労務行政研究所が毎年実施している「モデル賃金・賞与実態調査」では、実施年によってテーマを変えて付帯調査を実施し、「特別集計」として掲載している。本連載では、2017年以降に実施した特別集計について、6回にわたり紹介する。
第4回となる今回は、2021年に実施した「月例賃金、賞与に対する欠勤、遅刻・中抜け・早退による控除の実施状況」について、結果を取り上げる。
※特別集計については、労務行政から毎年発行している『モデル賃金・年収と昇給・賞与』(こちら)で掲載しています
※第4回(2021年調査)の調査要領は、こちらをご覧ください
従業員が欠勤や遅刻・中抜け・早退をした場合、就業規則(賃金規程)等で定めていれば、“ノーワーク・ノーペイの原則” に基づいて、不就労分の賃金や賞与を控除することができる。ここでは、控除の実施状況とその方法について取りまとめた。
1.欠勤、遅刻・中抜け・早退控除の実施状況
欠勤による控除の有無[図表1~2]
月例賃金、賞与とも9割台が「控除する」
従業員が欠勤した場合、月例賃金については93.4%、賞与については90.7%が「控除する」としている[図表1]。集計(回答)企業は異なるものの、当研究所が2010年に行った調査(以下、前回10年調査)では、月例賃金は84.2%、賞与は88.3%が「控除する」としており、控除する企業が月例賃金では9.2ポイント、賞与では2.4ポイント増えている。
規模別に見ると、「控除する」ケースは、月例賃金・賞与とも1000人以上と300〜999人で94〜95%程度となっている。一方、300人未満の月例賃金は92.4%と他の規模と大きな差はないが、賞与は79.6%と他の規模より10ポイント以上低くなっている。
同様に、「控除する」割合を産業別に見ると、月例賃金・賞与ともに製造業が非製造業を上回っている。また、非製造業は賞与で8割台(87.4%)とやや低くなっているのに対し、製造業では月例賃金・賞与とも9割台である。工場部門がある製造業では、勤務シフトや作業形態から、より厳しい勤怠管理が求められることが一因と推察される。
[図表1]欠勤による控除の有無

[注]賞与制度がない企業は、賞与について集計から除外した(以下同じ)
続いて、月例賃金と賞与の控除関係を見ると、“両者とも控除する” が84.0%を占めている[図表2]。以下、“月例賃金は控除し、賞与は控除しない” が9.4%、“月例賃金は控除せず、賞与は控除する” が6.6%となっている。なお、今回調査では “両者とも控除しない” ケースはなかった。
[図表2]欠勤による控除の有無(月例賃金と賞与の関係)

[注]月例賃金と賞与の両方に回答があった企業について集計したため、[図表1]とは割合が一致しない
遅刻・中抜け・早退による控除の有無[図表3~4]
「控除する」は月例賃金で約77%、賞与で約60%
遅刻・中抜け・早退をした場合に「控除する」割合を[図表3]で見ると、月例賃金で76.9%、賞与で60.1%であり、前記[図表1]で見た欠勤控除に比べると少ない。ちなみに、前回10年調査では月例賃金で66.8%、賞与で64.0%が「控除する」としており、月例賃金について控除する企業が増えている。
規模別では、規模が大きいほど「控除する」割合が高い。特に、賞与の場合、「控除する」割合は1000人以上70.5%、300人未満48.1%と20ポイント以上の開きがあり、規模間格差が顕著である。また、産業別では欠勤控除同様、製造業で「控除する」割合が高く、特に賞与で非製造業との差(37.6ポイント)が大きい。
[図表3]遅刻・中抜け・早退による控除の有無

[注]中抜けについて回答がない場合でも、遅刻・早退の両方に回答がある企業は集計に含めた([図表4〜5]も同じ)
月例賃金と賞与の控除関係を見ると、“両者とも控除する” が51.2%で過半数を占めるものの、“月例賃金は控除し、賞与は控除しない” ケースも25.6%ある[図表4]。
[図表4]遅刻・中抜け・早退による控除の有無(月例賃金と賞与の関係)

[注]月例賃金と賞与の両方に回答があった企業について集計したため、[図表3]とは割合が一致しない
控除の実施パターン[図表5]
すべてにおいて「控除する」が51.2%
欠勤や遅刻・中抜け・早退による控除が、1企業の中でどのように行われているかについて、パターン別に見たものが[図表5]である(集計は、欠勤と遅刻・中抜け・早退について、月例賃金と賞与の両方に回答があった企業について行った。ただし、中抜けについては回答がなかった企業を含む)。
最も多かったのはパターン① “月例賃金、賞与とも欠勤、遅刻・中抜け・早退控除をする” で51.2%、以下パターン② “賞与の遅刻・中抜け・早退控除はしないが、それ以外は控除する” が18.2%、パターン③ “月例賃金、賞与とも、欠勤控除はするが遅刻・中抜け・早退控除はしない” が9.4%、パターン④ “月例賃金は欠勤、遅刻・中抜け・早退控除をするが、賞与は控除をしない” が7.4%などとなっている。
[図表5]欠勤、遅刻・中抜け・早退による控除の実施パターン(集計社数203社)

[注]1.欠勤、遅刻・中抜け・早退について、月例賃金と賞与の両方に回答があった企業(中抜けについては回答がなかった企業を含む)を集計した
2.10社以上見られたパターンのみ示した
3.すべてにおいて「控除しない」とする企業はなかった
2.控除の方法
月例賃金における控除の方法[図表6]
欠勤は「日割」、遅刻・中抜け・早退は「時間」による控除が主流
次に、具体的な控除方法を見ていこう。
月例賃金における①欠勤控除の方法としては、「日割相当分を控除」80.3%が最も多く、以下に続く「一定の欠勤日数以降、日割相当分を控除」7.2%や「事由により異なる」5.3%を大きく上回っている([図表6]の上①)。
「日割相当分を控除」は、規模別では300人未満で、産業別では非製造業で特に多く見られる。
②遅刻・中抜け・早退の場合、「時間で控除」86.4%が最も多い([図表6]の下②)。以下、割合としては大きく下がるが「時間を日数に換算して控除」4.1%、「回数で控除」3.4%などとなっている。
なお、一言で「日割相当分を控除」「時間で控除」といっても、控除の対象となる賃金の範囲は多様である。また、「日割」については基準を労働日とする企業のほか、暦日とするケースもある。
[図表6]月例賃金における控除の方法

[注]1.②では遅刻・中抜け・早退のすべてに回答があった場合について集計した([図表7]も同じ)
2.①では「日割分を上回る控除」と回答した企業はなかった。また、②では遅刻・中抜け・早退で控除の方法が異なるケースはなかった([図表7]も同じ)
賞与における控除の方法[図表7~8]
欠勤は「日割」が5割台、遅刻・中抜け・早退は「回数」による控除が4割台
賞与の控除方法を見ると、①欠勤の場合、最も多いのは月例賃金同様「日割相当分を控除」であり、58.5%と半数以上を占めている([図表7]の上①)。以下、「一定の欠勤日数ごとに控除率を設定」19.1%、「事由により異なる」8.0%、「一定の欠勤日数以降、日割相当分を控除」5.3%と続く。月例賃金では「日割相当分を控除」が8割超を占めているのに比べると、賞与の控除方法にはややバラつきが見られる。
一方、②遅刻・中抜け・早退の場合は「回数で控除」(例:「遅刻・中抜け・早退3回で欠勤1日と見なす」など)43.4%が最も多く、これに「時間で控除」23.6%、「時間を日数に換算して控除」17.9%が続く([図表7]の下②)。「時間で控除」が8割台に上る月例賃金とは傾向が異なっている。
[図表7]賞与における控除の方法

[注]②の「回数で控除」の内容は、[図表8]参照
遅刻・中抜け・早退で最も多い「回数で控除」について、内容を集計したものが[図表8]である。遅刻・中抜け・早退が「3回で欠勤1日」とするところが76.9%で最も多く、これに続く「4回で欠勤1日」の7.7%を大きく上回っている。
なお、欠勤や遅刻・中抜け・早退について、“就労しなかった日数や時間相当分” を控除するのであれば、賃金の計算方法の一つとして、特に問題はないといえる。しかし、“実際の不就労時間分を超えて” 控除することになる場合は「減給の制裁」となり、労働基準法91条の規制を受けるので注意が必要である。
〈参考〉労働基準法91条(制裁規定の制限)
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。
[図表8][図表7]②賞与における遅刻・中抜け・早退による控除の方法「回数で控除」の内容

[注]1回当たりの遅刻・中抜け・早退時間により取り扱いが異なる場合(例: “60分以上は2回で欠勤1日、60分未満は3回で欠勤1日” など)は最も短い時間のケースを集計した
月例賃金を「日割」または「時間」で控除する場合の基準[図表9]
“年間の労働日数・労働時間を基準” が主流
[図表6]で見たように、月例賃金については「日割」や「時間」で控除する企業が大半である。そこで、「日割」または「時間」の基準となる労働日数や労働時間をどのように設定しているかについて尋ねた。
「②年間の労働日数・労働時間を基準に控除(月により日数・時間は変動しない)」が59.3%と約6割を占め、「①当該月の労働日数・労働時間を基準に控除(月により日数・時間は変動する)」は36.8%となっている[図表9]。
①の方法は、月ごとに労働日数や労働時間が変動するため、同じ1日の欠勤でも月によって日割控除の単価が異なり、不公平が生じることになる。一方、②の方法では、控除の単価が固定されることで、事務処理上も煩雑にならずに済むため、こちらを基準とする企業が多いものといえよう。
[図表9]月例賃金を「日割」または「時間」で控除する場合の基準

[注][図表6]で「日割」または「時間」を基に控除していると回答した企業について尋ねた
「2021年度モデル賃金・賞与実態調査」の調査要領
1.調査対象
全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3722社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上。一部「資本金5億円以上または従業員500人以上」を含む)1703社の合計5425社。
2.調査時期
2021年7月9日~9月7日
3.集計対象
1.の調査対象のうち、回答のあった234社。業種別、規模別の内訳は[参考表]のとおり。所属業種については、調査時点におけるものとした。なお、項目により集計(回答)企業は異なる(項目により回答していない企業があるため)。
[参考表]業種別、規模別集計対象会社の内訳

[注]「商業」は卸売業、小売業。「情報・通信」には、IT関係のほか新聞、出版、放送を含む。なお、上記の業種分類は東洋経済新報社『会社四季報』をベースとしている
4.算出方法
集計結果はすべて会社ごとの数値を単純平均して算出した。従業員数による加重平均は用いていない。
5.集計結果利用上の留意事項
①調査項目の一部のみ回答してあるものについても集計に含めたため、項目によって集計(回答)企業は異なっている。そのため項目間に連続性を欠き断層が見られる場合もあるので、利用に際しては数字の解釈に多少の幅を持たせるなど留意いただきたい。
②[図表]の割合は、小数第2位を四捨五入して小数第1位まで表示しているため、合計が100.0にならない場合がある。また、割合の差異を示す際は、四捨五入後の数値を基に算出した結果を示している。
③本文中で割合を引用する際には、実数に戻り割合を算出し直しているため、[図表]中の数値の足し上げと本文中の数値とは一致しないことがある。
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