2025年05月23日掲載

BOOK REVIEW - 『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』

宮島忠文、小島明子 著
株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役社長、
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 

四六判/312ページ/2400円+税/日本経済新聞出版 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 定年の引き上げや廃止を実施する企業が増加する中で、ミドル・シニアが活躍できる労働環境の整備が求められている。“モチベーションが低い” “アサインできる業務がない” など、ネガティブな側面ばかり注目されやすいからこそ、一歩踏み込んで “ミドル・シニアの活躍を促進させるための具体的な施策” まで理解を深めておきたいところだ。本書では、キャリア形成支援の現場で得られた知見、さまざまな調査データ、キャリア意識や社会構造的視点などを交え、ミドル・シニアの活躍のヒントを示している。

■ 第1章では、ミドル・シニアの働き方の問題点について解説する。ミドル・シニア人材の深層心理や企業側から見た問題点、リスキリングが進まない理由などのトピックについて、発生の要因を事例やアンケート結果を基に精緻に分析しており、上記のようなネガティブな側面を理解する上での一助となるだろう。第2章は、「見かけ」「器の大きさ」「学ぶ姿勢」「チャレンジする姿勢」などの切り口で、働き続けてほしいと感じさせる10の理由を示している。第3章では、働き続けてほしい人を増やすための施策を、職場環境の整備、キャリア研修やキャリアプログラムの提供などの観点から解説。「キャリア研修の実施は社内講師がよいか社外講師がよいか」など、現場実務で直面しがちなポイントについて詳説している。

■ 「超高齢社会の日本に求められること」と題した第4章は、ミドル・シニアの流動化が必要な理由、仕事と介護の両立支援策の拡充など、マクロ・ミクロの両方からミドル・シニア雇用を考察する。各社で状況は異なると思われるが、本書を読み進めれば、超高齢社会における人事の課題解決に向けたヒントが見つかるはずだ。

定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図

内容紹介
ミドル・シニアは欠かせない人的資本になれる!

多くの人が、定年が視野に入るころ、「裏切られた」という思いを抱く。役職を外れ年収も大幅減、モチベーションはダダ下がりだ。しかし、「妖精さん」と揶揄され、リスキリングにも後ろ向きでは、職場のお荷物扱いになっても仕方がない。

65歳までの継続雇用が義務化、さらに70歳までの継続雇用、就業機会確保が努力義務とされ、いよいよ「定年がなくなる時代」を迎えたいま、どうすれば、シニア社員のモチベーションを維持し、稼ぎ続けてもらえるのか? 「働き続けてほしい」シニアを増やすことができるのか?

ミドル・シニアの活躍促進・支援のためのカリキュラムの開発・運営者と、キャリアに関する調査研究者がタッグを組み、労使双方の課題を浮き彫りにしながら、“泥臭い” 支援の現場で得られた知見に加え、調査データ等を踏まえたキャリア意識の現状、社会構造的な視点までを交え、個人、企業、社会、それぞれの視点からミドル・シニアの活躍を実現していくためのヒントを提供。解決策としての「働き続けてほしい人」の姿を10のキーワードで例示し、代替可能なミドル・シニア人材の増産を防ぐキャリア形成支援から、「労働者協同組合」など新たな働き方まで、超高齢時代の人事設計のポイントを具体例とともに解説する。