2026年04月23日掲載

就業規則のモデル条文 ~定め方・見直し方 - 第4回 人事施策関連③(休職、復職)

寺前総合法律事務所 パートナー弁護士
岡崎教行

 今回は、就業規則において、休職と復職に関する条文をどのように定めるかについて検討します。

休職制度(私傷病休職)

[1]就業規則における休職制度策定に当たっての基本的な考え方

 休職とは、ある従業員について労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し、労働契約関係そのものを維持させながら、労務への従事を免除または禁止することをいいます。休職は、労働基準法(以下、労基法)89条が定める就業規則の絶対的必要記載事項ではありませんので、会社が休職制度を設けるかどうかは任意です。ただし、休職制度を設ける場合には、従業員の権利義務に関わる事項ですので、就業規則に定める必要があります(相対的必要記載事項)。
 労働契約は、労働者が労務を提供し、それに対して使用者が賃金を支払うという契約ですので、従業員が労務を提供できないことになれば、契約解消(解雇)になるのが原則です。しかし、休職制度は、従業員が一時的に労務を提供できない場合であっても、人材を社内にとどめて復職後も活用しようという “解雇の猶予措置” である点に主眼を置いているので、長期雇用を前提とした制度になります。
 したがって、休職制度はいわゆる正社員のみを適用対象とすべきであり、有期雇用者は適用対象から除外するべきであるというのが当職の考えです(厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」では、あたかも有期雇用者に対しても休職制度を認めなければならないという趣旨の記載がありますが、個人的には賛成できません)。

[2]休職の種類

 休職には、私傷病休職(業務外の傷病を理由に一定期間欠勤を続ける場合の休職)、起訴休職(刑事事件に関して起訴された場合の休職)、留学休職(社費留学制度等により海外留学する場合の休職)、組合専従休職(労働組合の業務に専従する場合の休職)、公務就任休職(議員等の公務に就任した場合の休職)、出向休職(他社に出向する場合の休職)等の種類があります。
 このうち、当職は、起訴休職を定めることには消極的です。その理由の一つ目は、就業規則に定めたからといって、起訴休職がすべて有効とされるわけではなく(学説や裁判例の見解は一致して、従業員が起訴されたことのみをもって起訴休職にはできないとしています)、無効とされた場合には休職期間中の賃金全額を支払わなければならない可能性が高くなるからです。二つ目は、起訴休職の定めは、起訴の結果を待って有罪であれば懲戒処分の対象とすることが想定されているものであり、これは逆に言えば、有罪となるまでは懲戒処分を猶予する意味を持ち、判決確定前に懲戒処分をすることができないと解されるおそれがあるためです。
 また、組合専従休職については、一定規模の労働組合が社内にある場合には就業規則に定めることもあるでしょうが、そうではない会社にはそもそも必要のない制度です。もし就業規則上に規定があるようなケースだと、新たに労働組合が結成され、労働組合から組合専従休職を求められた場合に、労使交渉上、当該就業規則の定めを理由として、「会社が組合専従休職を予定しているのだから認めるべきだ」と主張されるおそれがあります。したがって、社内に労働組合がない、あるいは労働組合があるものの組織率が高くない会社において、組合専従休職を定める必要はないと考えます。
 結論としては、以下のように私傷病休職、公務就任休職、出向休職を定めておき、それに加えて、会社が必要と認めたときに休職を命じることができる形を整えておくのをお勧めしています。

[具体例1]

(休職)

第●条 会社は、従業員(試用期間中の者は除く)が、次の各号の一に該当するときは休職を命ずる。

① 業務外の疾病により欠勤が連続して、●カ月(欠勤中の休日を含む)に達し、引き続き療養を要するとき

② 公務に就任し、会社業務に専任できないとき

③ 出向を命じられたとき

④ 前各号のほか、会社が特に必要と認めたとき

 なお、「試用期間中の者」は、正社員としての適格性判定期間中ですので、適用対象から除外すべきでしょう。近時、入社して早々、試用期間中であるにもかかわらず、病気で長期間休むという事例が散見され、多くの会社が頭を悩ませていますが、試用期間中にも休職を適用するとなると、休職が解雇の猶予措置であることから、その間は解雇(本採用拒否)ができないのではないかという議論を巻き起こしてしまいます。

[3]私傷病休職の適用条項

 私傷病休職を適用する際の条項として実務的に見かけるのは、主に次の3種類です。

❶ 業務外の疾病により欠勤が連続して、●カ月(欠勤中の休暇、休日を含む)に達し、引き続き療養を要するとき

❷ 精神または身体上の疾患により、完全な労務提供ができないとき

❸ 業務外の疾病による欠勤が6カ月以内に通算30日に達したとき

 いろいろと賛否はあると思いますが、当職は、分かりやすさという観点から、❶を基本として定めています。そして、❶の定めをするときには、出勤と欠勤を繰り返す “断続的な欠勤” が実務上ありますので、そのような場合にも休職を命じることができるよう、以下のとおり欠勤の通算規定をセットで定めるとよいでしょう。

[具体例2]

(休職)

第●条 会社は、従業員(試用期間中の者は除く)が、次の各号の一に該当するときは休職を命ずる。

① 業務外の疾病により欠勤が連続して、●カ月(欠勤中の休暇、休日を含む)に達し、引き続き療養を要するとき

(中略)

2 前項1号の欠勤は、欠勤の中断期間が1カ月未満の場合は、前後の欠勤を通算し、連続しているものとして扱う。

 実務上、上述の❶と❷を一緒に定めている例も散見されます。例えば、以下のとおりです。

[具体例2の別案]

(休職)

第●条 会社は、従業員(試用期間中の者は除く)が、次の各号の一に該当するときは休職を命ずる。

① 業務外の疾病により欠勤が連続して、●カ月(欠勤中の休暇、休日を含む)に達し、引き続き療養を要するとき

② 精神または身体上の疾患により、完全な労務提供ができないとき

(中略)

2 前項1号の欠勤は、欠勤の中断期間が1カ月未満の場合は、前後の欠勤を通算し、連続しているものとして扱う。

 このケースでは、例えば精神疾患で1カ月の休務を要するという診断書が提出された場合、②の規定に基づけばすぐさま休職を命令することができますが、①に基づくと一定期間の欠勤後に休職を命令することになり、労働者にとっては①のほうが身分保護が手厚くなります。また、精神疾患であっても①を適用することもできるので、果たして①と②のどちらを適用すればよいのか分からないという事態になり、運用上、混乱を来す可能性があります。休職期間満了による自然退職が争われる事案で①を適用すれば、休職期間満了は令和8年6月30日であったのに、会社が②を適用したために同年5月31日とされる——というケースも出てきます。同年6月30日には病気は治癒していたのだから、①であれば復職できたという場合に、①と②のどちらを適用すべきであったのかが問われる可能性があります。そのため、当職は、このような併記型は推奨していません。

[4]私傷病休職の期間と賃金

 私傷病休職の期間については、特段の基準はありません。各社各様であり、勤続年数に従わず、一律の期間で定める会社もあれば、勤続年数によって期間を変える会社もあります。場合によっては休職期間を延長することもありますので、その旨も定めておくとよいでしょう。また、休職期間中は、賃金を支払わないのが一般的ですが、その旨も定めておく必要があります。それらを盛り込んだものが以下の規定例です。

[具体例3]

(休職期間)

第●条 前条による休職期間は、次のとおりとする。

① 前条第1号の事由によるもの

勤続満1年未満の者 3カ月
勤続満1年以上5年未満の者 6カ月
勤続満5年以上の者 12カ月

② 前条第2号から第4号の事由によるもの
会社が必要と認めた期間

2 会社が特に必要と認めた場合は、前項の期間を延長することがある。

(休職期間中の取り扱い)

第●条 休職期間中は原則として無給とする。ただし、第●条第1項第3号(注:出向による休職。以下も同じ)の場合はこの限りでない。

2 休職期間は原則として勤続年数に算入しない。ただし、第●条第1項第3号の場合はこの限りでない。

 なお、私傷病休職期間に賃金を支払う場合の規定例は、以下のとおりです。給与を支給する場合には、どの休職の場合に、どれだけの期間、いくら支払うのかをしっかりと明記しておく必要があります。また、役職手当等、他の手当を支給している場合には、休職中はどう取り扱うべきなのかも明確にしておきます。以下の規定例では、基本給の一定割合しか支払わないということを念頭に置いています。

[具体例4]

(休職期間中の取り扱い)
第●条 休職期間中は、以下の基準で賃金を支払う。

① 休職開始日から3カ月間 基本給の80%
② 休職開始4カ月目から休職期間満了日まで 基本給の50%

2 休職期間は原則として勤続年数に算入しない。ただし、第●条第1項第3号(注:出向による休職)の場合はこの限りでない。

復職、休職期間の通算

[1]復職の手続き

 復職で一番問題となるのが、私傷病休職からの復職です。その場合の手続きについて、明確に定めておく必要があります。基本的には、「会社所定の復職願を提出させる」というケースがほとんどですが、私傷病休職の場合には、休職事由が消滅したかどうかの判断材料として、医師の診断書も提出させるのが一般的です。なお、細かいところではありますが、医師の診断書の費用を従業員が負担するのか、会社が負担するのかについても問題となるので、明記しておくとよいでしょう。
 また、復職判断に当たっては、医師からの診断書を踏まえつつ、会社として産業医もしくは指定医の受診を命令し、その診断結果も踏まえて対応する必要があります。しかし、命令の根拠となる規定がないケースがしばしば見られますので、これも盛り込んでおきましょう。

[2]休職期間の通算

 ひと昔前の私傷病休職は、骨折等の身体的なけがによるものが多かったため、再発することがほとんどありませんでした。しかし、今日の私傷病休職の多くがうつ病や適応障害等の精神疾患を理由とするものであり、かなりの確率で再発するというのが、実務において実感するところです。休職期間の通算は、主に精神疾患を想定したものであり、仮に通算規定がなかった場合には、精神疾患に罹患(りかん)して休職した後、復職と休職を延々と繰り返してしまう事態にもなりかねません。
 そのため、私傷病休職については、通算規定を設けることで、再発による休職と復職の繰り返しに歯止めをかけることが一般的です。復職からどの程度経過するまでを通算するための対象期間とするかは会社によってさまざまですが、実務の経験上としては、6カ月程度が一つの目安ではないかと思います。
 以上の点を踏まえて、当職が推奨するのが以下のものです。

[具体例5]

(復職)

第●条 休職期間満了までに休職事由が消滅したときは、従業員は速やかにその旨を会社に通知し、復職願を提出しなければならない。ただし、第●条第1項第3号(注:出向による休職)の場合はこの限りではない。また、休職の事由が私傷病による場合には、医師の診断書(費用は従業員負担)を復職願に添付しなければならない。この場合、会社が必要と認めたときは、会社の指定する医師による診察を命じることがある。

2 会社は、休職期間満了時までに休職事由が消滅したものと認めた場合には、原則として原職に復職させる。ただし、必要に応じて、原職と異なる職務に配置することがある。

3 休職を命じられた者が、休職期間満了よりも前に復職した場合、復職後6カ月を経ないで再び当該休職事由と同一ないし類似の事由により欠勤したときは、直ちに休職を命じる。この場合、休職期間は復職前の休職期間と通算する。

 休職期間満了の直前(例えば数日前)に復職し、通算期間(上述の規定例でいえば6カ月)以内に再度同一の傷病で欠勤した場合には、休職が発令され、その数日後に休職期間満了で自然退職となるというのが論理的な帰結となります。この考え方について、解雇に関する労基法20条(解雇予告制度)および労働契約法16条(解雇の合理的理由)に反するのではないかという問題意識があります。近時ではこれを受け、通算規定適用の結果、残りの休職期間が短くなった場合には、自然退職ではなく、普通解雇とするための規定を設けるのがよいのではないかとの意見も出てきています。例えば、以下のような規定例です。

[具体例5の変更案]

(復職)

第●条 (第1~3項は[具体例5]と同じ)

4 前項の適用の結果、再休職から休職期間満了日までの期間が30日に満たない場合は、第●条(注:自然退職の条項)は適用せず、第●条●号(注:普通解雇事由の心身の健康状態が勤務に耐えない等の条項。以下も同じ)の定めによる。

5 休職を命じられた者が、休職期間満了日をもって復職した場合、復職後6カ月を経ないで再び当該休職事由と同一ないし類似の事由により欠勤したときは、休職は命じず、第●条●号の定めによる。

 第4項で、休職期間満了の30日前よりも後に復職した場合のことを定め、第5項で、休職期間満了日に復職し、残りの休職期間がない場合のことを定めています。この場合のメリットは、解雇権の行使とその時期について、会社側がイニシアチブを取れるという点です。休職期間満了による自然退職だと、当該規定に従って運用せざるを得ず、柔軟な対応を取ることができません。
 とても魅力的な規定であるとは思うのですが、当職としては、通算規定に基づき即時に休職期間満了による自然退職とした取り扱いを有効とした近時の裁判例(フィデリティ証券事件 東京地裁 令6.12.10判決 労経速2584号8ページ)を踏まえ、現時点では従前のとおりの規定を推奨しています。今後の裁判例の動向によっては、上記のような規定に変えることもあり得るかと思います。

[3]休職の利用回数

 上記のとおり、うつ病や適応障害等の精神疾患の場合、治癒したとしても再発することが多いという実態から、休職と復職を繰り返す例が少なくありません。したがって会社としては、同一傷病を理由とする私傷病休職の利用回数について、上限を決めるか否かが問題となります。
 特に、私傷病休職期間中にも賃金を支給すると規定している会社にとっては大きな問題です。会社の風土、歴史、文化等を踏まえ、利用回数を定めるか否かを検討する必要があります。
 また、会社の中には、同一傷病による私傷病休職の利用回数を制限してはいるものの、類似の傷病であれば対象としていないケースもあります。昨今の医師の診断書には、症状は類似していても、「うつ状態」「うつ病」「適応障害」「双極性障害(そううつ病)」等のさまざまな診断名が付されていることが多く見られます(中には、単に症状名のみを挙げる場合もあります)。この場合に、同一傷病のみに利用回数を限定していると、例えば、1回目の私傷病休職の休職事由は「うつ状態」であり、2回目が「うつ病」である場合に、厳密には同一傷病とはいえないのではないかという点が議論になり、余計な争点を生み出してしまうことになります(訴訟となったときに、それをもって敗訴となってしまう可能性もあります)。したがって、同一傷病だけでなく、類似の傷病も利用回数の制限の対象として定めておく必要があるでしょう。その例が以下のものです。回数については、会社ごとに決定すればよいかと思います。

[具体例6]

(私傷病休職の利用回数)

第●条 第●条第1項第1号の事由による休職は、前条第3項の場合(注:同一ないし類似の事由による再休職)を除き、同一ないし類似の傷病について1回限りとする。

休職期間満了による退職

 休職期間満了時に当該従業員が復職できない場合、従業員身分を剥奪することになりますが、方法としては、解雇か退職しかありません。解雇の場合は、解雇手続き(解雇予告手当の支払い等)を実施しなければならないことなどから、多くの会社では退職扱いにしていると思います。当職も、退職としておいたほうが無難だと考えます。もっとも、 “再休職の場合には退職ではなく解雇とする” という定めを設ける例があることは前述しましたが、現時点で当職が推奨するものは以下のとおりです。

[具体例7]

(休職期間満了による退職)

第●条 第●条第1項第1号(注:私傷病休職)または第4号(注:その他の休職)により休職を命じられた者が休職期間満了時に復職できないときは、休職期間満了の日をもって退職とする。

※本稿は個人的見解であり、スタンスの問題による点が含まれることに留意してください。

プロフィール写真 岡崎教行 おかざき のりゆき
寺前総合法律事務所 パートナー弁護士

2000年法政大学法学部卒業、2001年司法試験合格、2002年法政大学大学院卒業、2003年弁護士登録。第一東京弁護士会所属。経営法曹会議幹事。2015年中小企業診断士試験合格。専門は人事労務を中心とした企業法務。主な著書に『使用者側弁護士からみた 標準 中小企業のモデル就業規則策定マニュアル』(日本法令)。