2025年12月11日掲載

モデル賃金・賞与実態調査:付帯調査紹介 - 第5回 夏季賞与の制度上の査定幅(2022年)

 労務行政研究所が毎年実施している「モデル賃金・賞与実態調査」では、実施年によってテーマを変えて付帯調査を実施し、「特別集計」として掲載している。本連載では、2017年以降に実施した特別集計について、6回にわたり紹介する。
 第5回となる今回は、2022年に実施した「夏季賞与の制度上の査定幅」について、結果を取り上げる。

※特別集計については、労務行政から毎年発行している『モデル賃金・年収と昇給・賞与』(こちら)で掲載しています

※第5回(2022年調査)の調査要領は、こちらをご覧ください

 「賞与は企業業績の成果配分である」という考え方の浸透とともに、各人の成果や貢献を反映させるため、多くの企業が賞与に人事考課を反映している。
 賞与制度の現状を検討する場合は、単に平均支給額を見るだけでなく、その賞与がどのように配分されたのか、査定によってどの程度の格差がつくのか、といったことにも目を向ける必要があるだろう。

留意事項

夏季賞与における査定幅の状況[図表1]

担当者クラス・課長クラスとも、「最高と最低の幅が同一」が最も多い

 まず、標準に対して最高幅と最低幅のどちらが大きいかを、各社の回答を基に分類した。
 入社5年目程度の担当者クラス、課長クラスのどちらにおいても、「最高と最低の幅が同一」が最も多い[図表1]。「②賞与支給額全体で見た幅」としては、担当者クラスで45.3%、課長クラスで42.9%となっている。「最高の幅が大きい」「最低の幅が大きい」は、20~30%台である。
 なお、「①査定分のみで見た幅」と「②賞与支給額全体で見た幅」は、いずれか一方にのみ回答いただいたケースがあるため、集計(回答)企業が同一でないことに留意いただきたい。

[図表1]夏季賞与における査定幅の状況

図表1

[注]標準を100とした場合の制度上の最高と最低の格差を比較したもの

査定幅の平均値[図表2]

賞与支給額全体で見ると、担当者クラスでは最高121~最低79、課長クラスでは同様に125~77

① 査定分のみで見た幅
 査定幅の平均値は、担当者クラスでは最高134.6~最低66.2で、標準査定(100)に対しておおむね±35となっている[図表2]
 課長クラスでは136.3~67.2で、最高の幅は担当者クラスよりもやや広がっている。
 産業別では、担当者クラス・課長クラスともに製造業のほうが査定幅は大きい。

②賞与支給額全体で見た幅
 査定幅の平均値は、担当者クラスでは最高120.7~最低78.5、同様に課長クラスでは124.9~76.8と、課長クラスのほうが査定幅は大きい[図表2]。なお、上記の「①査定分のみで見た幅」も同様、各クラスの集計(回答)企業は同一ではない点に留意いただきたい。

[図表2]夏季賞与における査定幅の平均値

図表2

[注]標準を100とした場合の最高と最低の比率を平均したもの。なお、実在者のものではなく、制度上の最高・最低格差を調べた(以下同じ)

査定幅の分布状況[図表3~4]

担当者クラスより課長クラスのほうが査定幅の大きいほうにシフト

 査定幅の分布を、「賞与支給額全体」について見ていこう。

担当者クラス
 [図表3]から最高幅の分布を見ると、「106~110」「111~115」「121~130」の3区分がいずれも19.7%と最も多い。以下「116~120」13.7%、「101~105」12.8%と続き、“106~130” で全体の7割以上を占めている。
 一方、最低幅は「90~94」が21.4%で最も多く、2割以上となっている。以下「70~79」19.7%、「85~89」17.9%、「95~99」12.0%と続き、“70~94” では全体の約7割を占めている。
 最高と最低をクロスさせて見ると、「最高106~110・最低90~94(査定幅±6~10%)」が12.8%で最も多く、次いで「111~115・85~89(±11~15%)」が12.0%、「121~130・70~79(±21~30%)」「101~105・95~99(±1~5%)」がともに10.3%である。上記以外の組み合わせはいずれも1割未満で、分布にはかなりのバラつきが見られる。

課長クラス
 最高は「121~130」が17.9%で最も多く、以下「106~110」17.0%、「111~115」16.1%、「131~140」12.5%、「116~120」11.6%と続く[図表3]。「131~140」は担当者クラスの5.1%に比べると2倍以上も多く、課長クラスは担当者クラスよりも最高の査定幅が大きい傾向にあるのがうかがえる。
 最低は「85~89」が19.6%で最も多く、以下「70~79」16.1%、「90~94」14.3%、「50~59」12.5%、「95~99」11.6%、「80~84」「60~69」がともに10.7%となっており、1割を上回る区分が担当者クラスより多く、バラつきが見られる。
 最高と最低のクロスでは、「最高111~115・最低85~89(査定幅±11~15%)」が11.6%で最も多い。
 最高幅の分布状況を示した[図表4]からも、担当者クラスに比べて課長クラスのほうが、分布は査定幅の大きいほうにシフトしていることが分かる。

[図表3]夏季賞与における査定幅の最高・最低の分布状況(賞与支給額全体で見た幅)

図表3

[注]標準を100として、最高と最低の査定幅の分布を示したもの

[図表4]夏季賞与における査定幅(最高幅)の分布状況(標準100に対する最高幅について)

図表4

[注]賞与支給額全体で見た幅を示したもの

査定幅の広がりごとの分布状況[図表5]

±20%までの分布は、担当者クラスで56.4%、課長クラスで46.4%

 次に、査定幅の広がりごとに分布状況を見た[図表5]
 担当者クラスの場合、査定幅が±10%の範囲内に27.4%が分布(この中には、最高と最低の査定幅が異なるケースも含む、以下同じ)。±15%以内では45.3%、±20%以内になると56.4%と半数以上となっている。
 課長クラスになると、±10%以内が21.4%、±20%以内が46.4%で、査定幅はさらに大きいほうへシフトしている。
 以上からも、役職の高いほうで賞与の査定幅が大きいことが分かる。

[図表5]査定幅の広がりごとの分布状況(賞与支給額全体で見た幅)

図表5

[注]分布には、最高と最低の査定幅が異なるものも含む

査定幅による金額差の試算[図表6]

標準に対し、担当者クラスでは±13万円前後、課長クラスでは±30万円前後の金額差

 これまで夏季賞与の制度上の査定幅を指数化して見てきたが、[図表6]では実際にどの程度の金額差がつくのか、賞与の平均値を基に試算した。「標準」の金額は、『2023年版 モデル賃金・年収と昇給・賞与』にて集計した金額(担当者クラスは大学卒・総合職27歳の夏季賞与、課長クラスは役職別集計における課長の夏季賞与)を引用した。平均値と「標準」は厳密には異なるものだが、査定幅による金額差を知るための試算値として捉えていただきたい。
 担当者クラスの場合、標準62万400円に対して最高は74万8800円、最低は48万7000円となり、±13万円前後の金額差が見られた。最高と最低では、約26万円の差である。
 課長クラスの場合は、標準123万8900円に対して最高154万7400円、最低95万1500円で、±30万円前後の金額差であり、最高と最低では、60万円程度の差になる。

[図表6]査定幅による金額差の試算(賞与支給額全体で見た金額)

図表6

[注]標準金額は、『2023年版 モデル賃金・年収と昇給・賞与』で集計した金額を引用。担当者クラスは大学卒・総合職27歳の夏季賞与、課長クラスは役職別集計における課長の夏季賞与の金額である

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