2025年10月24日掲載

BOOK REVIEW - 『組織内の “見えない問題” を言語化する 人事・HRフレームワーク大全』

伊達洋駆 著
株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役 
A5判/756ページ/4500円+税/すばる舎 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ “人と組織をめぐる問題” は、人事担当者に限らず、組織で働く全ての人にとって、“終わりなき問い” として立ちはだかる。こうした問題に対し、本書は、リーダーシップやモチベーション、キャリア開発などの学術的な知見に裏づけられた83のフレームワークを提示する。著者は、各フレームワークを、問題を解決する「万能のレシピ」ではなく、鋭い切れ味を持つ「思考の道具」として用いることで、複雑に絡み合った問題を整理し、解決への道筋を照らすと説いている。

■ 83のフレームワークは、「リーダーシップとマネジメント」「組織内の影響力と意思決定」など九つのChapterに分類される。各フレームワークの解説では、有効な場面と理論の要点を示し、現場で実践するためのステップや視点を提供。理解を促進するためのケーススタディーや、注意すべき点に触れた上で、現場で使うためのストレッチとして類題を設け、復習と定着を図る——という流れで構成している。総ページ数としてボリュームはあるものの、各解説は多くても10ページ程度なので、フレームワークの全体像の把握から、実務上の活用方法に至るまでスムーズに読み進められる。

■ 掲載しているフレームワークについては、「心理的エンパワーメント」「自己効力感」など、メンタル分野に関する解説が比較的多い点も特徴の一つである。人事担当者として人と組織の課題解決のために本書を活用するのはもちろん、一人の組織人として通常業務への姿勢を見つめ直すために参考とするのも有用だろう。最初から通読する、手引きとして気になった項目をチェックするなど、用途に応じて柔軟に活用したい一冊だ。

組織内の “見えない問題” を言語化する 人事・HRフレームワーク大全

内容紹介

本書は、リーダーシップ、モチベーション、キャリア開発、組織変革といった、人と組織にまつわる課題に対し、学術的な知見に裏付けられた83のフレームワークを網羅しました。それぞれの理論的背景から、現場で「使える」活用法、さらには陥りがちな注意点まで、豊富な事例と共に解説しています。

基礎編 人事・HRのフレームワークを知る
Chapter 1 リーダーシップとマネジメント
Chapter 2 組織内の影響力と意思決定
Chapter 3 モチベーションと目標設定
Chapter 4 職務設計と従業員行動
Chapter 5 組織文化と社会化
Chapter 6 キャリア開発と組織との適合性
Chapter 7 ストレス、健康、ウェルビーイング
Chapter 8 組織学習と変革
Chapter 9 個人特性と能力

応用編 人事・HRのフレームワークを使う
ケース1 繁忙期における負荷を、個人と組織の両面でケア
ケース2 老舗メーカーのDXを牽引するリーダー
ケース3 新たなマネジメントでチームが一皮むける
ケース4  経営層を動かすための多面的アプローチ
フレームワークの使い方と注意点