丸井グループ産業医、取締役CWO(チーフ・ウェルビーイング・オフィサー)
A5判/296ページ/2500円+税/日経BP
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ VUCAの時代、企業としてさらなる成長を求めるには、従業員の生産性を高めることが重要となる。そこで本書では、従業員が夢中になって働く組織づくりに必要な考え方を解説する。著者は産業医として長年企業に勤め、丸井グループの取締役にまで就任した実務家である一方、医学博士号を取得するなど専門家としての顔も持つ。実務と理論の両面を理解している著者だからこその視座で、医学・心理学・経営学などの理論を土台に、企業で実践できる具体例を紹介しながら、従業員が生き生きと働くことのできる組織に至るための方法論を多角的に提示する。
■ 経営誌『日経ESG』での4年間にわたる連載をまとめ、全48章+αで構成される本書は、著者の活動ゴールである「健康を通じた人と組織の活性化」をテーマにした各章読み切りの形式となっており、1章当たり5ページ前後の分量で読み進めやすい。各章は三つのパート(第2~4部)に整理されており、例えば第3部では、著者が組織活性化の鍵と考える「フロー理論」を取り上げる。ここでは、余暇よりも働いているときのほうが、自身の能力を発揮し、創意の喜びなどを感じている「フロー状態」が長いにもかかわらず、人が仕事を「苦役」と感じる理由などを詳説する。また、随所に丸井グループでの実践事例を紹介し、「手挙げ方式」や試行回数を行動KPIとするといった具体的な取り組み内容まで言及しているため、実務の参考になる。最後の第5部では丸井グループのセミナーをリポートし、同グループの人的資本経営を徹底解説する。
■ 本書は、産業医としての歩みから丸井グループでの活動など、著者のキャリアや価値観に触れられており、単なる実務書や理論書にとどまらないのが特徴的である。「幸せ」や「ウェルビーイング」とは何か、科学的根拠に基づき解説がなされている点にも注目したい。働く人の不調を解決するだけでなく、働く人の幸福度や満足度を高めるために奮闘してきた著者の知見は、組織づくりを考える上での参考となるだろう。
内容紹介 <本書の特徴>
<こんな事例をご紹介>
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