2025年06月13日掲載

BOOK REVIEW - 『ジョブ型人材マネジメントのその先へ スキルベース組織の教科書』

EY Japan ピープル・コンサルティング 著、鵜澤慎一郎 監修
EY Asia-Pacific 兼 EY Japan ピープル・コンサルティング リーダー 
A5判/312ページ/2700円+税/日本能率協会マネジメントセンター 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ ジョブ型の人材マネジメントが脚光を浴びて久しい。しかし、職務記述書を作成しただけで終わってしまうなど、導入後の過程で課題に直面する日本企業も少なくないだろう。本書は、ジョブ型の “その先” ともいえる「スキルベース組織」への転換を勧めるものだ。スキルベース組織とは、スキルを起点にした新たな人材マネジメントの考え方であり、利点は数多い。本書では、第一線のコンサルタント集団がさまざまな企業の事例を交えながら解説している。

■ 全9章のうち、序盤の1~3章はスキルベース組織についての概論であり、スキル管理が必要になった理由や世界の潮流、スキルの棚卸しと可視化に必要なアプローチなどを取り扱う。第4章では、「採用」「キャリア開発・能力開発」「配置・人事異動」「人事評価・報酬」という人材マネジメントの領域別に、スキルベース活用の効能と課題を説いている。第5章以降も、変革に必要な組織開発の在り方に言及するなど、スキルベース組織を実現するために求められる知見を幅広い観点から解説している。

■ 第8章と第9章は、70ページ以上の紙幅を割いている。第8章「先進日本企業の事例集」では、KDDI、ソニー、テルモなど、スキルベース組織への変革に取り組む7社のケースを詳しく紹介。第9章では、スキルの抽出や管理などに活用できるサービスを提供しているスキルテック企業6社がインタビューで、各社サービスの機能やスキルベース組織を推進する上での活用方法、最新動向などを語っている。本書の最大の特徴は、こうした事例や実践ノウハウを豊富に盛り込んでいる点にある。スキルベース組織への転換を考えている企業の人事担当者には、大いに参考になるだろう。

『ジョブ型人材マネジメントのその先へ スキルベース組織の教科書』

内容紹介
スキルや経験で公平に採用・配置・評価・育成する 人材マネジメントの新常識

近年、日本企業でもジョブ型雇用の採用が進んだが、職務記述に合う人材がいない、職務の定義が難しいなど、形骸化や課題がある。従来の人事制度を維持した企業でも、生産性向上や人材の最適配置等々の課題が山積する中、従業員一人ひとりのスキルを起点とする採用・配置・育成・評価を行う「スキルベース組織」への転換の動きが見られる。

柔軟な適材適所や、スキル強化のための教育メニューの自動リコメンドが可能になるなど、スキルを起点とする人材マネジメントの利点は多い。リスキリングの努力等によって後天的に仕事や昇格のチャンスを得られる社会となり、属性にとらわれない公正な人材活用のきっかけになる可能性も秘めている。そうした人材マネジメント転換の具体的な方法を、日本の先進企業の事例や、最新スキルテック企業の事例を交えながら第一線のコンサルタント集団が解説する。