A5判/272ページ/2200円+税/経団連出版
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 2025年6月、顧客や取引先が理不尽な要求をするカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)から労働者を保護するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務づける改正労働施策総合推進法が成立した。以前よりカスハラが社会問題となっていたところ、こうした法整備を受けて、自社の社員を守るための施策を検討している人事労務担当者も多いだろう。本書は、20年以上にわたり、苦情や強硬なクレームへの対応策について企業にコンサルティングや研修を実施してきた著者が、カスハラへの適切な対応方法を解説した書籍である。
■ 本書の冒頭では「カスタマーハラスメント対応の基本的な考え方」として、カスハラの七つのパターン(長時間化、繰り返し、威圧・恐怖など)と取るべき対応等をまとめている。以降は、実際に起こり得る20のケースについて、それぞれ「望ましくない対応」と「あるべき対応」、そして、対応のポイント等を記載した「解説」を紹介していく。例えば、「レシートも現物もないが返金せよとの要求」をされたお菓子メーカーのケースでは、カスタマーの剣幕と「以前はやってくれた」という主張に押され、社内規定に反して返金してしまう例を紹介している。ほかにも、「店内での動画撮影・録画をやめない客」「チェックアウト時刻を大幅に過ぎた宿泊客」など、取り上げるケースは現実的なものばかりだ。
■ 本書の最大の特徴は、ケーススタディの内容がリアリティーに富んでいる点である。カスタマーと店員との会話例が具体的であるため、実際の現場で留意すべきポイントが分かりやすい。また、ケースごとの「解説」では、対応のポイントを複数挙げて詳しく説明しているため、顧客や取引先に対応する現場スタッフはもちろん、企業における「カスハラ研修」などでも活用できるだろう。
内容紹介 2025年6月、カスタマーハラスメントを防止するため事業主に雇用管理上必要な措置を義務付ける「改正労働施策総合推進法」が成立し、2026年中に施行されることになりました。これに先立つ2022年に厚生労働省が作成・公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、苦情やクレームを顧客との関係性ではなく従業員の観点からとらえるアプローチが明確に示されています。 顧客や取引先からの苦情や指摘には真摯に対応すべきですが、それが従業員につらい忍耐を強いたり過剰な負荷を与えたりすることにつながってはなりません。カスタマーハラスメントに適切に対応することは、従業員を守るだけでなくその誇りも守り、企業としての責任ある対応をとることで結果として顧客・取引先との健全な関係づくりにもつながります。 本書では、20年以上にわたり悪質な苦情への組織的な備えや対応する従業員のスキルアップなどを支援してきた著者が、実際に起こり得る20のケースについて「望ましくない対応」と「あるべき対応」を紹介したうえで、組織・企業としていかに従業員を守るかといった観点から対応のポイントを解説しています。 BtoC、BtoBの区別なく、顧客や取引先に対応する現場のスタッフから管理職、法務・人事担当者まであらゆる立場のビジネスパーソンにおすすめの1冊です。 |