2018年08月10日掲載

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2018年8月


ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 今年の夏は、集中豪雨や全国的な猛暑など、異常気象が続いていますが、皆さん体調は大丈夫でしょうか? 熱中症は、体内の水分不足から血液量が減って血管の拡張がしにくくなったり、湿度が高く汗が出にくくなったりといった状態が続き、体温調整がうまくできなくなって起こります。そのため熱中症の予防には、血液量を増やして血液が循環するようにすることです。塩分と糖分が含まれているスポーツドリンクが効果的だと言われますが、あまり運動をされない方の場合、糖質の摂り過ぎにつながることになるので飲み過ぎには注意が必要です。代わりに、タンパク質も摂ることができる「牛乳」が効果的らしいです。タンパク質に含まれる「アルブミン」が塩分と同じく、血管内に水分を引き込む働きがあるとのことです。

俳句と川柳の違いとは

 今回はHR総研の調査結果をご紹介するいつもとは趣向を変えて、HR総研が5年ぶりに募集をした「2019年卒 採用川柳・短歌/就活川柳・短歌」の入選作品をご紹介したいと思います。川柳・短歌は、株式会社リブセンスが運営する新卒就活生向けクチコミサイト「就活会議」と共催で、採用担当者、就活生を対象に7月に募集したものになります。
 ところで、川柳は俳句と同じ「5・7・5」の17音で構成されますが、どこに違いがあるかご存じでしょうか。違いは、大きく分けて二つあります。一つは、形式的な違いです。俳句は、季語(季節を表す言葉)と切れ字(「や」「かな」「けり」など)が必用ですが、川柳はなくても構いません。また、俳句は主に文語表現ですが、川柳は主に口語表現が用いられます。もう一つの違いは、内容的な違いです。俳句は、主に季節や自然を対象にして感動を表現(詠嘆)することが多いのに対して、川柳の対象は人事(ひとごと)です。それも感動ではなく、風刺や滑稽です。やりきれない思いや受け入れがたい理不尽なものに対して、「いやだ」という気持ちの発露の場なのです。俳句や短歌を作ることを「詠む」と言いますが、川柳は「詠む」とは言いません。川柳は「吐く」と言うのです。理不尽なもの、呑み込めないものを吐き出すのが、川柳なのです。
 「売り手市場」「早期化」「インターンシップ」「AI採用」「学歴フィルター」「オワハラ」「オヤカク」「逆求人」「働き方改革」「内定辞退」など、さまざまなキーワードが飛び交った2019年春入社に向けた就職・採用戦線。これまでの活動を振り返って、採用担当者、就活生のそれぞれの目線からの「やりきれない思い」を、ぜひご一読ください。

インスタ、AIなど時代を反映した作品が入選

 まずは、採用担当者による「採用川柳・短歌」の入選作品からご紹介します。
 【最優秀作品】からです。

あなた誰 写真本人 連れて来い インスタ映える 履歴書写真 
(神奈川県 通りすがりの美人事さん)

 面接会場に入って来た応募者の顔を見て、履歴書やエントリーシートに貼ってある写真とのあまりの違いに驚く人事担当者の姿が目に浮かびます。かつてはモノクロだった証明写真がカラーとなり、さらにはデジタル撮影で修正も容易に。学生に人気の某百貨店の写真室のホームページには、ご丁寧に修正前と修正後のサンプルまで掲載されているのには驚きます。今後は、インスタ映えを考えて、奇抜なアングルやカラフルな背景の写真が増えるかも。もはや証明写真とは呼べませんね。

 続いて【優秀作品】を2作。

嘘でもいい 第一志望と 言ってくれ (京都府 孤独の人事さん)

 学生は、応募先のどの会社の面接でも、「第一志望です」あるいは「第一志望群です」と必ず言っていたものです。ばか正直に「第三志望です」なんて言おうものなら、内定が出ることはまずないからです。時代は変わったのか、売り手市場のせいなのか、学生が真面目になって嘘をつけなくなったのか。採用に苦戦する中小企業の採用担当者による魂の叫びと言ってよさそうです。

祈られた 数は多いぞ 君よりも (東京都 ねぎさん)

 企業が学生に送る不採用通知のメールは、末尾によくある「今後のご活躍をお祈り申し上げます」の文言から、俗に「お祈りメール」と呼ばれ、このメールが届くこと、つまり不合格になったことを学生は「祈られた」と言います。ここから派生して、企業側も学生から選考途中や内定を出した後に辞退されることを「祈られた」と言うようになっています。中には、内定辞退を伝えるメールの末尾を「貴社のますますのご発展をお祈りいたします。」で結ぶ学生もいるとか。1人の学生が企業から不合格とされる数は、受験した企業数を超えることはありませんので、せいぜい10~20社といったところでしょう。それに対して、企業側が学生からお断りされる数はそんな数ではとても足りません。そう考えると、採用担当者は相当タフでないとやっていけませんね。

「5・7・5・7・7」の31音に込められた思い

 次に、【佳作】の中から抜粋して3作品をご紹介します。意図したわけではありませんが、選んだ作品はすべて短歌になりました。

役員が セクハラオワハラ しないかと 人事ハラハラ 抜け毛ハラハラ 
(東京都 ワカメさん)

 1年前のサマーインターンシップに始まり、就職ナビ・採用ホームページ、合同説明会、学内説明会、セミナー・会社説明会、エントリーシート、適性検査、そして面接と積み上げてきたものが、最後の役員面接での役員から学生へのちょっとした一言で、すべてが水の泡になることもあり得ます。学生からの内定辞退だけで済めばまだ軽傷。大手企業ともなれば、ちょっとした発言が『週刊文春』をはじめとしたマスメディアでたたかれたり、ネットで炎上したりしないかと、ハラハラドキドキ。髪の毛が抜けるほど気をもむ採用担当者の心情をうまく表現した作品です。

折り返し 第一声で 誰ですか? 待て待てまずは 名前を名乗れ 
(東京都 DAC ismさん)

 携帯電話の着信電話に登録のない、見慣れない電話番号があった場合、普段であれば無視してしまうところ、就活期となれば話は別です。自分が応募した企業からの合否連絡かもしれないからです。固定電話での会話に慣れた大人であれば、まずはこちらから名乗るのは常識。でも学生は違います。登録された電話番号(友人・知人など)同士での通話がほとんどのため、掛け手側も、受け手側もお互いが相手を分かった上で通話がスタートします。そこには、掛け手が最初に名乗るなんていう習慣はありません。
 ちょうど先月、ある大学の先生から似たような嘆きを聞きました。今や大学の講義の欠席連絡は、メールではなく、LINEになっているとのこと。学生からのメッセージには、宛名である先生の名前もなければ、送り主である自分の名前もなし。ただ一言、「今日、休みます」とあるだけ。その大学の先生からの返事は、「誰ですか?」にならざるを得ないとか。そういう世代であることを認識して相対しないといけないようです。

好き嫌い 面接官に 左右され 当社も早く AI入れたい 
(神奈川県 採用初心者さん)

 今年の採用活動を表すキーワードの一つが、「AI採用」です。AIによるエントリーシートの合否判定、AIによる動画面接、AIによるマッチングテストなど、採用領域でのAI活用の動きが進みました。面接官には自社の求める人材像や、面接で特にチェックすべきポイントなどを共有するも、「人」である以上は、どうしても学生との相性や好き嫌いが影響してしまいます。面接官によって面接結果が全く変わらない企業など、まずないと言っていいでしょう。つまりは、公平性を担保できている企業などないということです。でも、AIを活用すれば話は別です。AIの判定基準は、好き嫌いや相性に影響されることはありませんので、公平な結果が期待できます。
 公平性の担保のほか、学生にとってはいつでもどこからでも面接受験が可能になるため、特に地方の学生は経済的・時間的負担が軽減されることや、企業にとっても面接時間や面接官の調整が不要になるなど、AI面接導入のメリットは少なくありません。しかし、前回の原稿で書きましたように、AI面接に否定的な学生もまた少なくありません。志望していた企業の選考がAI面接であると分かったら、4割の学生は応募意欲が減退し、そのうち4分の1の学生は応募自体を取りやめるとまで回答しています。海外では名だたる企業もこぞって積極的に導入を進めているAI面接ですが、日本の面接においては人物査定と同じくらい、応募者の動機形成や志望度向上の役割が求められています。そこをどうケアするのかを併せて考えておく必要があります。

【「採用川柳・短歌」入選作品】

入選 作品
最優秀賞 あなた誰 写真本人 連れて来い インスタ映える 履歴書写真
優秀賞 嘘でもいい 第一志望と 言ってくれ
祈られた 数は多いぞ 君よりも
佳作 役員が セクハラオワハラ しないかと 人事ハラハラ 抜け毛ハラハラ
好き嫌い 面接官に 左右され 当社も早く AI入れたい
折り返し 第一声で 誰ですか? 待て待てまずは 名前を名乗れ
採用も 忖度そだねー YouTuber 半端ないって 売り手市場
頑張れど 減ってく一方 内定者 唯一増えるは 採用コスト
AIが 面接官を 上回る? いやいや採否は 愛と縁なり
御社だけ いつになったら 判をつく
忖度を したのにふられる 売り手市場
合説は 前に詰めてよ 声枯れる
ワインより 気になる今年の 解禁日

就活は楽勝だと思っている学生はいるのか

 ここからは就活生による「就活川柳・短歌」です。採用担当者からの応募と違って、就活生からの応募作品は圧倒的に川柳で、短歌作品はごく少数でした。
 まずは【最優秀作品】からです。

不合格 心もSuicaも チャージ切れ (東京都 ピリオドさん)

 地方の学生が東京へ出てきて活動するのと比べれば、都内の学生の移動交通費はそれほどではないかもしれません。ただ、応募先1社だけでも、インターンシップ、セミナー・説明会、OB・OG懇談会、そして複数回にわたる面接と、何度も足を運べば交通費もばかになりません。何社も並行して就職活動をしますので、この間チャージしたばかりのSuica(JR東日本のICカード)もすぐに残高不足になるわ、応募先からはお祈りメール(不合格のお知らせ)が届くわとなれば、心が萎えて折れそうになるのも無理はありません。ぜひ、心のチャージをたっぷりしてほしいものです。

 続いて、【優秀作品】を2作。

お祈りを されないように 祈る僕 (埼玉県 森あらしさん)

 エントリーシートや面接の不合格者に届くメールの末尾には、「今後のご活躍をお祈り申し上げます」や「充実した学生生活を送られることをお祈り申し上げます」といった文言が挿入されていることが多くなっています。これを「お祈りメール」と呼びます。そして、お祈りメールが届くことを「祈られた」「お祈りされた」と表現します。この手のメールが来ないこと、つまりは合格になることを「祈る」という句ですが、実はこの「お祈りメール」すら届かないこと(「サイレント」と呼ぶ)を、学生は最も嫌います。いつまで待てばいいのか分からないので、もっとたちが悪いのです。メールが届かないことに対して、メールサーバの不具合等によるものかもしれないと思ってしまうことも。採用担当者の皆さん、「サイレント」よりは「お祈り」のほうがまだマシです。

ありのまま 見せたら絶対 落とされる (栃木県 おもちさん)

 就職活動(採用活動)は、企業と学生の"化かし合い"だと昔からよく言われます。企業のセミナーや説明会に登場する社員や、リクルーターとして学生の前に現れる社員は、いずれも社内で優秀と評される社員ばかり。企業側だって、不都合な内情は隠しているものです。面接に当たって採用担当者からは、「普段の皆さんをそのまま出してください」とよく言われますが、ありのままの自分に自信を持っている学生など、ほんの一握りです。少しでもよく見せようと躍起になる学生がほとんどです。学生側も身なりや面接での受け答えはもちろんですが、FacebookやLINEなど、普段の姿がまる分かりになるものは要注意です。私たちが学生時代などには、興信所を使って内定者の身辺調査をする会社も実際にありましたが、さすがに最近はありません。それらの行為を禁止されたこともありますが、SNSを見るだけで、もっと手軽にできてしまうからそこまでする必要もないとも言えます。

働き方改革のウソがばれることも

 ここからは、【佳作】に入選した作品から4作品をご紹介します。

受信時間 残業時間が 浮き彫りに (愛知県 ベルさん)

 働き方改革の残業時間抑制の流れを受けて、「残業は多くない」と言う企業は増えています。ですが、そう言っている会社から届くメールの着信時間を見れば、その会社の言っていることが本当かどうかよく分かります。人事がこの時期に忙しいことは学生も理解していますが、夜遅くにメールを送るということは、「私は今残業しています」と言っているようなものです。就活生を不安にさせる要素になるのでぜひご注意を。

サークルの 副代表が 大発生 (千葉県 ブンジさん)

 就活期になると、エントリーシートや面接のために、サークルの「副代表・副部長」を名乗る学生が急増します。本当は何の役職にも就いていないにも関わらずです。そのサークルには、そもそも「副代表・副部長」なんて役職はないというところもあるのではないでしょうか。さすがに「代表・部長」とまで名乗ることには気が引けるようです。全国の大学の部やサークルの数を調べてみると面白いと思います。きっと、「副代表・副部長」の人数のほうがはるかに上回っているのではないでしょうか。

祈られた 企業の数だけ 強くなる (東京都 松野ガチョウさん)

 学生にとって、筆記試験で落とされることよりも、面接で落とされることはかなりのショックです。筆記試験は得点がはっきり出るわけですから、仮に自分ではかなりできたつもりにも関わらず落ちたとしたら、自分の得点よりもさらに高い得点の受験生がそれだけ多くいたと割り切ることができます。しかし、面接はそうはいきません。どこをどう見られ、どう点数化されているのかも分かりませんし、自分自身の人格を全否定されたように思ってしまいます。特に、高校、大学と挫折を経験することなく、それなりに偏差値の高い大学に進学してきた学生からすれば、初めて不合格を伝えられた時のショックはかなり大きなものになります。ただそれも、企業が求める人材タイプと自分が合わなかっただけだと思い直すことで、2回目からのショックはやや和らぎます。「強くなる」と言っていいのか、「慣れてくる」と言っていいのかは分かりませんが…。

解禁日 名前ばかりで 涙する (埼玉県 ど文系なのにITへさん)

 経団連の採用に関する指針では、「3月1日 採用広報解禁(会社説明会解禁)、6月1日 面接選考解禁」とされており、就職ナビの採用情報の公開、プレエントリーの受付開始も3月1日です。ですが、実態は全く異なります。前年の夏からインターンシップという名目での会社説明会はスタートし、6月解禁のはずの面接は、早ければ1年前のインターンシップに参加するための事前選考の時点ですでに始まっています。リクルートキャリアの調査によれば、2018年6月1日時点の内定率は68.1%とのこと。6月1日からが就職活動の本番だと思っていた学生からすれば、すでに7割の学生が内定を持っている現実は、それは「泣きたくなる」状況に違いありません。ただ、これだけインターンシップやら早期化やらが叫ばれ、周りの学生が説明会や面接に奔走し、毎月のように前年を上回る内定率の調査結果が発表されていたことを考えれば、逆に「6月解禁」を信じていた学生に涙したくなります。あなたは、これまでどんな生活をしていたのかと。

【「就活川柳・短歌」入選作品】

入選 作品
最優秀賞 不合格 心もSuicaも チャージ切れ
優秀賞 お祈りを されないように 祈る僕
ありのまま 見せたら絶対 落とされる
佳作 受信時間 残業時間が 浮き彫りに
サークルの 副代表が 大発生
祈られた 企業の数だけ 強くなる
解禁日 名前ばかりで 涙する
オワハラに 屈するものか 無い内定
ノーネクタイ ノージャケットで ノー内定
また来れる 思いを託す 絶景や
「リク面は やらないから」と リクルーター
東京都 明日来てくれ 今京都
まだ来ない 恋する気持ち 懐かしき
振り返り 思い出すのは 母の愛 支えてくれて 今があるんだ

 ProFutureのオフィシャルページでは、「2019年卒 採用川柳・短歌/就活川柳・短歌」の全入選作品の作者の思いも掲載しています。どんな気持ちでこの川柳や短歌が生まれたのか、ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひご覧ください。

■ProFuture 「2019年卒 就活川柳・短歌」オフィシャルページ
 https://www.hrpro.co.jp/senryu2019.php

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/