2025年08月08日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2025年8月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介

(調査・編集:主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 HR総研では、今年も就活会議株式会社が運営する就活生向けクチコミサイト「就活会議」と共催で、2026年卒採用を実施した企業の新卒採用担当者と2026年卒の就活生を対象として、これまでの採用活動や就職活動を振り返って、それぞれの目線からの印象深いエピソードをテーマにした「2026年卒 採用川柳・短歌」と「2026年卒 就活川柳・短歌」を6~7月に募集しました。
 1995年以降、長らく企業の大卒初任給の伸びは極めて低調傾向にありましたが、2023年以降、少子高齢化や優秀な新卒学生の獲得競争の激化から、初任給の引き上げに動く企業が増えています。それも数千円程度といったレベルではなく、大企業を中心に数万円~十万円レベルでの引き上げを実施したところも少なくありません。今年の応募作品では、「初任給引き上げ」に関する作品が幾つか見られましたが、面白いことに、このテーマを取り上げているのは採用担当者だけで、就活生からの投稿には見られませんでした。「初任給引き上げ」は、当事者である学生よりも既存社員のほうにインパクトがあったようです。そのほか、「生成AIの進化」や「内定辞退」などを扱った作品が数多く見られました。
 今回は、その中から着眼点がユニークなもの、ユーモラスに表現されたものを入選作品として紹介します。ぜひご一読ください。

賃上げ、AI、採用難に揺れる人事の叫び

 まずは、採用担当者による「2026年卒 採用川柳・短歌」の入選作品から紹介します。 【最優秀賞】からです。

基本給 低いと言われて ベア検討 社内の声より 学生の声(大阪府 ポテトさん)

 今年の最優秀賞は、近年の初任給引き上げラッシュと売り手市場を象徴する作品が選ばれました。面接の場で学生から自社の給与水準についてストレートな指摘を受け、慌ててベースアップを検討するという、人事にとっては冷や汗ものの光景が目に浮かびます。これまで賃上げ交渉の主役は労働組合であり、その交渉は社内の論理や業績見通し、要員計画などに基づいて行われてきており、多くの場合、“ベアの検討などとてもできるようなものでない” と経営からスルーされてきたにもかかわらずです。
 しかし、この作品が示すのは、そのパワーバランスが大きく変化し、“外圧”、すなわち採用市場における学生の声が、経営の重要判断項目の一つである賃金改定の直接的なトリガーになっているという驚くべき現実です。長年会社に尽くしてくれている社員の声よりも、まだ見ぬ学生の声が優先されることへのやるせなさを(にじ)ませつつ、それなくしては優秀な人材を確保できないという切迫感が伝わってきます。採用担当者の悲哀と企業の生存戦略が凝縮された、まさに時代を切り取った作品と言えるのではないでしょうか。

 続いて【優秀賞】の2作品です。

積み上げた 俺の処遇を 一瞬で またぎ越えてく 爆上げ初任給(東京都 がんも3号さん)

 最優秀賞の作品と対をなすように、賃上げのもう一つの側面、すなわち “既存社員の不満” を見事に詠んだ一首です。苛烈な採用競争に勝つために、多くの企業が初任給の大幅な引き上げに踏み切っています。その結果、入社以来、長年かけて積み上げてきた、あるいはそれ以上の金額を、入社間もない新人が手にすることになるとは——。初任給の引き上げに伴い、多くの場合、既存社員の処遇も見直されることになるものの、勤続年数の浅い若手社員には手厚く、長年会社に貢献してきた中堅・ベテラン社員の給与の上げ幅はごくわずか……という現象が各地で起きています。中には、既存社員の待遇改善にまで手が回らず、初任給のみを引き上げた結果、年代間での給与の逆転現象が起きている例もあるようです。
 自らが採用した新人が、自分の長年の努力をいとも簡単に飛び越えた処遇を得る。その事実を目の当たりにしたときのやりきれなさ、虚しさ、そして会社への不信感までもが「またぎ越えてく」という強い言葉で表現されています。採用の成功の裏で、リテンションという新たな、そしてより深刻な課題が生まれていることを、われわれは認識しなくてはなりません。

語るほど 履歴書と違う その理由(わけ)は AIですと 君は言わずに(東京都 ねぎさん)

 生成AIの進化が近時の就職・採用活動に与える影響を巧みに切り取った作品です。流暢(りゅうちょう)に志望動機や自己PRを語る学生。しかし、その言葉はどこか借り物めいていて、エントリーシートに書かれた美辞麗句との間に整合性はなく、語れば語るほど埋めがたい溝は大きくなっていく。面接官は、その違和感の正体が “生成AI作だからではないか” と確信に近い疑念を抱いています。エントリーシートとの食い違いを指摘しても、”自分の中では同じだ” の一点張りで、もはやそれをさらに問いただすすべはありません。「君は言わずに」という下の句が、核心には触れられないもどかしさと、学生・採用担当者間で行われる静かな探り合い、高度な心理戦を物語っているといえます。
 生成AIが作った文章や回答そのものが否定されるのではなく、それを自分の言葉としてどう “血肉化” しているのかが重要で、その背景にある本人の思考や経験こそが面接の場で問われるべきでしょう。AIとの共存が前提となった現代における、”人間性の見極め” という採用の原点にして永遠のテーマを、われわれに突きつける一首です。

人事担当者のリアルな本音

 ここからは、【佳作】の中から6作品を抜粋して紹介します。

採用も できたらいいのに サブスクに 悩みが尽きない 人の見極め(大阪府 ナポリさん)

 必要なときに必要な人材を、お試し期間つきで月額料金で利用できたら、人事としてはどんなに楽でしょうか。「もしあの時、もう一方の学生を採用していたらどうなっていたのか」と思う人事担当者は少なくないのでは。そんな夢想が「サブスク」という今どきのフレーズで表現されています。しかし、現実はそう甘くはありません。「悩みが尽きない 人の見極め」という下の句が、採用活動の本質的な難しさを言い表しています。モノやサービスと違い、人にはスペックだけでは測れない感情やポテンシャル、組織との相性など、複雑な要素が絡み合っています。その見極めこそが人事の腕の見せどころであり、最も頭を悩ませる部分なのです。効率化への憧れと、それがかなわない現実とのギャップを嘆く、人事の切実な本音が垣間見えます。

うまくない でもなぜか好き この学生(東京都 佐藤宗次郎さん)

 面接での受け答えは決して流暢とは言えない。それどころか、朴訥(ぼくとつ)として、話す内容もさほど深いわけではない。しかし、なぜか心()かれる、応援したくなる。そんな学生との出会いを描いた一句です。コンピテンシー評価や構造化面接など、客観性・公平性を担保する採用手法が進化する一方で、最終的に人の心を動かすのは、スキルや経歴だけでは説明できない「何か」である場合が多いものです。それは、誠実な人柄であったり、熱意であったり、あるいは磨けば光るだろうポテンシャルであったりするかもしれません。データやロジックを超えたところにある、人事担当者の直感や感性こそが、組織に新たな化学反応をもたらす人材を発掘する鍵になる——。採用の原点にある人間的な営みの温かさを感じさせる作品といえます。

履歴書に 性別欄なし 時代知る(愛知県 YSKさん)

 日常業務のふとした瞬間に、時代の変化を実感する。そんな人事担当者の “あるある” を切り取った作品です。かつては当たり前だった履歴書の性別欄は、例えば厚生労働省作成の履歴書様式例でも任意欄に変更されているのをご存じでしょうか。これは、性別によるアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)をなくし、応募者の能力や適性のみで公正な選考を行うという、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方が社会に浸透するとともに、ジェンダーへの配慮が進んだ証左であります。履歴書という一枚の紙から、社会の価値観の大きなうねりを読み取る。日々多くの応募書類に目を通す人事担当者ならではの、鋭い視点が光る作品です。

採用活動の光と影

 【佳作】の紹介を続けます。

応募なし ああ応募なし 仕方なし(大阪府 昭和の應援團さん)

 古典的な句のリズムで、採用担当者の悲痛な叫びを詠んだ作品です。あらゆる策を講じて求人情報を発信しても、応募はゼロ。その現実を前に、作者は「ああ」と嘆き、ついには「仕方なし」と諦観の境地に達しています。特に中小企業や地方企業のほか、求職者から不人気とされる業界では、選考対象者の母集団形成そのものが極めて困難になっています。この句には、個社の努力だけではどうにもならない、労働市場の構造的な問題に対する深い絶望感が滲み出ています。華やかな採用成功事例の陰で、声なき悲鳴を上げる多くの企業が存在するという現実を、われわれは忘れてはなりません。

こりゃ採用! 決めた学生 ほぼ辞退(東京都 うどんさん)

 手応え十分の面接。採用チームや役員層からも高い評価を得て、満を持して内定を出した学生。しかし、その後の連絡で告げられるのは非情な内定辞退の知らせ。そんな人事担当者の天国から地獄へと急降下した心情が、軽快なリズムの中に凝縮されています。採用したいと強く思う学生ほど、他社からも同様に高い評価を受けているもの。売り手市場が続く中、学生は複数の内定を保持し、より良い条件を求めて比較検討するのが当たり前になっています。企業側の “こちらが採ってやる” という姿勢はもはや過去のもの。”当社を選んでいただく” という謙虚な気持ちで、内定後も手厚いフォローを続けなければ、学生の心はつなぎ留められません。採用の本当のゴールが内定出しから入社へとシフトした厳しさを物語っている一句です。

AIで 作文作る 学生と 褒める返信 作る人事よ(神奈川県 終わらない就職され活動で祈り続ける人さん)

 学生が生成AIでエントリーシートを書くならば、こちらもAIでその内容を褒めたたえるメールを書いて送り返す。もはやコントのような光景が目に浮かぶ、今どきの採用活動を痛烈に風刺した作品です。お互いが生成AIという仮面を(かぶ)ってコミュニケーションを取る、この奇妙な状況は、効率化の行き着く先にある空虚さを示唆しているのかもしれません。かつての血の通った対話はどこへ行ったのでしょうか。作者のペンネームも相まって、終わりの見えない「就職され活動」に疲弊する人事の姿が浮かび上がり、笑いとともに一抹の寂しさを感じさせる作品になっています。ただ、作者はIT企業勤務で、AIを否定しているわけではなく、活用できる学生は大歓迎とのことです。

[図表1]「2026年卒 採用川柳・短歌」入選作品

入選 作品(地区・雅号)
最優秀賞 基本給 低いと言われて ベア検討 社内の声より 学生の声(大阪府・ポテト)
優秀賞 積み上げた 俺の処遇を 一瞬で またぎ越えてく 爆上げ初任給(東京都・がんも3号)
語るほど 履歴書と違う その理由(わけ)は AIですと 君は言わずに(東京都・ねぎ)
佳作 採用も できたらいいのに サブスクに 悩みが尽きない 人の見極め(大阪府・ナポリ)
うまくない でもなぜか好き この学生(東京都・佐藤宗次郎)
こりゃ採用! 決めた学生 ほぼ辞退(東京都・うどん)
お祈りを 送る人事も きついんです この子は他社で 絶対に輝く(東京都・いじょうきしょう)
応募なし ああ応募なし 仕方なし(大阪府・昭和の應援團)
AIで 作文作る 学生と 褒める返信 作る人事よ(神奈川県・終わらない就職され活動で祈り続ける人)
履歴書に 性別欄なし 時代知る(愛知県・YSK)
「推しのため なら頑張れる」 その言葉 仕事に向けば 鬼に金棒(群馬県・よしよしよっしー)
懐かしい 手書きの履歴書 感動し(東京都・コニーとマツ)
学生の 理想のキャリア うかがえど 我がキャリアこそ 見失いがち(東京都・俺的資本経営希望者)

出典:HR総研、就活会議「就活会議」([図表2]も同じ)

ガクチカをどこまで盛るか

 ここからは、就活生からの投稿による「2026年卒 就活川柳・短歌」の入選作品を取り上げます。まずは、【最優秀賞】からです。今年は2作品あります。

サークル長 バイトリーダー 学祭長 信憑性取り 副部長(大阪府 バーバパパさん)

 就活におけるガクチカ(学生時代に力を入れたこと)の盛り方を見事に表現した秀作です。「サークル長」「バイトリーダー」「学祭長」といった聞こえの良い肩書を並べながら、最後に「信憑性取り」「副部長」というオチで現実を突きつける構成が絶妙です。現代の就活生の多くが直面する “エピソードの演出” という課題を、リズミカルな語呂合わせで表現しています。
 エントリーシートでの自己PR作成において、多くの学生が過去の経験をいかに魅力的に表現するかに苦心する現状を、この作品はまさに就活生の等身大の心境として代弁しています。「信憑(しんぴょう)性」という言葉を使うことで、学生自身、その演出に後ろめたさを感じている複雑な心理状態も巧みに描写しています。

手書き散る AIの筆に 風光る(千葉県 たなかさん)

 デジタル化が進む就活現場において、手書きからAIへの移行を季語「風光る」を使って美しく表現した作品です。自分自身が数日かけて思いを込めて書き上げたエントリーシートが書類選考で落とされる中、生成AIにほんの数分で作成してもらったエントリーシートが通過していくさまを物悲しく感じる一方で、生成AIが内定までも引き連れて来てくれる期待感も表現しています。また、「手書き散る」という表現には、従来の就活手法が終わりを告げる寂しさと、新時代への期待が込められていると読めなくもありません。「AIの筆」という擬人的な表現により、生成AIを道具として受け入れながらも、それが持つ創造性を認める学生の心境が読み取れます。
 近年の就活現場では生成AIの活用が急速に浸透しており、エントリーシート作成や面接対策において生成AIを活用する学生が増加している現状を、まさに時代の転換点として詠んだ作品といえます。「風光る」という春の季語により、新しい門出への希望(内定)も表現されており、生成AIとの共存を前向きに捉える現代学生の価値観を見事に捉えています。

AIと人間性の間で揺れる心境

 続いて、【優秀賞】を紹介します。【最優秀賞】が2作品だったこともあり、こちらは1作品のみとなりました。

AIより 人に見てほし この熱意(新潟県 すんださん)

 生成AI活用が当たり前となった就活において、学生が抱く根源的な願いを表現した一句です。エントリーシートの書類選考でAIによる一次スクリーニングを導入する企業が増える中、学生たちは自分の思いが人事に届くのか不安を抱えています。「この熱意」という表現には、AIでは判断しきれない人間らしい感情や体験への思い入れを、最終的に人間同士のコミュニケーションで伝えたいとの学生の願望が滲み出ています。AIと人間性の両立という、今どきの就活生が直面する課題を的確に捉えた秀作です。

令和の就活事情を映す佳作群

 さらに【佳作】の中から6作品を抜粋して紹介します。

二つ来た 夢か安定 揺れる胸(北海道 ドラケンスバーグさん)

 複数内定を獲得した学生の心境を見事に表現した作品です。売り手市場が続く中、学生にとって内定獲得のハードルは下がったものの、逆に選択の困難さが生まれています。「夢か安定」という対比により、自分の夢を追うことのできる企業と、福利厚生や待遇などが充実している安定企業との狭間(はざま)悶々(もんもん)とする学生心理を簡潔に描写しています。そして、「揺れる胸」という表現からは、贅沢(ぜいたく)な悩みでありながらも、長きにわたり深刻に悩む学生の等身大の姿が想像できます。売り手市場が継続する現代の就活において、複数の内定を得る学生が増加する状況を映した作品といえます。

落ちたなあ 受かってるかも 落ちたなあ(兵庫県 アホゲータさん)

 就活生特有の心境変化を巧妙に表現したユーモア溢れる作品。最終面接直後の感触から一転、時間が経過する中で期待と不安が交錯する心理状態を「落ちたなあ」で始まり、「落ちたなあ」で終わる構成で表現し、中間の「受かってるかも」という一瞬の希望的観測が、売り手市場であっても必ずしも希望どおりにはいかない現実を際立たせています。面接後すぐに結果連絡が来る企業ばかりではありません。就活において、なかなか結果が知らされない企業に対して誰もが経験する感情の揺れ動きを、シンプルながら印象的な反復表現で描いた一句です。

就活で 仲良くなった GPT(兵庫県 まかろにさん)

 生成AI時代の就活における新たな関係性を軽やかに表現した作品です。ChatGPTをはじめとする生成AIが、エントリーシートや面接対策などの就活の相談相手として機能している現状を「仲良くなった」という、文字どおり親しみやすいフレーズで言い表しています。従来の就活では学校の先輩や友人が相談相手となることが多かったところ、現在では24時間利用可能なAIが重要なパートナーとなっています。最初は丁寧語で投げ掛けていたプロンプトも、いつの間にか “タメ口” になっていく様子がうかがえます。この句からは、生成AIを敵視するのではなく、頼れる相手として受け入れる昨今の学生の柔軟性が読み取れます。

就活の現実と建前を描く作品群

 【佳作】の残り3作品です。

やったこと すべてに理由 あるように 話す私は 少し嘘つき(東京都 無糖さん)

 就活における自己演出の心理的負担や心の惑いを率直に表現した作品です。エントリーシートや面接では、すべての経験に明確な動機や学びがあったかのように語ることが求められますが、実際の学生生活はそれほど計画的ではありません。むしろ “なんとなくやったこと” のほうが多いくらいでしょう。就職活動が進むにつれ、何事にも意味や目的を “後づけで上手に言えるようになっていく” 自分に対して、「少し嘘つき」という申告により、演出の必要性を理解しながらも、罪悪感や違和感を抱く学生の複雑な心境を表現しているといえます。

落ちたのに なぜか推される 逆オファー(埼玉県 浦和人さん)

 近年の採用手法の多様化を皮肉った作品です。一度不採用となった企業から、逆求人サイトを通じてオファーが届く現象は、AIマッチングシステムが登録されたキャリアシートだけを頼りに、相手が誰かも分からずにオファーを送る対象となる学生を抽出しているため、実際によく起こり得ることです。学生にとっては戸惑いの原因となる一方、企業側がシステムを駆使して採用を高度化しようとしている様子もうかがえます。売り手市場において企業が優秀な学生を確保するためにさまざまな手法を駆使する結果、少し機械的で人間味のないやりとりを招いている現状を、シンプルながら笑いを込めて的確に捉えた作品です。

また出たな 大手とベンチャー いいとこ取り(大阪府 バーバパパさん)

 【最優秀賞】を受賞した作者が別の作品で【佳作】にも入選しました。
 企業説明会での常套(じょうとう)句を皮肉った一句です。”大手の安定性とベンチャーの成長性を兼ね備えた” という企業の自社PRは、今や就活生にとってはおなじみのフレーズとなっています。この句は、そうした企業側の「いいとこ取り」的なアピールに対する学生の冷静な視点を、「また出たな」とユーモラスに表現しています。昨今の就活では、企業側も学生獲得のためにさまざまな魅力をアピールする必要があり、時としてそれが画一的な表現になってしまう現状を見事に切り取っています。

[図表2]「2026年卒 就活川柳・短歌」入選作品

入選 作品(地区・雅号)
最優秀賞 サークル長 バイトリーダー 学祭長 信憑性取り 副部長(大阪府・バーバパパ)
手書き散る AIの筆に 風光る(千葉県・たなか)
優秀賞 AIより 人に見てほし この熱意(新潟県・すんだ)
佳作 二つ来た 夢か安定 揺れる胸(北海道・ドラケンスバーグ)
落ちたなあ 受かってるかも 落ちたなあ(兵庫県・アホゲータ)
就活で 仲良くなった GPT(兵庫県・まかろに)
企業より Wi-Fi探す カフェ就活(千葉県・カンサー)
内定は 恋と同じで 縁とタイミング(北海道・たく)
やったこと すべてに理由 あるように 話す私は 少し嘘つき(東京都・無糖)
落ちたのに なぜか推される 逆オファー(埼玉県・浦和人)
また出たな 大手とベンチャー いいとこ取り(大阪府・バーバパパ)
履歴書に 込めた想いは 春の風 未来を拓く 扉の鍵に(大阪府・Kくん)

 HR総研のオフィシャルページでは、「2026年卒 採用川柳・短歌/就活川柳・短歌」の全入選作品について、作者の思いを踏まえての寸評・解説とともに掲載しています。それぞれの作者がどんな気持ちでこの川柳や短歌を詠んだのか、ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひご覧ください。

■ HR総研 「2026年卒 採用川柳・短歌/就活川柳・短歌」オフィシャルページ
 こちらからご覧ください ⇒ https://hr-souken.jp/senryu2026/
寺澤康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
1986年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。2007年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
https://www.hrpro.co.jp/