2025年09月26日掲載

BOOK REVIEW - 『AI時代の組織の未来を創るスキル改革 リスキリング【人材戦略編】』

後藤宗明 著
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事、チーフ・リスキリング・オフィサー 
四六判/312ページ/2200円+税/日本能率協会マネジメントセンター 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 本書は、日本で初めてリスキリングに特化した非営利団体の代表を務める著者が執筆した『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング【実践編】』に続く第3弾である。完結編と位置づけており、リーダーや管理職層、企業変革を担う部署や人材育成の担当者を主な対象に、リスキリング導入に際し必要となることを示している。

■ 本書は全3章構成。第1章では、欧米の先進企業で取り組みが進むスキルベース組織(スキルを起点とした雇用システム)への変革に力点を置いて解説。自社内の人材のスキルを可視化し、リスキリングを推進することでスキルベース組織を実現できると主張する。また、それに向けた実施事項として「ジョブ・アーキテクチャーの整備」「事業戦略を実現する人材ポートフォリオの実現」など五つ挙げて要点を詳説する。第2章では、リスキリング推進の大前提となるチェンジマネジメント(組織が変化をスムーズに導入・定着させるための手法)に触れ、必要となるアクションとして、「制度」「戦略」「学習」「評価」「資格」「配置」「報酬」の各観点から提示する。

■ 紙幅を最も大きく取る第3章では、まず業務の自動化、ロンジェビティ・スキル(働く個人の労働寿命を延ばしていくスキル)の獲得に触れた後、AI時代に必要な「学際的スキル」(二つ以上の異なる分野の知識を統合し、応用する技術)について解説する。著者は、AIは単一分野の深化は得意だが、人間独自の応用レベルまで現時点で達しておらず、課題解決を図る際に他の複数の分野からの知見を総動員して解決を試みることが必要となるため、ビジネスにおいて学際的スキルが求められていると説く。リスキリング施策の効果を最大化させるための実践知や気付きを与えてくれる一冊である。

AI時代の組織の未来を創るスキル改革 リスキリング【人材戦略編】

内容紹介

リスキリングとは「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」であり、岸田元総理が所信表明で演説して以降、国や自治体、企業などで具体的なリスキリングの流れや取り組みが始まっています。

これまでは、まだ流行語的な扱いに近かったリスキリングですが、最近では本来の「企業や自治体に実施責任がある」という意味の通り、企業や自治体からの問い合わせが増えており、各種人材系企業が対応するサービスを提供し始めた状況にあります。

本書は、リスキリングシリーズ第3弾として「リスキリング」が企業や自治体に導入するにあたり必要なことを示した一冊です。これからリスキリングを実践しようとしている企業・自治体だけでなく、リスキリングに関連するサービスを提供する人や組織にも役立つ、実践的な一冊です。