國學院大学経済学部経営学科教授
A5判/264ページ/2500円+税/日本能率協会マネジメントセンター
BOOK REVIEW ―人事パーソンへオススメの新刊
■ 日々の暮らしの中で、“個性” “個” という語は、さまざまなシーンや文脈で登場する。人事分野に目を向ければ、人的資本経営が浸透する中で、社員の “個性” を伸ばす経営、“個” を活かす人事施策の重要性が高まっている。では、個性・個とは一体何なのか。それを活かし、伸ばすための方法とはどのようなものなのか。本書は「非認知特性」「非認知能力」「知的能力」の個の3要素をメインテーマとして解説しながら、経営・人事の実務における個性・個の活かし方について紹介する。
■ 第1章は、個の起源の解説が主題であるものの、読み進めると、人間の個性を見極めて活かすことの難しさを再認識させられる。非認知特性を詳説する第2章では、人間のパーソナリティー特性を「外向性」「協調性」「勤勉性」「情緒安定性」「開放性」の5因子で記述するビッグファイブと、「マキャベリアニズム」「自己愛傾向」「サイコパシー傾向」の3因子から成るダーク・トライアドの理論を取り上げ、採用やリーダーシップの発揮などの場面で各因子が与える影響や作用などを紹介する。第3章では、非認知能力について、職務遂行能力や人事考課制度などの観点で解説しながら、非認知能力の内容を知り、高めていくことの必要性を説く。認知能力について解説する第4章では、組織経営におけるジョブ・パフォーマンスと最も強い関係を有する個性の一つとしてGMA(一般知的能力)を挙げ、上司からの評価、職務知識、昇進、生産性、販売成績、給与などを予測する上で極めて優れた個性概念であると述べている。第5章では、個の3要素の特徴を理解し、バランス良く施策や戦略に活かすことの重要性を強調する。
■ 本書で登場する用語や概念はアカデミックなものが多いが、そのいずれも経営・人事の実務に帰着する。人事戦略の構築、人材の採用や育成、管理職のリーダーシップ発揮など、経営・人事に係る各業務の本質を再考し、さらなる改善を図りたい人事パーソンに有益な一冊といえよう。
内容紹介 「個を活かす経営」「個を活かす人事」とよく言われるが、「個」や「個性」とは何を指すのか――この難題に対して、捉え方の理論的枠組みは、国内において十分に提供されていない。 しかし、国内外の先進企業は人的資本が内に秘める個性や個を見つけて育てる目を養い始めている。また欧米を中心に、長きにわたって展開されてきた学術研究では、個性や個を捉える理論的枠組みが提供され始めている。 本書は、それらの世界の英知を解説しながら「どんな個性の要素が高いとジョブ・パフォーマンスが高いのか」「どんな個性がどんなタスクで活かされる可能性が高いのか」「採用時に見極めるべきはどんな個性なのか」など、日本の実業界ではあまり知られていない個性の具体的な活かし方を紹介する。経営・人事の実務家や研究者必読の書。 |