BOOK REVIEW - 『人材育成の基本』

■ 人材育成は、どの企業にとっても欠かせない重要な取り組みである。しかし、一口に「人材育成」といってもテーマは多岐にわたるため、その全体像と要点を網羅的に捉える機会はあまりないのではないだろうか。本書は、研修講師・コンサルティングの仕事で7万人以上に携わってきた人材育成業界歴39年目の著者が、人材育成の考え方や取り組み方の “基本” について、豊富な経験と知見を盛り込みながら解説した一冊である。

■ 本書は全6章から成る。第1章では、企業内人材育成の大前提である「企業経営」について触れる。続く第2章では人材育成に携わる人が押さえておきたい重要な概念や考え方を紹介し、第3章では人材育成の関係者間における役割分担や協力体制のつくり方を解説する。第4～6章では、OJTとOff-JT（職場外研修）による人材育成のポイントを詳述。OJTについては、成果を出すための心掛けや、成長の可能性を高めるOJTの「6ステップ」など、要点を具体的に取り上げている。また、Off-JTに関しては「企画編」と「実施・評価編」とで章を分け、人材育成の主管部門がどのように研修と関わるべきかなど、Off-JTにより行動変容を実現するための留意点を多面的に提示する。

■ 本書の大きな特徴は、「実践で使える」ことを重視している点だ。著者がこれまで経験してきた数多くの実例を踏まえ、人材育成に取り組む上で課題になる点やつまずきやすいポイントが丁寧にカバーされている。加えて、専門用語や横文字などを極力使わない分かりやすい言葉で説明してあり、気軽に読み進めることができる。全社の人材育成に携わる人事部の担当者はもちろんのこと、現場での人材育成を直接受け持つマネジャーやリーダーも大いに活用できるだろう。