2025年11月14日掲載

BOOK REVIEW - 『HR再起動 AIと人的資本の時代に、人事が担うべきこと』

藤本英樹 著
BBドライビングフォース株式会社代表取締役 
四六判/204ページ/1700円+税/日本橋出版 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ HR(人事)を取り巻く環境は、人の価値観の多様化や世代の移り変わり、そしてAIの台頭によって “地殻変動” のさなかにある。新卒一括採用や年齢に基づく昇進制度、MBO(目標管理制度)といった従来型の仕組みではこうした変化に対応しきれず、変革の必要性は一層高まっているといえる。そこで今求められているのが、人材を「リソース(資源)」ではなく「キャピタル(資本)」として捉える考え方、つまり人的資本経営である。本書では、人的資本経営の実践的意義について、企業や人事の視点からまとめ、企業の未来のために人事が果たすべき役割を説く。

■ 著者は、人的資本経営が単なる情報開示にとどまらず、何を大切にし、どんな組織を目指すのかを「ストーリーで語る」ことが重要であると指摘する。そしてHRは経営と現場、人と組織をつなぐ “翻訳者” として人的資本経営の中核を担う存在であるべきと主張する。また、人的資本経営を実践する上では、企業の理念を体現する「企業文化(カルチャー)」をいかに設計し、言語化していくかがカギとなる。このカルチャーを “編集” していくのが人事であると著者は強調する。

■ 人事が多くの時間を割いてきた定型業務は、今後AIに置き換わっていくだろう。そうしたときに人事はどのように価値を発揮するのか。著者は、AIでは代替できない「意味をつくる」「未来を設計する」ことがこれからの人事の仕事であると繰り返し述べる。人事が起点となって、組織を変えていく。著者の力強いメッセージとともに具体的な方向性を指し示した本書は、人事のあるべき姿を考える上で参考になるだろう。

HR再起動 AIと人的資本の時代に、人事が担うべきこと

内容紹介

今、私たちは「3つのリセット」を迫られています。
1つ目は「価値観のリセット」。
かつては “モノの所有” が幸福の象徴とされていましたが、今では「意味」や「体験」の重視へと大きくシフト。この変化は、組織における人材マネジメントや企業文化のあり方を、根本から問い直す契機となっています。

2つ目は「世代のリセット」。
これまでの制度や価値観は、戦後の高度経済成長期に形成されたものがベースでした。しかし、Z世代を中心とするデジタルネイティブ世代の登場により、組織に対する期待は大きく様変わりしています。彼らは「安定」や「出世」よりも、「成長実感」や「社会とのつながり」、そして「意味のある仕事」を重視します。

3つ目は「AIによるリセット」。
AIが生産性の最適化を担い、人間の定型業務を高速かつ正確に代替するようになった今、私たちに問われるのは “働く意味” そのものの再定義です。「働くこと」は単なる収入の手段から、「世界への関わり方を選択する行為」へと変わりつつあります。哲学なき人事は、AIに勝てません。必要なのは「制度」よりも「人間観」です。

働き方、キャリアのあり方、カルチャーの価値、リーダーシップの定義……すべてのアップデートは、HRから。HRが変われば、会社が、そして社会が変わります。