2025年04月25日掲載

BOOK REVIEW - 『コンメンタール労働安全衛生法』

三柴丈典 編、日本産業保健法学会 協力
近畿大学法学部教授 
B5判/1584ページ/15,000円+税/法律文化社 

BOOK REVIEW  ―人事パーソンへオススメの新刊

■ 労働安全衛生法(以下、安衛法)は、労働基準法と相まって、職場における労働者の安全と健康を確保し、さらに進んで快適な職場環境をつくることを目的とした法律である。健康診断やストレスチェック等を規定していることから、人事労務担当者が実務で触れる機会も多い法律といえるだろう。本書は、安衛法の研究者である編者が、日本の安衛法に関わる30人以上の専門家を擁する研究班とまとめた、約1600ページに及ぶ逐条解説書である。

■ 分担執筆による逐条解説部分を編者が独自に整理した「概論と整理再編」(この部分だけ読めば標準的知識が得られるよう配慮)、安衛法の制定経緯等をまとめた「安衛法制定を後押しした災害と制定経緯」および「逐条解説」の三つのパートで構成。中でも「逐条解説」は、各条文の趣旨や内容はもちろん、制度史や背景となった労働災害、適用の実際(関係判例、監督指導実務)、関係規定にも言及し、図表や挿絵、写真等の資料も豊富に盛り込んでいる。規制の趣旨と課題を分かりやすく、かつ深く理解できるよう工夫がなされている点が大きな特徴だ。

■ 本書は、法令の字句解説にとどまらず、法をめぐる人と組織に焦点を当てて法令を読み解いていく、いわば “生きた” 安衛法学を体現した体系書となっている。企業の人事労務・安全衛生の担当者や産業保健専門職は、本書を読むことで職場環境を整備・改善するために取るべき行動の指針となるほか、弁護士や社会保険労務士等の法律専門家にとっては、安衛法を総合的に学び、法解釈や実務への適用・応用に際して常に参照すべき “定本” となるだろう。

コンメンタール労働安全衛生法

内容紹介
「生きた」労働安全衛生法学を体現した体系書として、制定経緯や条文解説に加え、適用の実際を重視。法政策学や行政の監督指導、企業実務に貢献する。各条文の趣旨のほか、制度史、適用の実際(関係判例、監督指導実務)、関係規定にも言及。規制の趣旨と課題を深く理解し、法目的の実現に向けて努力するという理念が込められた大著。編者が独自に整理再編した概要を付した。労働法に関わる実務者必携の書。