始業・終業時刻と休憩時間を記載しています。これまで、一部では代表的なシフト例を掲載すればよいと言われてきたようですが、それは誤りであり、すべてのシフトを漏れなく記載する必要があります。前掲日本マクドナルド事件判決は、「被告は就業規則において各勤務シフトにおける各日の始業時刻、終業時刻及び休憩時間について『原則として』4つの勤務シフトの組合せを規定しているが、かかる定めは就業規則で定めていない勤務シフトによる労働を認める余地を残すものである。そして、現に原告が勤務していたA店においては店舗独自の勤務シフトを使って勤務割が作成されている(中略)ことに照らすと、被告が就業規則により各日、各週の労働時間を具体的に特定したものとはいえず、同法32条の2の『特定された週』又は『特定された日』の要件を充足するものではない」と判示しています。
 実務上よくあるのは、就業規則に記載されたシフトとは違うシフトを作って運用しているケースですが、これも変形労働時間制の適用が否定されることになります。
 [具体例4]の第3項では、日本マクドナルド事件判決が判示している「各直勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法」を記載しています。
 実務上、最も難しいのが、「各直勤務の組合せの考え方」かと思います。上記の例では、各シフトの組み合わせを並べていますが、実際の現場では、必ずしもこうはいかないと思います。どういう記載があれば、「各直勤務の組合せの考え方」として認められるのか、明確に判示したものがないため、正直なところブラックボックスな状態ですが、考え得る組み合わせを記載しておきましょう。
 最後に、第1項で「毎月1日を起算日とする」と記載することで、変形期間の起算日を明示しています(❹変形期間の起算日)。

※本稿は個人的見解であり、スタンスの問題による点が含まれることに留意してください。

プロフィール写真 岡崎教行 おかざき のりゆき
寺前総合法律事務所 パートナー弁護士

2000年法政大学法学部卒業、2001年司法試験合格、2002年法政大学大学院卒業、2003年弁護士登録。第一東京弁護士会所属。経営法曹会議幹事。2015年中小企業診断士試験合格。専門は人事労務を中心とした企業法務。主な著書に『使用者側弁護士からみた 標準 中小企業のモデル就業規則策定マニュアル』(日本法令)。