法政大学教授
新書判/312ページ/1060円+税/光文社新書

BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 日本企業の危機が叫ばれて久しい。ここ数十年、成果主義、ジョブ型、人的資本経営など、さまざまな変革のキーワードがメディアをにぎわせてきたが、日本企業の仕組みと日本的雇用の本質は、現時点で大きく変わっていないのではないだろうか。本書は、なぜ日本企業の仕組みが変わりにくいのか、そして、時代の変化が激しい中で必要な考え方について、組織行動論、越境学習、キャリア形成の研究者である筆者が提言するものだ。
■ 第1~5章は、キーワードとなる「三位一体の地位規範信仰」の解説が中心である。本書における三位一体の地位規範とは、「無限定性」「標準労働者」「マッチョイズム(行き過ぎた仕事至上主義)」を意味する。日本企業の仕組みはこの地位規範が前提となっているため、ジョブ型などの新しい考え方を取り入れても本質的に変化できていないことを主張しつつ、三位一体の地位規範信仰が現代に合わない理由や成立した歴史的経緯、この地位規範信仰そのものが変わりにくい理由について、幅広い観点から詳述する。
■ 第6章は「従来の処方箋の限界」と題し、“雇用の流動性促進論” や “ジョブ型雇用論” といったこれまでの変革が、なぜ三位一体の地位規範信仰を変えるまでに至らなかったのか、その限界を説く。終章となる第7章では、変革のための10の提言を行っている。そのうち、企業に対する提言としては、人事異動における本人同意原則の導入など七つを挙げている。大局的な視点から企業や人事制度の在り方を見直したい担当者にとって、示唆に富んだ内容は参考になるだろう。
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人が集まる企業は何が違うのか 人口減少時代に壊す「空気の仕組み」 内容紹介 日本企業の仕組みは、なぜ変わりにくいのか——。本書ではその理由を「三位一体の地位規範信仰」にあると分析する。三位一体の地位規範とは、無限定性(正社員総合職という働き方に代表される)、標準労働者、マッチョイズムを意味する。日本企業の仕組みと日本的雇用の在り方を変えるには、何が必要なのか。組織行動論、越境学習、キャリア形成の研究者が示す、人口減少・労働力不足の時代に必要な「10の提言」。 |
